私の場合、文字を読むのはネットよりも本や新聞で読む方が多いだろう。映像を見たいなら断然ネットだ。ネットはまず自分になにか関心があって、そのあとで開くことになるが、本や新聞は向こうから不意に私たちに問いかけてくる。視野を広げる機会は、やはり本や新聞の方が多い。(緑道で見かけた掲示)
若き倫理学者の「新しい状況と新しい言葉」という投稿(5月20日朝日の夕刊)を読んだ。耳慣れない言葉をなじみの言葉に安易に置き換えるのはやめよう。どのような言葉がその状況にしっくりくるか私たち自身で吟味しようと提案している。「濃厚接触」や「社会的距離」もかなりミスリーディングだとして、後者は「対人距離」が適当でないかと記している。
東京都広報6月号のトップ記事「みんなで守ろう いのちと暮らし」はよくできていた。第1波と第2波の予想される推移が波線グラフで示されている。緩和・再要請を判断する際に用いるモニタリング(監視体制)指標である7項目が列挙してある。「社会的距離」の文字はなく「人との距離の確保」にご協力をとある。
密閉、密集、密接の「密接」について東京都広報は「近距離での密接した会話」と解説している。これをヒントに英語では close contact という疫学上の専門用語である「濃厚接触」を「近距離会話」と考えたが、どうもしっくりこない。さらにロックダウンもそれぞれの国で内実は異なるのだから日本語に置き換えるのは難しい。言葉の吟味もなかなか大変である。