玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*落ち葉

2023年11月30日 | 捨て猫の独り言

 「枯れ葉」「わくら葉」は、まだ枝についている葉にも、枝から離れて下に落ちた葉にも用いる。「落ち葉」「朽ち葉」は下に落ちた葉に用いる。「朽ち葉」は、「落ち葉」「枯れ葉」が時間を経て、より古くなったものを言う。

 「光みちたあの頃、時は去りて静かに、降りつむ落葉よ、夢に夢を重ねて、ひとり生きる悲しさ、木枯らし吹きすさび、時は還らず、心に歌うは、ああシャンソン、恋の唄、暮れ行く秋の日よ、金色の枯葉散る、つかの間燃え立つ、恋に似た落葉よ」越路吹雪枯葉より。

 庭には金属光沢のように輝くピンクのネリネ、素朴な黄色のツワブキの花が咲いている。この頃になると「落ち穂拾い」ならぬ、落ち葉拾いが朝食後のひと仕事になる。道路に散乱して風に舞って隣近所に越境しては申しわけない。つでに敷地内の落ち葉も拾う。

 この時期、まず落ち始めるのは柿だ。柿の葉は大きく拾いやすい。ハナミズキの葉も大きく、これはカサカサに枯れて触るとすぐに崩れる。それより小さなクロガネモチの葉は青いまま落ちる。柿もクロガネモチも朽ちると土色に変色する。梅の落ち葉はあまり美しくない。このまま庭に放置していてもいいと思うのは、黄や赤に染まったいちばん小さなサルスベリの落ち葉たちだ。

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*日展2023

2023年11月27日 | 捨て猫の独り言

 家の近くの小平中央公園を中心に、武蔵美の野外彫刻展「小平アートサイト」が毎年開催される。今年のそれに気づいたときには最終日の26日が目の前に迫っていた。「武蔵美の学園祭」の方は今年も見逃してしまった。さて「日展」を調べると、これも最終が26日だ。あわてて終了前日の土曜午後に日展会場に駆け込んだ。

 その前日にYouTubeで、日本画部門で「日展挑戦31回」という動画を見た。愛知県の高校教師・福岡正臣(51歳)だ。これまで18回の入選、12回の落選で2012年には特選を獲得した実力者だ。今年の作品は魚のヒレに美しさを感じた作品だと仕事場で語っていた。今年は入選かどうかと思わせ振りに番組は終わっていた。

    

 1階の日本画から見て回る。福岡正臣の「ひらく」は入選である。魚の「開いたヒレ」が描かれている。私が名を覚えた作者が一人増えた。続いて2階の洋画へ。「遠き日」と題した和服の若い女性を描いた沖縄県・玉城栄一の作品も入選。東京の会員による夜明けの桜島「黎明」があった。「赤瓦の集落(沖縄)」は埼玉の会員の作品。どうしても鹿児島・沖縄に関心が向く。

  

 彫刻会場に入ると、すぐに鹿児島の丸田多賀美の「あゝ、可笑しい」という作品(樹脂)が目に入った。これほど強烈な個性を持つ作者を私は他に知らない。妊婦と年輩の婦人が楽し気に談笑している。このように庶民の生活をテーマにすることが多い。鹿児島の大御所で日展顧問の中村晋也は「菰野の光」(樹脂)だった。菰野(三重県)に縁あって親しくしていた人がいて、一緒に散策した折の姿を表現したという。これまで歴史上の人物像が多い中で、これは異色だ。

 

 

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*北陸三県の旅(上)

2023年11月23日 | 捨て猫の独り言

 11月の中旬、2泊3日の団体旅行に参加した。初日は、羽田空港9:30発で石川県の小松空港へ。そこから福井県の「東尋坊」と「永平寺」。宿泊は石川県の山代温泉。2日目は能美(のみ)市の「九谷焼美術館」、小松市の「こまつの杜」、金沢市の「石川県立能楽堂」。宿泊は金沢駅前のホテル。

 3日目は駅近くの「近江町市場」、雨風強く予定変更で富山県高岡市の鋳物メーカー「能作」。帰りは北陸新幹線の富山駅から2時間10分で東京駅帰着。北陸の冬の味覚といえばズワイガニ。解禁日は11月6日(立冬の頃)という。ズワイガニの呼び方は地域によって異なる。福井では越前ガニ、石川ではオスが「加能ガ二」メスが「香箱ガニ」という具合。

 記録を見ると、以前に私が永平寺を訪れたのは1983年と2014年の2回だ。永平寺は変わることなくそこに存在していた。七堂伽藍の配置は人体のありようになぞらえられている。法堂(はっとう)は頭部、仏殿は心臓、山門は腰、庫院(くいん)が左手、僧堂が右手、浴室が左足、東司が右足という具合。

