他人に贈り物をすることを、喜びとしているとしか思えない人がいる。何等の見返りも期待しない。まるで草花が季節ごとに花開いて私たちを楽しませてくれるように、それはごく自然に行われる。これらの行為をどう呼んでいいのか困るのだが。
たとえば94歳になる母親である。都市に住む、あちらこちらの子や孫のために季節ごとの故郷の特産品を宅配便で送り続ける。そのために、不自由な歩様ながらもデパートに出かけて品定めの大仕事をこなす。子や孫は素直に恩恵を受けるだけだ。
それだけではない、当方には70歳台の複数の同級生からも食品の宅配便が届く。それに対するこちらの返礼は、比べものにならないほど少なくアンバランスな状態にある。これでいいのかと思いつつ、不思議な事態をこれまた甘んじて受け入れる。(写真は白日会展での桜島)
先日、食品でなくファックスが送られてきた。母親のことが新聞に掲載されたという。「94歳の手習いで水彩画」の見出しだ。カルチャースクールの「受講生展」が開かれているという記事で、日本画の講師の先生と母親の二人が並んで写っていた。