Various Topics 2

海外、日本、10代から90代までの友人・知人との会話から見えてきたもの
※旧Various Topics(OCN)

柔道教室とモルディブの役人

2010年03月11日 | 異文化

もう27年以上も前、モルディブは未だ日本人にはあまりポピュラーなリゾートではなかった頃、現地で聞いた話をひとつ。

“モルディブの他の島に青年海外協力隊員として赴任してきた男性がいたんです。彼が赴任してすぐ、その島人から、「日本人なら柔道ができるだろう。皆に教えてくれないか。」と頼み込まれたそうです。柔道の心得があった彼は島人の願いを快諾して、皆に柔道を教えることにしました。

そしていざ柔道教室を開こうとしていた時、島に役人がやってきて、「この国の人達は“人と戦うこと”を知りません。どうぞ、柔道教室を開くのは止めてください。」と彼に頼んだということなんです。

『柔道』はもちろん、『人と戦う為のもの』ではありませんが、この役人が言う「モルディブの人達に、とっくみあいを覚えさせたくない」という気持ちを尊重して、この隊員は教室を開くのを中止したといいます。”

これは、現地に滞在していた旅行会社のガイドさんから教えてもらった話です。いわゆる“又聞き”なので、真偽のほどはわかりませんが、この話を聞いたときの私の感想は「ああ、モルディブって、なんて平和で素朴な国なんだろう」という感嘆に近いものでした。話してくれたガイドさんも、モルディブの良さを知って欲しくて聞かせてくれたものでした。

さて、時を経て年齢と経験を重ねた今でも、私はこのエピソードは気に入っています。しかしながら、「この時の役人のような行動は、(一般的意味でいう)民主的とはいえないな」ということに今は気がついています。

-島人は『柔道』を習いたがったけれど、結果的には役人がこれを中止させたということ。無理やり禁じたわけではないですし、島人も役人の話に納得もしたと思います。しかし、これは「これは国の為にならないから、やってはいけない」という国家による一種の統制でもありました。

もしその時「柔道は格闘と違うんですよ」と隊員がきちんと説明をしていたら、結果は違っていたかもしれません。

が、それはおいておいて、役人が島人の楽しみにしているイベントを止めさせた行為も、隊員がそれに従ったのも、それも一つのあり方として認めても良いのかもしれません。

日本人に人気があるシンガポールは、今でもたくさんの規制もありますし、情報も自由に入るわけではありません。マレーシアも種類は違えど似たようなもので、共に他民族国家ながら国の内外での大きな争いごとはとりあえずありません。少し離れてブータンなどもしっかり国家による決まりごとがある国ですが、国民の幸福度が高いことで注目されている国です。

『多少国家の統制があって自由が少し制約される』ことがあっても、国家が国民の幸せを願っていることと、程度を超えないでいる限り、『民主的』の範疇に納めても良いのだと思います。

蛇足ながら、隊員のことについて言えば、「郷に入れば郷に従え」を実践した、ということにもなるのでしょう。

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