11月20日の夕刊には「本日公開、3連休は劇場へ!」と映画「滑走路」の広告が大きく出ていた。32歳で命を絶った若き歌人・萩原慎一郎については、これまでその名を聞いたことはあった。今調べると、1984年生まれで私と同じ小平市に住み、1997年に練馬区にある私立男子中高一貫校の武蔵中学に入学している。
そこで同級生からのいじめに会い、そのいじめは中学から高校と長期間続いた。高2の頃短歌に出会う。俵万智さんの短歌を読んで「これなら自分も書ける」と勘違いしたそうだ。夕刊の広告には「若くして突然世を去った非正規歌人、多くの共感を集めた、唯一の歌集が奇跡の映画化!」とある。
そして俵万智の「萩原慎一郎が残した言葉が、これからも多くの人の翼になることを確信させてくれる映画だった」のコメントも添えられている。同じ夕刊に載った映画紹介には「不安や葛藤を携え、抑圧されながらも、懸命に前を向いて生きていこうとする歌集のトーンが映画でも貫かれている」とある。
「屑籠に入れられていし鞄があればすぐにわかりき僕のものだと」「きみのために用意されたる滑走路きみは翼を手にすればいい」ところで歌人・穂村弘は、石川啄木と俵万智の共通点として、①一首内の情報量を過剰に増やさず、限定的なものにしている、②反論の余地のない、ある意味身も蓋もないことを言っているのにそこに詩情を発生させてしまう特異性、を指摘している。