玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*虫の声

2012年09月25日 | 捨て猫の独り言

 日曜早朝のラジオ番組「季節のいのち」は先週がカネタタキ、今週はカンタンと秋の虫を取り上げていた。これまで小鳥の声、虫の声を聞き分けることなく生きてきたことに気付く。なんの不思議もないがこの地球上はまだまだ私の知らないことがらで満ち溢れているのだ。やっと朝晩冷え込むようになった。夕暮ともなると窓の外では虫の声が鳴りやまない。これはなんという虫の鳴き声なのか。

 文部省唱歌「虫のこえ」には五匹の虫たちが登場する。チンチロチンチロ チンチロリンが松虫、リンリンリンリン リインリンが鈴虫、キリキリキリキリがこおろぎ、ガチャガチャガチャガチャがくつわ虫、チョンチョンチョンチョン スイッチョンが馬おいである。唱歌に登場しないのが鳴く虫の女王と言われているカンタンである。虫はメスを呼ぶために鳴く。だから鳴きばねをもっているのはオスだけだ。鳴く虫の王様が鈴虫で女王様がカンタンということだ。

 古い話になるが詩人の清岡卓行(2006年に83歳で没)に七年間にわたる雑誌発表の七つの短編を集めた「邯鄲の庭」という単行本がある。詩人が24歳年下の女性と再婚して幼い子と3人で暮らしていた頃のことが書かれている。本のタイトルにもなった「邯鄲の庭」はちょうど34年前に書かれた。その一部をつぎに引用するが、当時の作者はカンタンについて図鑑を引っ張り出して調べている。現在の私たちはパソコンのYou Tubeでさまざまな虫の、姿ばかりでなくその鳴く声までも聞くことが可能である。

 「それにしても、邯鄲という虫の鳴き声はなんと美しいのだろう。それは家族の心のつながりを象るのにふさわしいものであった。邯鄲の実物を私はまだ見たことがないが、その声は多摩湖の近くに転居してきた年から、家のまわりで聞いている。よく聞こえる秋と少ししか聞こえない秋があったが、リリリリリ・・・・・・と二十秒ぐらいつづく、涼しく冴えた、寂しそうな声である。昆虫の図鑑によると、頭は小さく、体はほっそりして1.4センチ内外、上から見ると淡い黄緑色で、触角は糸のようにずいぶん長い。弱弱しくはかない感じの虫である」

コメント
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