玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*姜尚中

2019年02月25日 | 捨て猫の独り言

 100年前の1919年に日本の植民地であった朝鮮で3‣1独立運動が起きている。その記事に指摘されて、高校時代にテストのために暗記した記憶がよみがえった。約200万人が参加したと言われるが当時の朝鮮半島の人口が約1700万人だとされるので、どれほど多くのひとが参加したかが分かる。その4月に上海に大韓民国臨時政府が作られる。たしかに3‣1運動によって独立が実現することはなかった。

  「三・一運動」は世界史的に見れば、第1次大戦後の民族運動の先駆けだった。この年の4月にはインドでガンディーの非暴力不服従運動が開始され、5月には中国で反帝・抗日・軍閥打倒の愛国民族運動である「五・四運動」が起きている。朝鮮独立運動100周年に際して日本各地でもさまざまなイベントが予定されているようだ。「主権者は国民」という精神は2017年の朴槿恵大統領弾劾の「ろうそく革命」に受け継がれたと言えようか。

 姜尚中の発言には関心がある。2009年発行の岩波ブックレットの中から取り上げてみた。「私たちの尺度では測り知れないような独裁、あの仰々しさ、あの貧困、あの強権的な政治、あの前近代的な世襲制、そしてあのような軍隊がのさばっている国。しかし、北朝鮮とは、ドイツ、イギリス、オーストラリアも国交を結んでいます。160か国以上と国交があるのです。世界的視野でみれば、北朝鮮との外交では日本とアメリカだけが特異な立場に立っており、小泉政権での日朝平壌宣言は、それを打開しようとしたが、その後の進展が見られない」

 「現状において北朝鮮を完全に地上から消すという選択肢はありません。それでは、北朝鮮を完全に封じ込めてギブアップさせられるか。これも難しいと思います。やはり話し合うしかないのです。交渉を通じて、とにかく風穴を開けていくしかありません。残念ながら東京大学のなかにすら、北朝鮮をまともな研究テーマにしている機関はおろか、研究者すら一人もおりません。相手と敵対関係にあり、相手を許しがたいと思っているにしても、相手が何なのかを知らなければなりません。相手と交渉するためにも相手を知らなければなりません」

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*杉並の真教寺

2019年02月21日 | 捨て猫の独り言

 梅原猛の「親鸞四つの謎を解く」を読んだ。それ以前に、親鸞の生涯が描かれたアニメ全六巻を見ていたので、そのアニメと比較しながら読むことになった。梅原猛を読んで私の中の親鸞像が厚みを増したように感じる。梅原猛は2011年の西山深草著「親鸞は源頼朝の甥―親鸞先妻・玉日実在説」に賛同する。親鸞の母である貴光女は源義朝の娘であり、頼朝や義経と異母兄妹という。梅原猛はこの説を主張する著者をシャーロックホームズになぞらえる。 

 これによると親鸞の祖父である義朝は平安末期の「保元の乱」において敵味方に分かれて戦った父の為義を後白河天皇の命で処刑している。すなわち悪人正機説を師の法然から受け継いだとしても親鸞の罪悪感の深さは、親鸞の血の中にも父を殺した祖父義朝の血が流れていたからだと梅原猛は謎解きする。親鸞は4歳で父を、8歳で母を亡くし9歳で出家したとされるが、父は生きていて平家による源氏の残党狩りが荒れ狂うのを恐れてわが子の一日も早い出家を望んだのではないかとする。

 29歳の親鸞は慈円(天台宗)に決別し比叡山を下り他力易行の法然の弟子となる。梅原猛は法然の「選択本願念仏集」は極めて論理的だとして法然を日本のデカルトと呼ぶ。親鸞は九条兼実と法然の勧めに従い玉日と結婚し、公然と表明した。親鸞が流罪にあった際、玉日は兼実の娘であったことから遠い越後に行くことができず、その代わりに侍女の恵信尼を越後に遣わしたのであろう。流罪中に玉日が死に恵信尼が親鸞の後妻となった。(真教寺の玉日、兼実、親鸞の三体像)

 

 梅原猛は真宗十派の筆頭である本願寺派の流を汲む学者たちが文献研究ばかりであると批判し、フィールド調査の重要性を訴える。実際に京都はもちろん、三重の真宗高田派本山の専修寺、親鸞関東布教ゆかりの茨城や栃木の寺々を訪れている。当初、京都の月輪寺にあったという親鸞、玉日、九条兼実の三体像が安置されている東京杉並区の本願寺派の真教寺を訪れた梅原猛は興奮気味だったと取材同行者は語る。真教寺は築地本願寺和田堀廟所の一角にある。

