光市事件の死刑判決にはメディアの助力が大きかったと思います。
たとえば、メディアによる弁護団へのバッシングもひどいものでした。
本村洋氏は判決後の記者会見で、弁護団へのバッシングについて、「私の事件を弁護されることになってから、たくさんの嫌がらせだとか、いろんな被害があったりしたということで、非常にご心労が耐えなかったと思います。これは法治国家であってはならないことだと思います。ただ、そういった逆風の中でも最後まで熱心に弁論されたということは立派なことだというふうに思いますし」と話しています。
この批判にはメディアも含まれるわけですが、この本村洋氏の発言は報道されていないようです。
2月16日の「NEWS23」で、司会者が「最高裁で死刑判決が出されます」と言って、後で訂正していました。
このミスはともかくとして、20日のニュースで驚いたのが、実名だけでなく、本人の写真まで出していたということ。
大手の新聞社で実名報道をしなかったのは毎日新聞と中日新聞、西日本新聞だけではないでしょうか。
メディアは率先して少年法の精神をなし崩しにし、厳罰化に貢献しているわけです。
◇実名、法の趣旨無視--沢登俊雄国学院大名誉教授(少年法)の話
実名報道の理由を「更生の可能性が閉ざされた」とする報道機関があるが、少年法61条は、どうひっくり返しても、そのような解釈で実名が許される条文にはなっていない。厳罰化のムードに押され、なし崩しで実名化してしまったのではないか。61条に罰則規定がないのは、立法府が表現の自由を尊重したから。その信義則にあまりに無自覚だ。
今回は元少年の顔写真を掲載するメディアも多くみられた。名前は変えられても、風貌を変えるのは難しく、少年法の理念が以前に増してないがしろにされてしまった。法律の趣旨を無視して、メディアが自ら「裁き」を下してしまったと言えるのではないか。(毎日新聞2月25日)
養子縁組をした人の名前や職業などがネットに出ていましたが、誰がもらしたのか。
法務省やマスコミではないでしょうか。
本村洋氏は「20歳に満たない少年が人を殺めてしまった時に もう一度社会でやり直すチャンスを与えてあげることが社会正義なのか、命をもって罪の償いをさせることが社会正義なのか、どっちが正しいことなのか、とても悩みました。きっとその答えはないんだと思います」と言っていますが、答えはあります。
少年法の理念は「やり直すチャンスを与えてあげることが社会正義」だということです。
その意味でも、やり直す機会を与えたいという次の記事は大切だと思いました。
光市母子殺害:「彼の気持ち知りたい」…元教諭
「今でも私は本当にあの子がやったのか分からない。これで更生の機会が失われてしまった」。高校3年生の元少年を教えた元教諭の男性(67)は、最高裁判決をそう悔やんだ。
元少年の「冷めた目」が印象深いという。「何も感じていないという感じの目で、出会ったことがないような目だった」。自分から物事に積極的に取り組むタイプではなかった元少年は一方、授業中にいくつも席が離れている生徒に大きな声で話しかけるなど「場をわきまえずにその時の感情を出したり、かまってほしいという気持ちが出る面もあった」。
元少年は度々父親から暴力を受けたといわれ、母親は中学1年の時に自殺した。担任だった同僚は元少年を支えようと何度も家庭訪問をしたという。「それでも事件が起きる。量刑は司法が決めることだが、もう少し彼に時間を与え、事件の真相や彼の気持ちを知りたい。可能なら、もう一度事件の解明をやり直してほしい」。元教諭はそう話した。(毎日新聞2月20日)
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