三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

ポール・オフェット『反ワクチン運動の真実』(5)

2024年05月20日 | 問題のある考え
ポール・オフェット『反ワクチン運動の真実』によると、反ワクチン運動の源流は19世紀の種痘反対運動です。

種痘反対勢力にイングランド政府は妥協し、1898年に良心的拒否法を通過させた。
種痘を受けさせたくない親は受けさせなくてよくなった。
イングランドの種痘の接種率は急落し、天然痘感染と死亡の中心となった。
19世紀、イングランドの親たちは、種痘は純粋でも安全でもなく、自然や神に反する行為だと論じた。だが親の怒りは医師よりは政府の役人に向かった。役人は自分たちに指図する権利もないし、子どもに何を接種すべきか指図する権利などないと考えたからだ。抗議運動の参加者にとって、法定予防接種は許容しがたい自由権の侵害だった。

現代のアメリカも、行政はワクチン接種で妥協し、親の宗教、思想を理由として子供にワクチンを受けさせなくてもよくなっています。

1960年代末から1970年代にかけて、アメリカ疾病管理予防センターは小学校の入学条件として麻疹ワクチン接種を要件とし、1981年までに全ての州で入学に予防接種を義務づけた。
ところがワクチンの強制に反発する親が訴訟を起こした。

1966年、ニューヨーク州議会で入学にポリオワクチンの接種を必要とするという法案が議会を通過したが、親の宗教がワクチンを禁じている場合は免除した。
これはクリスチャン・サイエンスの陳情活動の結果だった。

アメリカではすべての州がワクチンの予防接種を受けないという宗教的免除を認めている。
さらには、2010年までに21の州が予防接種の思想的免除を許している。

クリスチャン・サイエンスはメアリー・ベイカー・エディが1879年に設立した。
信仰療法を説き、一切の医療を否定している。
神は完璧だから完璧な世界を作った、痛みなどは実際は存在しない。
病気は身体の症状ではなく精神によって起こるから、信仰によって病気は消える。
天然痘のような病気はワクチンではなく、祈りによって予防することができる。

メアリー・ベイカー・エディは著書に「我々が天然痘になるのは、他の人が天然痘になるからだが、それは物質ではなく精神が病気を取り込み運ぶのだ」と書いている。

クリスチャン・サイエンスの信者による医療ネグレクトによって死ぬ子供たちがいる。
糖尿病の子供にインスリンをやめさせて死亡させる。
定期検診のレントゲン撮影をしない。
高熱を出した子供に治療師が「神様は病気をお作りにならなかったので、病気は幻なのよ」と言う。
過失致死などで訴えても、不起訴、もしくは無罪判決になる。

信者の子どもたちに麻疹やポリオの流行が起きている。
1972年、クリスチャン・サイエンスの高校でポリオの流行が起き、11人の子どもが身体麻痺となった。
1985年、クリスチャン・サイエンスのプリンシピア大学で3人の学生が麻疹で死亡した。

ブルース・クック『トランボ』は、脚本家であり、赤狩りで刑務所に入ったドルトン・トランボの伝記です。
ドルトン・トランボの母親はクリスチャン・サイエンスの信者だったので、ドルトン・トランボたち子供は予防接種を受けなかった。
俺が言いたいのは、こうした信者たちは罪悪感を抱くことなく行動しているということなんだ。恐れをまったく感じることなく正義を追求している。宗教としてのクリスチャン・サイエンスに対する見解じゃないといわれるかもしれないが、メソジスト派やバプテスト派だけでなくて、どんな宗派についても同じようなことがいえるのだから。ただ、ひとつだけいえるのは、彼らは恐れを知らない心を持っているってことだ。

ウォーターゲート事件に関わったH・R・ハルデマン、ジョン・アーリックマンはクリスチャン・サイエンスの信者であり、ジョン・ディーン、エジル・クローはクリスチャン・サイエンスの大学であるプリンシピア大学の卒業生だった。
クリスチャン・サイエンスは信者数を公表していませんが、かなりの人数ではないかと思います。

クリスチャン・サイエンス・モニターという新聞は、クリスチャン・サイエンスの創始者メリー・ベーカー・エディによって創刊されています。
櫻井よしこさんは「ジャーナリズムの仕事に関心を持ったのは、アメリカの「クリス
チャン・サイエンス・モニター」という新聞の東京支局で助手の職を得てからのことでした」と語っています。
https://www.business-plus.net/special/1404/638001.shtml

ワクチンを否定する団体は他にもあります。
シュタイナー教育のルドルフ・シュタイナーは「予防接種はカルマの発達と輪廻転生のサイクルを妨げる」と考えた。
シュタイナーは神秘思想家、オカルティストでもあるので、やっぱりそうかと思いました。
シュタイナー教育を実践している学校もワクチンに反対しているのでしょうか。

カイロプラクティックはダニエル・D・パルマーが1895年に始めた。
背骨のずれが病気の原因だと考えるカイロプラクティックは細菌説を根拠がないと主張し、ワクチンの危険を説く。

創始者の息子バートレット・ジョシュア・パーマーはこんなことを言っている。
カイロプロクターは全ての伝染病と言われてきたものは背骨に原因があることを発見した。もし100人の天然痘患者がいたら、一人の患者のどこにサプトラクション(背骨のずれ)があるのかを見出し、他の99人の状態も同じであることを証明しよう。背骨を調整し、身体の機能が正常になる。伝染病などない。感染もないのだ。

日本カイロプラクターズ協会のHPを見ると、世界には約10万人のカイロプラクターがいて、日本には608人だそうです。
https://jac-chiro.org/aboutchiro/
会員数12000名規模のカイロプラクティック団体も日本にあります。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000093169.html
背骨の矯正であらゆる病気が治るんだったら、病人はいなくなるはずですが。

新型コロナウイルス感染防止のためにマスクをすることになぜ反対するのかと不思議に思っていましたが、強制を嫌うだけでなく、宗教的信念があるのかもしれません。
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