24日に都立薬用植物園に立ち寄ると、ヒトツバタゴ(別名ナンジャモンジャ)やハクウンボク、イチハツ、フタリシズカ、キンラン、ケシなどに出会うことができた。ナンジャモンジャとは見慣れない怪木や珍木に対して地元の人々が付けた愛称という。ヒトツバタゴを指すことが多い。花は新緑に降る雪という印象である。
昨年12月に刊行された新潮新書「未完の西郷隆盛」を読んだ。著者は1975年生まれの先崎彰容で副題は「日本人はなぜ論じ続けるのか」とある。著者にとって西郷研究は未完。その西郷を手がかりに日本の「近代」を問い直した福沢諭吉、中江兆民、頭山満、橋川文三、江藤淳の五人を取り上げている。五人にとって西郷は「反近代の偶像」だった。
終章の標題は、司馬遼太郎「翔ぶが如く」の問い となっている。司馬は大久保の近代化路線を手放しで肯定することはなかったが、それに抵抗した西郷への評価はさらに低かった。司馬が西郷に辛口だったのは征韓論を嫌悪したから。司馬が最も重んじたのは「リアリズム」だった。
第四章の橋川は1960年代の言論界を牽引し、「日本浪漫派批判序説」などの著作のある政治思想史研究者。五年にわたる南島時代が西郷の人生観・死生観に何か決定的な影響を与えたという新たな視点を導入した。橋川が三島由紀夫の西郷理解に対抗していくうえで重要な意味を持ったのは、島尾敏雄との対談。島尾のヤポネシア論はもう一つの日本、つまりヤポネシアの発想の中で日本の多様性を見つけること。他にもう一人、吉本隆明はヤポネシア論に触発されて「天皇と南島」をめぐる独自の理論を打ちたてた。