玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*二十歳の囲碁名人

2009年10月20日 | 捨て猫の独り言

 囲碁界には七つの大きなタイトルがあります。朝日、毎日、読売新聞がそれぞれ主催する、名人、本因坊、棋聖の三大タイトルに、十段、天元、王座、碁聖を加えたものです。この15日に二十歳の名人が誕生しました。日本棋院関西総本部所属の井山裕太八段が、5冠王の張羽名人(29歳)に昨年に続く2度目の挑戦で、今年は4勝1敗と圧倒して名人位を奪取したのです。

 三大タイトル戦の2日制の勝負はテレビ中継されます。私には見逃せない番組です。昨年19歳での名人への初挑戦は3勝4敗の惜敗でした。本人の言によると 「最終局のあと、部屋に戻って涙が止まらなかった」 とありました。これは私の想像を超えるものでした。東大阪市で一緒に暮らす祖母が 「昔から、おとなしい子でした。我慢強くてなかなか泣かない。ただ碁だけは別。負けるとよく泣いていました」 と話すのを聞いて、昨年の涙を納得せざるをえません。

 小学1年で石井邦生九段の弟子に、小学2年で全国大会の小学生の部優勝、小学3年でプロ棋士の卵である院生に、中学1年でプロ棋士(初段)デビュー、高校に進まず囲碁に専念します。16歳で阿含・桐山杯で優勝しタイトル獲得史上最年少記録を達成、17歳で棋聖戦、18歳で名人戦のリーグ入り、今年は本因坊戦のリーグ入りも果たしました。師匠の石井九段は 「碁の感性、ひらめきがずばぬけており、碁の申し子かと思った」 と6歳の出会いの時のことを振り返ります。一緒に暮らす祖父がアマ強豪だったのも幸いでした。

 本人の強い意志や努力によって才能が開花する様子を目撃するのは気分のよいものです。こちらも勇気付けられます。私は先輩プロ棋士たちが井山裕太八段の打った手を称賛する場面をテレビで何度か見てきました。私ぐらいの棋力でも、打つ手が新鮮だということを感じることができます。名人位奪取直後に印象的な談話を残しています。「去年は張羽名人の打つ手が正しい手に見えた。今年は、自分がベストをつくせば勝てるという強い気持ちで臨んだ」 たしかに若武者は勝ちが見えても安全運転の手ではなく、最強手を打っていました。

コメント (3)
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