 私たちは今回特別拝観と言うことで、法堂の右奥から赤絨毯に導かれてスリッパを手にさらに奥へ向かう。貫主が信徒と相見する大広間の「光明蔵」、公式な貴賓室である「妙高台」、日常貫主が生活する「不老閣」を見学することができた。永平寺はなかなか開放的である。道元は歌も卓越した技量をもち、その和歌集「傘松道詠」が最も知られている。(傘松閣、光明蔵、妙高台)

 

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*高校社会科

2023年11月20日 | 捨て猫の独り言

 2022年度から高校の学習指導要領が大幅に改定された。社会科に絞って見てみよう。地理歴史では必修2単位が「歴史総合」と「地理総合」で選択3単位が「日本史探究」、「世界史探究」、「地理探究」となっている。公民では必修2単位が「公共」(これは「現代社会」に変わって新設され、目的は主権者教育)で、選択2単位が「倫理」、「政治・経済」となっている。

 私の知る高校では社会科に関して、高1で「公共」と「歴史総合」、高2で「地理総合」と「日本史」、高3で「倫理」が必修である。残りは文系、理系によって各自で選択することになる。高3での「倫理」は先哲の思想や、道徳の内容とその由来を考える。また、世界の主要な宗教の基本的な考え方などを学ぶ。

 このように今でも社会科には「政治・経済」という科目がある。誰であれ日常的に経済の問題に影響されながら生活せざるをえない。「経済!経済!経済!」と政治家が叫んでいた。たしかに政治とは経済と同義かもしれない。「失われた30年」というのも経済のことだろう。

 その経済活動を徹底的に破壊しつくすのが戦争だ。わが国の自民党政権が、これまで長く続けているアメリカ言いなりの行き方を改めるよう声を上げねばならない。アメリカは東アジアでは「台湾危機」をつくりあげて日韓を先兵にして戦闘を担わせようとしている。米国主導の戦争の誘導策に乗せられてはいけない。

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*リベラル嫌い

2023年11月16日 | 捨て猫の独り言

 世界各地で起きている紛争によってやむを得ず自国を離れざるをえない難民が激増している。他にも相次ぐ異常気象や、それに伴う自然災害で住む場所を追われる難民もいる。多くの難民が押し寄せて、受け入れる国々では限界を迎えつつあると想像する。すなわち人道主義が危機に追い込まれている。

 これまで地球環境問題が関心をもたれていたが、今ではウクライナ、パレスチナなどの長期化する戦争をどうしたら停戦に導けるかということに人類は悩まされている。しかし、後者はほぼ人災であり、前者に比べて当事者の決断により、なんとか停戦を実現できるのではないかと思うのだが・・・。

 欧州ルポともいうべき津坂直樹著「リベラル嫌い」を読んだ。欧州各国の主要政治家に果敢にインタビューを試みている。私はその本のタイトルを見たとき、日本の若者のことかと早合点した。テーマは欧州を席巻する「反リベラリズム」現象と社会分断だった。リベラル派とは「所得の再分配」に積極的な立場といえる。

 欧州各国はギリシャ危機などで見られたように積極的な財政金融政策でなく緊縮による我慢を国民に強いた。さらに移民や難民の問題が絡み、リベラル派は反移民、保護主義、自国第一主義の強い逆風にさらされる。英国のEU離脱の原因は遠くサッチャーによる民営化の旗のもと、福祉国家の概念が壊されたことに求められると指摘する政治家もいた。読後は、特に英国の政治史に興味が湧いた。

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*4コマ漫画

2023年11月13日 | 捨て猫の独り言

 朝刊をひろげて真っ先に目を通すのは4コマ漫画だ。古紙回収直前に切り抜き作業するまで、漫画以外は真剣に読んでいない。なぜか最近、落語漫才に接する機会が少なくなっている。その埋め合わせを漫画に求めているのかもしれない。

 いわゆる三大新聞には、それぞれ長期連載の4コマ漫画がある。朝日は「ののちゃん」、毎日は「桜田です!」、読売は「コボちゃん」だ。なぜだか日本経済新聞とスポーツ紙には漫画はない。三大の中では、現在購読中の朝日の「ののちゃん」が私には一番おもしろい。「ののちゃん」のために朝日をとっていると言ってもいいくらいだ。

 「ののちゃん」の作者について調べてみる気になった。「いしいひさいち」1951年生まれの72歳である。過激な皮肉、ナンセンス、解読困難な展開などが特徴という。主人公の山田ののこは小学3年生、グータラでお気楽な性格、山田家の人々は母親まつ子40歳、父親たかし40歳、兄のぼるは中学2年生、祖母山野しげ(まつこの母)70歳はひねくれもののハードボイルド婆さん。

