台湾では来年早々に総統選挙が行われる。この3月末には民進党の蔡英文総統が訪米し、ほぼ時を同じくして国民党の馬英九前総裁が訪中した。このように総統選挙を目前に、米中の外交上の駆け引きが活発化している。
「一つの中国」が米国の政策である。米国は台湾総統の公式訪問を認めることができない。これまで台湾総統の訪米によって中国を刺激することは避けられてきた。今回も蔡英文総統は中米のグアテマラなどを経由してロスアンゼルスで下院議長と会談している。
一方国民党と共産党は、かつて中国の支配を巡って戦った宿敵で、どちらが正当の政権かという歴史的な矛盾を抱える。ただし国民党の馬英九前総裁は現職総統時代に対中貿易や交流の拡大を進め、党内でも台中融和に積極的だという。
台湾は最先端の半導体の9割を生産し、世界のコンピューターの処理能力の3分の1以上は、台湾産の半導体がもたらしているという。もし台湾が中国に封鎖されれば台湾の半導体に頼る企業には打撃となり、その後、さらに世界経済に打撃が生じる。世界最大の半導体受託製造企業TSMCの創業者が張忠謀(モリス・チャン)だ。プラスチックの王永慶といい、台湾はよく偉大な実業家を輩出する。