4月に掃除機を買った。これまで使っていたアメリカ製の水フィルター掃除機が使用不能になった。たまたま領収書が出てきて判明したが16年前に訪問販売で高額で買わされたものである。私は生来の気の弱さから、よく訪問販売の餌食になっては家人にさんざんなじられたものだ。掃除中に孫がまたがっておもちゃにもなり得る大型の掃除機だった。今回は軽量で集塵容器を丸ごと水洗いできる国産の掃除機にした。
ところで漱石没後百年に学校法人二松学舎は前身の漢学塾で学んだ漱石のアンドロイドを製作するという。声で協力することになった漱石の孫でマンガコラムニスト・学習院大学教授の夏目房之介(65歳)さんは「僕も父も漱石も人の好き嫌いが激しいので、寄ってきて欲しくない人には不機嫌。でもいったん敷居の中へ入るとユーモアがあって優しい。私としてはアンドロイドに笑って欲しい」と希望を述べたという。
連載中の「吾輩は猫である」を時折吹きだしそうになるのをこらえながら読んでいるが、なかなかどうして難解だ。それとは別に、大活字本の「夏目家の糠みそ(上)」に出会った。著者は漱石の孫である半藤未利子だ。父は漱石門下の松岡譲で母は漱石の長女筆子である。夫は昭和史研究家の半藤一利だ。曾祖母、祖母、母から著者へと受け継がれてきた糠床を紹介している。鉄の古銭などを入れる、肉や魚の煮汁の残りを入れる、水気が増してきたら糠と塩を足し、その時一緒に出し昆布と大豆一摑みを入れる、一日一回はかきまぜるなどとある。(ネムとハス)
父が生まれた土地に疎開者として十年あまりも住んだ長岡は著者の第二の故郷という。不謹慎を断りつつ20年8月1日の長岡大空襲について、その規模といい、華やかさといい、後にも先にもあれほど壮観な光景を見たことがない、息をのむほどに美しい眺めだったと書く。男女共学がめずらしかった昭和27年に長岡高校に入学、数少ない女子生徒は過保護な特別待遇を受けたという。因みに半藤利一は長岡高校の同窓生だ。正確には長岡中学校卒の先輩である。「僕の女神サマ、あなたの奴隷になりたい」という殺し文句に釣られてうっかり結婚したと公表している。