久しぶりに「青春18きっぷ」の旅に出た。金券ショップで二日分を購入し、目指すは絶景の秘境路線といわれ会津若松と魚沼市の小出を結ぶ只見線だ。前日に会津若松駅前の東横インを予約した。初日は米沢まで行き、そこで4時間の散策後に会津若松に引き返す。二日目の只見線は始発の会津若松7時37分に乗り只見で下車すると、小出へ乗り継ぐ電車はなんと4時間後である。
旅から帰ると訪ねた土地について調べたいことが出てくる。米沢は上杉氏からの縁で上越市と、また江戸時代に米沢藩の米蔵が福島城下に立ち並んだことから福島市との関係が深い。駅を出て最上川に架かる住之江橋にさしかかると欄干には米沢生まれの彫刻家・桜井裕一のブロンズ女性像がいくつか設置されている。上杉神社には中興の租といわれる鷹山(ようざん)の「成せばなる なさねばならぬ何事も 成らぬは人のなさぬなりけり」の石碑が目をひく。
神社周辺の開放的な空間に、「置賜(おきたま)文化ホール」と「上杉博物館」を併設する「伝国の杜」が平成13年に完成した。エントランスにある能舞台は空気浮上方式によってステージに移動するという。どのように移動するのかなかなか飲み込めなかった。そのあと酒造り資料館「東光の酒蔵」をあわただしく見学し、「東光」の小瓶を購入して駅に戻った。さいわいにも散策中に傘の出番はなかった。
二日目は朝食前に雨の中を片道徒歩25分の鶴ヶ城まで出かけた。只見線はあの東北大震災と同じ年の7月に発生した新潟・福島豪雨によって甚大な被害を受け不通となった。2013年のJRの発表によると、復旧にかかる工事費は約85億円、工期は4年以上、今後鉄道での復旧の可否について総合的に検討するとある。現在は会津川口と只見間は代行バスで繋いでいる。只見町営の保養センターでは只見線を描き続ける松本忠の画を浴槽で見ることができる。滔々たる只見川は尾瀬沼に源を発し、喜多方市で阿賀野川に合流している。只見と小出の間の車窓から見える細い流れは破間川(あぶるま)である。