三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

リチャード・カーティス『アバウト・タイム』

2014年10月19日 | 映画

タイムトラベルものは過去の改変をするわけだから、タイムパラドックスは避けられない。
小説にしろ映画にしろ、どんなに緻密に考えられていても、どこかにほころびがあって、つじつまが合わなくなるように思う。

うまくできていると思うのが、ウォルター・テヴィス「幽明界(リンボ)に座して」(『ふるさと遠く』)で、こんな話です。
「わたし」は死んでから幽明界で座り、人生のさまざまな時点に立ち返って、ちょっとしたこと改善することをしている。
中学校のとき、先生に指されて立ち上がったら、ズボンのボタンがはずれていて、先生に注意されたことがあり、ボタンをかけて立ち上がるというふうにやり直す。
この変化は他の変化を惹き起こすことはない。
人生の特定の場面で、犯した誤ちを訂正することはできるが、重要な点を根本から変えることはできない。
「わたし」は二度結婚し、二度離婚している。
離婚することは変えられないが、妻との修羅場には手を加えることができた。
幽明界で妻たちの関係に必要な変更を加えることで安堵し、罪悪感もない。
だけども……、という話。

私は粗忽な人間なので、つまらないことをよく言ってしまう。

特に飲み会の翌日は自己嫌悪に陥り、死にたくなることがしばしばある。
恥をかいたり、気詰まりになったり、人を傷つけたり、不愉快にさせたり、白けさせたり……。
だから、私もこんなささやかな人生の改変ができたらと本気で思う。

リチャード・カーティス『アバウト・タイム』の主人公は代々の男系は過去に戻ることができる能力を持っている。
その方法はきわめてお手軽。
過去に戻ってやり直しても、失敗すれば、またまた過去に戻ればいいわけで、したいことができるはず。
でも、主人公は、世のため、人のために何かしようとは思わない。
父親は過去に戻っては読書をしたそうで、ディケンズの全作品を三度読んだと言ってる。

ケン・グリムウッド『リプレイ』では、金持ちになる、平穏な生活をする、社会を変革するなどいろんなことを試みる。

『アバウト・タイム』の主人公はいろんなことに挑戦するとか、社会を良くしようとして悩むとか、そんなことはしない。
半径1mの私的な事柄に終始する。

で、私なら何をするか考えたのだが、映画を見て、終わったら3時間前に戻り、別の映画を見る。

そのくり返しで、すべての映画を見る。
あるいは、レストランで食事をし、ちょっと戻って別の店で食べるetc。
自分でもせこいと思うが、主人公も同じことを何度か繰り返していました。

だけど、過去に戻ってやり直したいかと聞かれたら、ためらってしまう。
若い時に戻りたいが、また学校に行って勉強するのはイヤだし、そんな昔ではなくて今日の朝に戻るのも、同じことを繰り返すわけで、面倒な話である。
ちょっと過去に行って、まずかったことを訂正して、そして現在に戻れたらいい。

そこらも『アバウト・タイム』は都合よくできている。

それとか、美人で話が尽きない女性がなぜか壁の花とか、何度も過去に戻ってたら他の人よりも年をとるスピードが速くなるはずなのにとか、突っ込みたいとこはあるけども、楽しく見れたから文句を言いません。
妄想をかきたてる映画でした。

『アバウト・タイム』の主人公は優しくて退屈じゃない。
こういう性格の主人公と、こういう妻だったら、過去に戻ってやり直さなくても幸せな人生を送るのではと思う。

 

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