玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*高いハードル

2013年04月30日 | 捨て猫の独り言

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 庭の柿の木に葉が繁った。ハナミズキも花から葉に変わり、いつのまにやらニシキギも葉をつけた。それらのうちで「柿の若葉」の緑が最も黄色の色合いが強くて柔らかい印象を与えている。この「穀雨」の時期に私があらたに認識できるようになったのはイヌザクラとミズキの木の花穂である。小さな白い花がイヌザクラは棒状にミズキは平面状に集まって咲いている。どちらも夏には小粒な実が熟し野鳥の子育てに役立つのだという。ミズキはこけしの材料にもなる。昨日のこと紅い棒状の花穂をつけた街路樹に出会った。取り付けられていたプレートにはベニバナトチノキとあった。調べるとセイヨウトチノキ(マロニエ)との交雑種であるという。

 小平市では都道建設計画の見直しを問う住民投票条例が成立したが、その後に行われた市長選挙ではどちらの有力候補ともほとんどこの問題には触れず、争点にならなかった。60歳の革新系現職が「意見の異った市民とも手を携えてやっていきたい」と3期目を迎えることになった。投票率は37%だった。4月24日の市議会に市が提出した「投票率が50%未満のときは成立しない」という条例改正案が賛成13、反対13の同数となり議長裁決で可決された。これはかなり高いハードルと言わざるを得ない。5月26日の投票日に向けて「どんぐりの会」などは意見交換会や現地を歩く会などの新たな活動を展開している。

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 私の家の前の道路で先日のこと自転車に乗った国分功一郎さんと出会った。もちろん向こうは私のことを知らない。こちらから「こくぶんさんですね」と声をかけた。子供用の自転車に乗った女の子と一緒である。「あなたが頑張ってくれているので心強い。市議会の傍聴には私も参加しました」と私。「千葉で育ちましたから両親は小平市民ではありません。家はこの近くで、この道路はよく通りますよ」と国分さんは我家の表札に目をやる。女の子は終始うつむいて顔を上げず、おとなしく待っている様子が印象的だった。研究者であると同時に社会運動家の国分さんを今回の住民投票条例問題でより身近に知ることになった。

 中沢新一氏も国分さんとのシンポジウム「どんぐりと民主主義ー都道問題から考える」のために小平市を訪れている。この3月には2人の対談集「哲学の自然」が出版された。「すぐ自分と違うものを敵として考えてしまう。敵じゃない。ただ矛盾しているだけです。ただ矛盾しているものをどう調停していくかです」と中沢氏。フランスに留学した経験のある国分さんはフランスのデモを見聞して「デモとは何か。それはもはや暴力に訴えかけなければ統制できないほどの群衆が町中に出現することだ。その出現そのものがメッセージである。だからデモに参加する人が高い意識を持っている必要などない。食べながらお喋りしながら単に歩けばいい。そうやってなんとなく集まって人が歩いているのがデモである」と柔軟である。(写真はミズキの花穂と津田塾大の藤棚)

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*会津若松

2013年04月22日 | 捨て猫の独り言

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 これまでに青春18きっぷを利用して福島を二度訪れている。一度目は水戸と郡山を結ぶ水郡線に乗り磐城浅川駅で降りた。福島南部の東白川郡鮫川村の山中に知人を訪ねるためだった。二度目は原発事故の影響で寸断された常磐線に乗り太平洋側を北上した。行けるところまで行って引き返したのが広野駅だった。そしてこの週末には一月前から予約していた会津若松方面へのパック旅行に参加した。

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 旅のテーマは福島の桜である。ところが出発の前の列島の気温はぐんぐん上昇して桜の開花が例年よりかなり早くなった。桜については諦めるしかない状況だなと思った時もあった。ところが幸運にも、終わってみればあちこちで満開の桜に出会うことができた。桜はかくのごとくに人の心を騒がせるものである。今回訪れる桜の中で最も重要なのが日本三大桜の一つの「三春の滝桜」である。19日の金曜日に新幹線の郡山駅からバスで滝桜に直行した。