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*ラジオ体操

2019年02月18日 | 捨て猫の独り言

 朝6時半のラジオ体操は習慣になった。たまに寝過ごした時にはイチニイサンシ、ニイニイサンシと自分で声を出しながらやってみる。すると、第1の途中からいつのまにやら第2に移って混乱し、リズムを崩すことがある。第2と第1は同種の運動が同じ順序でくり返されているから混乱するのも無理もない。第2は第1と同じ動きにならないように、工夫して微妙に変化をもたせている。

 ラジオ体操について、おなじみのインストラクターがラジオで詳しく解説していたのを聞いたことがある。1回ごとに1つの運動についての解説で、とびとびに長期間にわたる放送だから、その全部を聞くことはできなかった。どの部位の運動なのかを意識して行うことが理想なのだろうが、漫然と体を動かしていることが多い。踵をつけたまま行うべきところを上げていたりする誤りに気付いたこともあった。(飯田橋で神田川が外濠と合流)

 

 テレビでもパソコンでもラジオ体操の動画を見ることは可能だが、ほとんど見ることがない。若い女性が躍動している画面が見られるというのに惜しいことだ。一日の生活の流れがあるので朝6時半のラジオというスタイルは変わりそうもない。アトランタに住み13と11歳の孫娘が今年もこれまで通り5月末に日本にやって来る。私が窓の外を眺めながらラジオ体操をすると、後ろの二人は私を真似て体を動かす。

 自分のかけ声だけでラジオ体操をやる時に、第1と第2が混線することがないように訓練を始めた。ラジオに合わせて体操しながら、第1をやっているときには、この運動は第2ではどのような動きかを頭の中で考える。第2をやるときには、第1を頭の中で考える。これでラジオなしでも間違いなくできるはずだ。またある時は、ぼーっと体操していつのまにやら終わっていることもある。

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*視力が問題

2019年02月11日 | 捨て猫の独り言

 コープデリのチラシの片隅に「コープのエシカル」という文字を見つけた。エシカルなお買い物とは地域や社会、環境や人々に配慮してモノやサービスを買うことを言いますと説明がある。さらにレインフォレスト・アライアンス認証とは、熱帯の農園の環境・社会・経済3つの持続可能性の向上を目指すものと続く。つぎの商品らは、その認証農園で育てられたカカオやコーヒー豆を使用と宣伝していた。(右はセンダンの実)

 

 しばらく読書すると目が疲れて、たちまち視野がぼやけてくる。拡大鏡を使うと少しは楽に見ることができる。活字を追うのをやめればよいのだが、最近はめずらしくつぎからつぎに読みたい本がでてきている。仏教おもに親鸞に関連する本に興味が向く。寺に生まれる、あるいは仏教の環境の色濃い家庭で育つ、または親鸞との出会いを語る作家が結構いることに気づかされる。

 たとえば倉田百三、松岡譲、嘉村磯多、外村繁、丹羽文雄、武田泰淳、水上勉、寺内大吉、瀬戸内寂聴などであり、そのうち松岡、嘉村、外村については、まず初めて知る名だ。本棚の武田泰淳の「蝮のすゑ」を読んだ。「生きてゆくことは案外むずかしくないのかも知れない」で始まる。続いて読んだ「愛のかたち」では、光雄は町子から「わたし、女ではないのよ」と打ち明けられた時、少しも驚きはしなかったと始まる。

 どちらも一人の女性が、語り手の私を含めた複数の男性と関係して物語は進行する。辛抱しながら読み進んだ。物語とはいえ、これでもかと人間が煩悩に追い立てられることに付き合うのはつらい。物語よりも、先人が親鸞にどのように向き合ったかなどが知りたい。そんな中の一つとして、梅原猛の「親鸞「四つの謎」を解く」を読んでいる。4年前の89歳の時に出版されたものだ。四つの謎とは親鸞の出家、法然門下入門、結婚、悪の自覚の四つという。

