三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

ケビン・ベイルズ『グローバル経済と現代奴隷制』

2014年10月03日 | 

奴隷というのは過去の遺物だと思っていたが、ケビン・ベイルズ『グローバル経済と現代奴隷制』によると、世界には約2700万人の奴隷が存在するそうだ。
奴隷は農作業、レンガ作り、炭焼き、宝石加工、鉱石掘り、売春、絨毯織り、家事労働などに従事させられ、暴力によって脅され、拘束され、給料はない。
『グローバル経済と現代奴隷制』には、タイの売春、モーリタニアの水売り、ブラジルの炭焼き、パキスタンのレンガ作り、インドの農業での奴隷の実態が述べられている。

小作人は厳しい生活を送っているが、彼らは奴隷ではない。
児童労働はひどいものだが、必ずしも奴隷制ではない。
インドでは14歳以下の6500万人から1億人の子供が一日8時間以上、低賃金、長時間、不衛生な労働、働かされていて、そのうち約1500万人が児童労働者ではなく児童奴隷だという。
先進国でも、パリに約3000人、ロンドンに1000人ほどが家事奴隷として虐待を受けている。
日本には約8万人の奴隷がいるそうだ。

ケビン・ベイルズは現代の奴隷制(新奴隷制)はかつてのアメリカ南部のような奴隷制(旧奴隷制)とは違うという。
旧奴隷制ではアフリカから奴隷を輸入するために奴隷の値段は高かった。
1850年に、平均的屋外労働者は1000ドルから1800ドルで売られていた。
当時のアメリカ人労働者の平均年収の3倍から6倍で、今だと600万円から1200万円くらい。
奴隷は所有者の資産だった。

現代に奴隷が存在する原因の一つは人口の増加で、発展途上国の人口は求人数をはるかに上回るために安価なので、搾れるだけ搾り取って使い捨てする。
奴隷の維持に多大の投資をする必要はない。
新奴隷制では人間は使い捨て商品となった。

約2700万人の奴隷のうち、1500万人から2000万人は、インド、パキスタン、バングラデシュ、ネパールの債務奴隷で、借金の担保として奴隷となる。
債務奴隷制 自分の身を借金と引き換えにする。働いても債務は減らない。親が死ぬと子供に債務が引き継がれ、子供も奴隷にされる。
契約奴隷制 雇用を保証すると契約をし、仕事場に連れていかれて奴隷にされる。
インドでは500~1000ルピー(約1500円から2800円)の借金で債務奴隷になる。
インドの債務奴隷は先祖代々で、一日働いて、その日の食べ物をもらうだけなので、農業を機械化するより債務奴隷に働かせるほうが安上がり。

アメリカの奴隷は年5%くらいの利益を生み出したが、インドの農業債務労働者は年間50%の利益をあげる。
タイでは12歳から15歳くらいの少女は10万円から25万円程度で買え、売春宿の利益率は年800%になる。

タイの売春婦はすべて奴隷だというわけではなくて、タイには50万~100万人の売春婦がいるが、奴隷にされた売春婦は約35000人。
奴隷にされた少女たちが奉仕する相手は30分で100バーツ(約500円)しか払えないような人夫、学生、労働者である。
どのようにして奴隷売春婦にするか。

・だます
いい仕事があると持ちかける。

・親が売る
経済発展にともなって、冷蔵庫、テレビ、エアコンなどの消費物資が氾濫し、それらを手に入れるために娘を売る親がいる。
タイ北部地方で娘を売った親の3分の2は、娘を売らなくてすませることができたのに、「それでも新しいカラーテレビとビデオが欲しかった」という。

・さらう
タイだけでなく、ビルマやラオスからやってきた女性や子供を誘拐する。

慰安婦の中には同じようにして連れてこられた人がいたのではないかと思った。
もっともタイの売春宿は国や軍が管理しているわけではないが。

娘を売った金が借金とされ、売春婦は給料をもらっているとしても、利息、部屋代、飲食代、薬代、そしてヒモの取り分と売春宿の取り分を天引きされ、元金を減らすことはできないどころか、かえって借金が増える仕組みになっている。
逃げ出しても行くところがないし、ワイロをもらっている役人、警察は奴隷主の味方なので助けてはくれない。
国は法律を作っても、実効的なことは何もしない。
日本のタコ部屋も奴隷労働なのかと思いました。

新奴隷制の特徴の一つは、奴隷支配者が見えないということ。
アメリカの奴隷は所有者の農場で生活していた。
それに対し、タイの売春宿を所有する投資家は、経営をヒモに委ねており、投資家は少女たちがどのようにして連れてこられるのか、どういう状態にあるのかを知らない。
少女たちも所有者である投資家を知らない。

新奴隷制が日本に住む私たちに関係ないわけではない。

奴隷制から利益を得ている人―という定義には、世間一般の全員が含まれる―あなたも私も。

児童奴隷が作った製品を私たちが使っているかもしれない。
年金信託や投資信託が買った株が、奴隷労働を下請けに使う会社を所有する企業のものだという可能性がある。
これは奴隷問題にかぎらないわけで、たとえば対人地雷を作っている会社に投資しているかもしれない。
では私たちに何ができるかというと、児童労働によって作られたものではなく、不当に安い価格で買い叩かれてもいない製品を買うというフェアトレード商品を買うといったことぐらいかとタメイキでした。

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