ここ数日新聞の書評、家庭欄に表記の絵本に関する記事が出ていた。文化人類学者辻信一氏が南米に伝わる古い物語を監修した本で「温暖化阻止のために出来る事から」と静かに呼びかけている。森が燃えていた。動物達が次々と逃げている中で、一羽のハチドリが水を一滴づつ運び火の上に落としてゆく。そんな事をしていて何になるのと他の動物達が笑うとハチドリは答える。「私は、私にできることをしているだけ。(テレ気味の中村氏と)
チリから乗船してきた3人の講師の中の1人である中村隆市氏は、辻氏が世話人となって1996年設立されたNGO団体「ナマケモノ倶楽部」のメンバーの1人であった。彼はユッタリ口調でNPOの理念、活動内容を紹介した。例えば町興しになる地域通貨。生産者の生活と環境保全を配慮しかつ消費者の健康にも留意したフェアートレード。2003年以来、スローな夜をと題し夏至の日総数100万人単位で行ったCandle Nightなど。船内では地域通貨を試み、フェアトレードのブラジル産コーヒーの販売もした。
当初ハチドリの物語は地球温暖化の行動と重ね、「地球の冷やし方」という小冊子で販売された。本年8月NHKの報道番組でハチドリTシャツを着て環境運動をする若者の活動が紹介されたようで、以来絵本は売れ続け運動自体が静かなブームになっているという。温暖化防止のためCO2の削減になる行動を「ポトリ」という単位で表し、例えばエアコン暖房を1度低くすると1日1.5ポトリ(1ポトリはCO2=100g)等と数値化して提唱している。(チリの先住民マプーチェ民族の人権活動家ブルーノ氏と)
今回挿絵を描いたカナダの先住民族ハイダの芸術家マイケル・ヤグラナスは辻氏の友人で「GNHキャンペーン」で来日中という。GNHとはGross National Happiness「国民総幸福」の意でGNPに「伝統文化の維持発展」「環境保護」などの視点を加え「真の豊かさ」を表すとしている。マイケル氏はたった2千人の先住民の小さなパワーが、巨大企業の森林伐採を阻止した自らの経験と重ね、ハチドリの一滴は自分の巣だけではなく森全体を守る行動を生んだと発言している。(タヒチの聖なる場所マラエで木の根で作った汁を飲む歓迎の儀式)
環境問題は大きすぎて我々にはやりようがないと思い目を瞑りがちだ。だから「やれることから、やれることだけ」でもやろうという。小さなハチドリが健気に行動している。そんな虚飾のない生き方は若者のみならず、定年を向かえ今後の生活設計を考えている世代にも共感を呼んでいるようだ。(山の中腹にジープで向かう途中数箇所で滝と出合った)