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*温泉

2019年02月07日 | 捨て猫の独り言

 女子テニスの大阪なおみ選手(21)が全豪オープンのシングルスで優勝して、アジア勢初の世界ランキング1位になった。今後は四大大会4冠の期待が高まる。ところで気になるのが大阪選手の国籍選択だ。いまは日米の二重国籍を持つが、日本の法律では今年10月の誕生日までにどちらかに決めることが求められている。元プレイヤーの杉山愛さんは「彼女の気持ちと決断を最大限に尊重してあげたい」とエールを送る。

 どこか温泉に行こうかとぼんやり考えた。乳白色の秋田の乳頭温泉の印象は今でも強烈に残っている。どうせなら一泊でなくてのんびり二泊か三泊したいものだ。そこで年金者福祉施設等利用証を利用しようと伊豆湯河原温泉二泊を予約した。しかし数日後夕刊の広告を見て、少し悩んで伊豆をキャンセルして三月中旬の福島の「岳温泉」二泊に手続きした。泉質は酸性でホテルは郡山駅で降りて送迎バスで60分という。

 つい先日の新聞の書評欄に「湯けむり行脚・池内紀の温泉全書」(山川出版社)が紹介されていた。持田叙子の書評は「湯けむり。なんといい言葉であろう。やわらかく、あたたかい。包容力と浮遊力がある。著者は湯けむり湯気湯の匂いを書くのがうまい」と始まる。その書評の中で秩父市の千賀谷鉱泉のことを取り上げていた。秩父七湯の最古の湯。ここで明治17年困民党が決起した。この湯宿で議論を重ねたと紹介している。

 秩父は私のなじみの土地である。秩父事件についても、ある程度の関心があったから千賀谷鉱泉について調べてみた。おかみさん一人で切り盛りしていて、出かけていることが多く、日帰り入浴などは無人スタイルだという。写真で紹介された浴室の床は板張り浴槽はタイル張りで、浴槽も洗い場も大人二人が入ったら一杯という広さしかない。こんな鄙びた「秘湯」は一人で出かけて泊まるしかない。後継者がいないようだから訪ねるなら早いほうがよさそうだ。

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*仏教文学

2019年02月04日 | 捨て猫の独り言

 昨年の少年少女囲碁大会の小学生名人は沖縄県の小学3年生の川畑拓也君だった。そして年明け早々に話題になったのは4月1日付けで、10歳0カ月でのプロ棋士になる仲邑菫さんである。昨年末に新設した「英才特別採用」の第1号だ。これらのニュースで、囲碁とは「陣とりゲーム」だということを強く感じた。ゲームの楽しさを知るのに思考の深さとか、さまざまな人生経験が必要なのではない。ルールを素直に受け入れる柔軟な吸収力があればよい。(浅草寺にて)

 

 公民館で開かれる親鸞講座の講師から「昨年、会場にて、すてきな出会いを頂き、心より感激、感謝申し上げます。”うれしさを昔はそでにつつみけり 今宵は身にも余りぬるかな” 聞く一つで、心の闇が晴れて、明るく楽しい心になれると聖人は説かれています」という賀状が届いた。毎月4回ほどの開催日の案内ハガキが届く。月に1回は参加しようと考える。参加者は10名に満たないが、何よりも講師が大きな声で話されるので私でも聞き取れるのである。

 図書館で借りた「朗読版 仏教文学名作選」2011年発行というCD6枚組を聞いた。仏教文学とは聞き慣れない言葉だ。15名の作家の作品を朗読で聞く。芥川龍之介「蜘蛛の糸」、菊池寛「恩讐の彼方に」、宮沢賢治「よだかの星」、森鴎外「山椒大夫」、夏目漱石「夢十夜」にはなじみがあった。堀辰雄の「浄瑠璃寺の春」は異質で、妻と共に春の大和路を浄瑠璃時から東大寺へと散策する随想である。かつて中学生の修学旅行引率として訪れた時の浄瑠璃寺の光景がよみがえった。

 他には田山花袋、坂口安吾、中島敦、小泉八雲、泉鏡花、岡本かのこ、尾崎紅葉、太宰治、幸田露伴だ。まもなくして、集英社の「信ずる心」シリーズの花岡大学著「仏教文学」(1987年発行)を読んだ。日本霊異記、今昔物語、西行、良寛、加賀の千代尼、一茶などに言及し、芥川の「蜘蛛の糸」と宮沢賢治の「なめとこやまの熊」について分析している。この本の中で、梅原猛が「宮沢賢治は近代作家の中で一番不可解な作家」と述べたことを紹介している。 

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