昨日、母親のリクエストに応じて、秋田県立近代美術館(横手市)で開催中の「光と影のファンタジー 藤城清治の世界展」に行ってきました。
この展覧会が開催中であることは帰省前から知っていて、なんとなく「連れて行って欲しい」というリクエストが来そうな予感がありましたから、すぐさま了解しました。
もともと、私は自宅に藤城さんの作品を額に入れて飾っているくらいですから、憎からず思っておりましたデス
そんなわけで、秋田自動車道を走ること1時間弱で、2年ぶり秋田県立近代美術館の(前回の記事はこちら)に到着しました。
美術館に向かう通路にはおなじみのコビトの図柄のフラッグが下がっていて、気分が盛り上がります
ちなみに、秋田県立近代美術館は秋田ふるさと村という観光テーマパークの中にあります。このテーマパークは、B級ご当地グルメの祭典「B-1グランプリ」の第4回大会(地の利も生かして横手焼きそばが念願のグランプリ
を獲得した大会)のメイン会場になった場所です。
秋田の名産品の展示や即売所は無料で楽しめます(駐車料金も無料)。
さて、美術館の入口に到着。
入口は閑散としていますが、場内は老若男女&親子連れで結構賑わっていました。
そして、作品を鑑賞する人たちはみんな笑顔です。
こんな展覧会ってめったにあるものではありません。
この私も同様です。
ごく初期のシンプルな(でもさすがに精緻な)白黒の影絵から始まり、邱永漢版西遊記挿絵用のなんとも艶っぽい影絵、そして、おなじみのメルヘン全開の作品まで、質・量とも満足度の高い展覧会でした。
どの作品が印象に残ったかと思い起こすと、「西遊記」の他、アンデルセンの「ぶどう酒びんのふしぎな旅」、藤城清治&太田光の「絵本 マボロシの鳥」は、どちらも大団円で終わらないシュールさとそこはかとない寂しさがイカしていたし(こうしたストーリーが藤城さんの好みか?)、銀座の交詢社ビルにあった今は無きビアホール「ピルゼン(こちらのサイトの半ば過ぎをご参照方)」の壁画なんぞは昔のことを思い出させてくれたし(何度か上司に連れて行かれ、散々仕事上のお説教をくらって割り勘
だった記憶がよみがえる…
)と、キリがありません。
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ぶどう酒びんのふしぎな旅 価格:¥ 3,000(税込) 発売日:2010-04-13 |
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絵本マボロシの鳥 価格:¥ 3,000(税込) 発売日:2011-05-17 |
そんな中、「秋田スペシャル」がこれまた素晴らしいデキでした。
まずは、高さ8m
もの大影絵「九九九段、赤神神社五社堂」
この展覧会のために制作され、開幕初日ギリギリに到着したというできたてホヤホヤの作品です。
五社堂には、私も小学生だか中学生の頃に登ったことがありまして、ひたすら続く石段に閉口した記憶があります。
この「難関」を、齢87歳の藤城さんが自分の足で登りきり、デッサンしていらしたのだそうな
そして、展覧会の主催者の一つ秋田魁新報社の特集サイトによると、
石段を上るのは難なくクリア、まだまだ元気と自分でもうれしかった。87歳のエネルギーの証しとし、実際に上った体験がにじみ出た絵にもしたかった。そして9メートルの天井高く、夜明けの光の中に浮かび上がる五社堂の美しさを描き出したかった。
しかし8メートルの大影絵は、999の石段を上るよりはるかに大変だった。徹夜徹夜で、片刃のかみそりを使う僕の指は擦り切れ、腫れ上がり、氷で冷やしながら切り続けた。
だそうです。なんというパワー、なんという創作意欲なんでしょうか
この作品は秋田県立近代美術館がお買い上げして、平野政吉美術館が収蔵する藤田嗣治の超大作(3.65m×20.5m)「秋田の行事」のように、秋田の宝
としてずっと当地にいていただくしかないと思いますゾ
もう1点、階段を昇ったところにポツンと展示されていた(この展示の仕方が意味不明 お年寄りはあえぎあえぎ急な階段を昇っていました
)「竿燈まつり」が超ステキ
でした
しなったりねじれた竿燈と、大小たくさんの提灯のあかりが躍動感たっぷりに描かれています。
藤城さんは、
竿燈まつりは3年前に見た時、一生忘れられないくらい感動した。その様子をデッサンし、影絵にした。
とコメントされていますが、「一生忘れないくらい感動」されただけでなく、竿燈の魅力を的確に捉えられて、それを影絵にしてくださったことに、秋田人の私は感動したのでありました。
正直、この作品ほど竿燈を竿燈らしく描いた作品を観たのは初めてでした
こうして、かなり満足して出口からグッズ売り場に出た私は、図録を買おうかどうか迷っていました。
ところが、グッズ売り場で図録の値段を見てその気が薄れた…
なんと、3,600円だそうな
いろいろな展覧会に行き、図録を買ったり買わなかったりした私ですが、こんな高価な図録(普通の並製の図録です)に出会ったことはありません
それでもペラペラと図録の見本をめくって、その理由が見えた気がします。
出品作品の写真と解説だけでなく、出品目録と会場の配置図までが刷り込まれいたのです(どうりで、出品目録が無料配布されていなかったわけだ…)。
ということは、この図録は巡回展も含めた「共用」のものではなく、7月22日~9月25日に秋田県立近代美術館で開催される「光と影のファンタジー 藤城清治の世界展」専用のものということか?
それにしても高い
私が図録購入費用として出せるのは2,500円までデス
まさか、3か月の会期中に4回も藤城さんのサイン会を開催するのは、こんな高額な図録を売り上げようとする事務所の策略か?とまで勘ぐってしまう…
いや、逆に、藤城さんのサイン会(HPを見ると、藤城さんは毎週末のように各地でサイン会を開催しています)の旅費を捻出するために図録の価格を高く設定しているのかもしれません。
いずれにしても、かなり高額なレプリカがズラリと並ぶグッズ売り場を見て、この日の感動や感慨がちょっとだけ醒めた私でありました。