 この10月16日には連載9314回で、計算すると25年以上も続いている。この日の漫画は祖母しげが「必要量がカップを選ぶ。カップが内容を選ばない。宅配も荷物が箱を選ぶ。箱が荷物を選ばない!本末は転倒してはならない!」とガーガー説く。その傍らで母まつ子が「親は選べない」と返して、ののちゃんが笑うと母の「なにがおかしい」という落ち。

 

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*コーダ あいのうた

2023年11月09日 | 捨て猫の独り言

 市民文化会館で映画「コーダ あいのうた」を観た。公民館の小さな部屋でDVDを鑑賞するのと異なり、映画館と同じ大画面、迫力の音響である。しかも市民名画座でチケットは500円と格安だ。コーダとは親が聾啞者であるその子供と言うことを知る。

 その映画に対する事前の情報をできるだけ遮断して観る。事後にいろいろと調べるのがまた楽しい。なによりテンポが良い映画だった。音楽のすばらしさを感じさせる映画だった。耳の遠い私がそれを忘れて映画の世界に没入していた。

  

 家族の中でたったひとり耳の聞こえる少女ルビーは幼い頃から家族の通訳として欠かせない存在だった。歌うことが大好きで高校の合唱サークルに入る。音楽教師はルビーの才能に気づき、奨学金を得てバークリー音楽大学に進む道を勧める。家族の通訳と音楽のレッスンの両立に悩むルビー。最後に家族は笑顔で大学生活へと送り出す。

 「コーダ」はアメリカ、フランス、カナダ合作映画で、2014年のフランス映画「エール!」のリメーイク版だ。フランス版では畜産農家だった一家は漁師に、一家の息子は主人公の少女より年上にしなおされている。最近たまたま観た日本映画「母と暮らせば」が「父と暮らせば」のリメーク版とも考えられ、それらとの相似について考えた。

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*短歌をよんでみた

2023年11月06日 | 捨て猫の独り言

 NHK短歌5月号に「野球と相撲のどっちをよむ?」という企画の記事があった。その冒頭に「すまはむと東ゆ西ゆ揺るぎ出し阿修羅のすがた見るが楽しさ」という吉井勇の歌が紹介されていて、解題に「相撲」という語は「すま(争)ふ」から来ているとあった。そうなのか、これでまたひとつ賢くなった。あとはそれぞれの秀歌が掲載されていた。

①今やかの三つのベースに人満ちてそぞろに胸のうち騒ぐかな

②シアトルのイチローの秋如何ならむ箴言のごときそのうつしみよ

  ①は正岡子規、②は水原紫苑

③土俵際身を撓ませて堪えたる一途のちから見るに圧(お)さるる

④初場所の角力絵にゐる百力士花やかにはだへ咲くかと思ふ

  ③は吉井勇、④は馬場あき子

秀歌も何のその、私もよんでみた。

◯ショウヘイがユニコーンと化し彼の地にて独り異界へあゆみ始める

◯ふるさとの海いろまわしの明生は小結ぐらいがちょうどいい

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*南伸坊「本人伝説」

2023年11月02日 | 捨て猫の独り言

 今やAIによって本人の映像や声をもとに容易に「本人」の動画がつくれるのだという。そういえば、AIが作った美空ひばりの動画がテレビで流れて話題になったことは記憶に新しい。50年も前の1975年の映画「オーソン・ウェルズのフェイク」を紹介しながら、「虚と実のモラル」と題するエッセイが新聞にあった。

 私はトランプ氏が登場した頃からフェイクというカタカナ語を覚えたような気がする。エッセイでは、オーソン・ウェルズの映画と共に11年前の2012年発行の南伸坊さんの「本人伝説」が紹介されていた。興味津々さっそくその本を図書館で借りてきた。

 南さんは私の3つ年下の弟と同じ歳だ。イラストレーターが本業だが多才ぶりで知られ、有名人に顔を似せるのを得意技にする。たとえば吉本隆明さん、麻生太郎さん、櫻井よしこさんなどの本人になりすまし、それぞれの写真にはあたかも本人が書いたような文章が添えられている、顔面模写、文体模写の本だ。

 

 写真担当は奥方の南文子さんである。あとがきに「顔に絵を描くことで、これを写真に撮ると、さらに本人に近づく。写真のテクニックについては我々は基本的に素人状態のままです。照明器具は卓上スタンド一本です。照明器具をもうちょっと充実させようかと私が提案しても、カメラマン文子はそういうややこしいことは言いっこナシと即座に却下します」とあった。

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