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 添乗員さんとバスガイドさんのどちらも女性でどちらも経験豊富だった。滝桜が14日の日曜日に満開になったということは事前に知っていた。満開が過ぎたといえ、名高い滝桜のことだから到着までにかなりの渋滞があるだろうと予想していたが、それはみごとに外れた。滝桜の入口には開花状況のたて看板があった。つぼみ、咲き始め、三分・五分・八分咲き、満開、落花しきり、落花の8段階になっている。そしてこの日の矢印は「落花しきり」を示していた。先週末の満開の頃ならさぞかし滝桜をめざす人ですさまじい混雑だったのだろう。日程が満開の時期でなくてむしろよかったと思った。

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 地図で見ると猪苗代湖の周辺を反時計回りに移動したことになる。福島では梅と桜と桃の花を同時に愛でる。三春町から福島市の花見山公園、二本松市の霞ヶ城公園を訪れ、安達太良山と磐梯山にかこまれた標高千メートルの横向温泉に泊まる。翌日は山を下りて猪苗代湖畔を走り会津若松市内へ。車窓には常に磐梯山がある。大河ドラマのオープニング映像に登場する石部桜、白虎隊の飯盛山、鶴ヶ城(若松城)を見学する。最後は南会津郡にある江戸時代の宿場町である大内宿だ。会津の食べ物はどれも洗練されている。三度目でやっと福島の風土の一端にふれた気がした。今日の朝刊の一面に「真冬に逆戻り」の見出しで雪の石部桜と観光客の写真があった。

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*多摩湖自転車道

2013年04月15日 | 捨て猫の独り言

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 日曜の朝突然思い立って出かけることにした。さわやかな新緑の季節になると多摩湖と狭山湖のあたりに自転車で出かけることが楽しみの一つになっている。多摩湖自転車道は全長が21.5キロある。武蔵野市の境浄水場から多摩湖までの水道管の上をほぼ一直線に走る10.5キロと、多摩湖を周回する11キロに大別される。

 前者の区間は狭山・境緑道と呼ばれ、緑化されて都立公園に指定されている。西東京市、小平市、東村山市を通る。後者の区間は多摩湖の柵沿いである。内回り外回りがセンターラインで区切られた舗装道路は起伏に富んでいる。残念なことに走りながら湖面が見える場所は少ないが緑がどこまでも続く。多摩湖は東大和市にある。ちなみに狭山湖は所沢市にある。

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 小平市を一周する小平グリーンロードも21キロある。その中には狭山・境緑道部分の5キロほどが取り込まれている。小平市が都の施設をうまく利用した形だ。この部分に「馬の背」と呼ばれる特徴のある地形がある。多摩湖自転車道の中で地下に水道管が埋まっていることが実感できるただ一つの場所である。私が東京に出て最初に住んだアパートの近くだ。あの頃は水道管のことなど思いもつかなかった。

 この日は晴れていたがときおり強い風が吹いた。自宅を出て府中街道を北に進むと西武線の八坂駅に出る。そこはもう狭山・境緑道でそこから西に向うと多摩湖に着く。季節は桜からハナミズキとツツジに進んでいる。多摩湖の周回道路に入るには堤防のあたりの坂道を越えねばならない。ここに来るといつも思い出す。この坂道を自転車で上がることがいつまで可能だろうかと。今回は行程の終盤で膝に軽い痛みを感じた。(写真は狭山・境緑道と狭山湖の取水塔)

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*梁塵秘抄

2013年04月10日 | 捨て猫の独り言

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 清明の節気に入り玉川上水の若葉のトンネルが日一日と姿を変えている。土手一面にニリンソウが白い花を咲かせ、数少ないイチリンソウは別な場所でニリンソウより大きな花を咲かせている。ニリンソウは一本の茎の上が咲いてしばらくして下が咲き同時に咲くものではなさそうだ。この春は小さい姿をしたフデリンドウをいつもより多く見かけた。コナラやクヌギの雄花の花穂が緑道に落ちてそれらが敷きつめられた様子は、まるでオリーブイエロー色をした絨毯のようだ。

