キンカンの実をムクドリがよく食べてわずかに残っている。隣家ではキンカンの木にネットをかぶせて防御している。暮に種をまいた畑の春菊とチンゲン菜も霜にやられて生育が悪く上に伸びない。これらの野菜は人の口に一度も入らず小鳥たちの冬場の餌としての役割のままで終わりそうだ。椿の花がぽつぽつと咲き始めた。蕗の薹も姿を見せてはいるが寒さのせいかいつもより実の固さを感じさせる。てんぷらとして食卓に出てくるのが待ち遠しい。近くの通学路のでこぼこ状態は放置されたままである。
囲碁の井山祐太九段と将棋の室田伊緒初段の婚約が発表された。両名への個別の取材はご遠慮させていただきますとある。入籍は5月末の予定だという。なんと二人は平成元年の同じ日の生まれである。すなわち1989年5月24日が二人の誕生日だ。しからば当の二人ならずとも5月末の入籍を考えるところだ。これまで囲碁棋士と将棋棋士のカップルは数例あるが、なんと囲碁棋士(男性)×将棋棋士(女性)は今回が初めてのことだという。
かつて囲碁の木谷道場では約20人の弟子たちが共同生活をしながら囲碁の勉強をしていた。勉強は早碁の一番手直りで一カ月に三百局以上打ち、各自が成績ノートを持ち、木谷先生に見てもらった。日本囲碁界の低迷が心配されている。木谷道場にあった師弟関係、そのような師弟関係の希薄化が関係しているのではという声がある。私も遅々とした歩みで囲碁の勉強を始めているが、対局数は一カ月で十局だから木谷道場の三十分の一である。
かつて藤沢秀行という破天荒な囲碁棋士がいた。その一方で「秀行(しゅうこう)塾」で多くの若手棋士の育成にも心血を注いだ。いま彼の「秀行の世界」というシリーズ本をとても興味深く読んでいる。秀行塾の若手同士の実戦を材に解説したもので、その本のはしがきに「碁盤は縦横19路、わずか361点の天地でありますが、そこには無限の広がりと変化の多岐を有しています。千年の囲碁の歴史を通し、同じ碁はあり得ませんし、一局一局新しい世界が生まれているのです。すべての局面を自力の判断で解決していかなくてはいけない。もしより高いものを求め望むならば、盤上に対する”目”を育てる必要があるでしょう」とあった。(写真は日展会場にて)