玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*無限の科学

2020年10月12日 | 捨て猫の独り言

 本棚に2006年発行の科学雑誌(Newtonムック)がある。タイトルは「ゼロと無限の科学」。眠っていたその一冊に手が伸びて、ぱらぱらとページをめっくていたところ、6日の新聞にノーベル物理学賞3氏の発表があった。「ブラックホールの存在を証明」とある。その中の一人オックスフォード大教授のロジャー・ペンローズ氏(89歳)は、14年前のこの雑誌に「宇宙に無限は存在するのか?」に主役として登場していた。

 ひさしぶりに手にした本の中の人物が、今こうしてノーベル物理学賞の記事に出ている。思わず読書に熱が入る。「ブラックホールやビッグバンには必ず密度が無限大になる特異点が存在するということをホーキング博士と共同で発表しましたね」という雑誌の質問に意外な回答をしている。「私が本当にいいたかったのは、どこかで密度がとてつもなく大きくなりそうだぞ、そうなると量子力学を使った新しい理論が必要だということでした」

 つぎの発言も興味深いも。「私が何か考えるときには、たいてい視覚的に、つまり幾何学を使って考えています。私の頭の中にすんなりと入ってくるのはいつも幾何学でした。どうやら多くの数学者たちは、幾何学よりも代数学を得意とするようですが」。だまし絵で有名なエッシャーの「滝」の版画は、ペンローズ博士が考案した実現不可能な三角形をもとにえがかれた。

 

 そしてつぎも。「二つの偶数の和としてあらわすことのできる奇数はあるだろうか?」そんな奇数が存在しないことはすぐにわかる。そのとき私たちは計算ではなく「気づき」によって答えを出している。コンピューターなら、そのような奇数をいつまでも探しつづけるでしょう。人間の意識には、計算という過程では実現できない何かがある。意識の問題は、私たちがまだもっていない物理学によって説明されるものにちがいありません。そのすき間は、量子力学の不完全性にあると思っているのです」 

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