 今年もテレビでは午前中にMLBの中継が始まった。昨年はひいきチームのボストン・レッドソックスが東地区の最下位に沈んだ。ひじの手術後に再起を計った松坂投手は結果を出せずに解雇された。私が心配していたことが的中してバレンタイン監督は一年で解任された。それにしてもMLBにおける合理的で大胆で非情なチーム編成の手法はとても刺激的だ。しかし以前ほどMLBの熱心なテレビ観戦者ではなくなった。碁石を並べることの興味の方が増したからだろう。

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 「遊びをせむとや生まれけむ 戯れせむとや生まれけむ 遊ぶ子供の声きけば 我が身さへこそゆるがるれ」これは梁塵秘抄の中で最も有名な歌だ。これまで私はこの歌は子供の頃の気持ちを持ち続けていたいと願う心がこもった歌だと理解していた。ところがこれはかなしい歌だと、ある本に書かれている。帝王学である和歌よりも、いやしい身分のものらが歌う「今様(現代流行歌)」に魅せられた後白河法皇が集大成したのが「梁塵秘抄」である。そのような成り立ちから見てもかなしい歌という理解の仕方に私はひかれてしまう。

 「わたしはこんな生活のために生まれてきたのか。遊び女、戯れ女とさげすまれ、もうこころも体もぼろぼろになってしまった。眼の前では子どもらが、なにも憂いのないはつらつとした声をあげて遊んでいる。わたしにもこんなときがあったのか。この汚れきった身の底の底からはげしく揺さぶられる、ああ、あの子供の声・・・・。わたしのいのちはみんな白昼夢のようなものだったのか」どこからか藤圭子の唄が聞こえてくるような気がした。(写真は上がニリンソウ下はイチリンソウ)

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*小平市のこと

2013年04月02日 | 捨て猫の独り言

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 小平市の辺りでは先月の30日から桜吹雪が舞い始めた。そのあと散ってしまうのを遅らせたいかのように寒い日が続いている。今年の東京の桜の満開時期は02年についで過去2番目の早さという。一泊旅行の「三春の滝桜と鶴ヶ城・会津若松」を申し込んでいる。出発は4月中旬だから、このペースならば三春の滝桜はすっかり葉桜になっている可能性が高い。この時期に散歩に出ると大根の花、ニラの花、タンポポ、ヤマブキ、ツバキ、カイドウ、モクレン、ハナズオウなどが迎えてくれる。

 3月27日に住民投票条例が小平市議会本会議で成立した。都が推進する道路建設計画の見直しの是非を問うものだ。この住民運動の主体となった「反映させる会」では7日に投開票が行われる市長選挙を前に候補者にアンケートを実施してその結果の回答をホームページに公表した。「①住民投票を求める署名が7、593筆あつまったことをどう思うか②市内の都市計画道路24本の今後の有り方について、市民の意見を反映させる新たな仕組みづくりにハイかイイエか」の2項目である。住民投票は市長選後の5月に実施される予定である。

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 小平市長選挙の立候補者は4人だが、事実上は革新系2期8年の現職と奪還を目指す保守系の市議会議員の一騎打ちである。①に対する前者の回答は「丁寧な対応を都に要望する」後者は「住民投票には3500万円の税金がかかることを署名した人は知らない」②に対する前者の回答は「ハイとイイエの選択なし」後者は「イイエ」である。ちなみに市長選用のポスターで本人と並ぶ顔は前者が多摩市長の阿部裕行で後者が内閣総理大臣の安倍晋三である。私たち市民は選挙権を行使して市長を選ぶが、市長をはじめとして都が決めたことには抗えない。住民投票成立はこのような現状に対する異議申し立てである。

 小平市にかかわることでつぎのような報道もあった。西武ホールディングスは筆頭株主の米投資会社サーベラスが西武鉄道の5路線の廃止などを要求してきたことを明らかにした。要求していないとサーベラス側は否定しているが5つの路線のうちの一つに国分寺線もある。私も利用しているが、津田塾大や武蔵野美大をはじめ小中高生も利用する路線だから廃止など考えにくい。しかし資本の論理で廃止なら廃止でよろしい。生活の不便さが生じてもそれを受け入れる覚悟をもち毅然とした態度でいたいと思う。(写真は都立薬用植物園3・28) 

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