A・R・ホックッシールド『壁の向こうの住人たち』を読んで、ルイジアナ州はアメリカの開発途上国ではないかと思いました。
共和党支持者の多い州(赤い州)では、民主党支持者の強い青い州に比べて平均寿命が5年も短い。
赤い州は低所得者や十代の母親の数が多く、離婚、肥満、トラウマ関連死、低体重児の出生数も多いうえ、就学率が低い。
ルイジアナ州はアメリカで2番目に貧しい州で、1979年に貧困ラインに満たない所得で暮らしている人の割合は19%、2014年でも18%と変わらない。
1990年から2008年にかけて、高校を出ていない年配の白人男性の平均寿命が3年短くなっている。
2015年の報告によると、ルイジアナ州は8年生の読解力が50州のうちの48位、8年生の算数は49位だった。
高校を卒業した州民は8割。
大学院の学位か専門職の学位を取得した人は7%。
児童福祉の充実度は49位で、これは人種とは関係ない。
銃の規制がゆるく、銃撃による死亡率がアメリカで最も高く、全国平均の2倍。
アメリカは人口に占める収監者の比率が世界で2番目に高いが、ルイジアナ州は州人口に占める収監者の割合が最も高く、しかも圧倒的に黒人受刑者が多い。
仕事を増やすために、州は石油会社などの誘致に努め、税制で優遇するなどしている。
ボビー・ジンダル州知事は企業を誘致して雇用を増やそうとし、法人税を削減し、産業界に16億ドルを与え、企業に10年間の免税をした。
ところが、石油産業がルイジアナ州にもたらす財政面の利益は減少した。
法人税を引き下げたため、2008年の税収7億300万ドルが2012年には2億9000万ドルに落ち込んだ。
石油に関わる鉱産税が州の歳入に占める割合は1982年に42%、いまは14%に減っている。
新規の企業は最初の十年間は非課税とされているので、社名を替えればさらに十年間の免税措置を受けられる。
しかも、企業の利益は海外や州外の本社に出ていく。
16億ドルの州予算を削減し、州立病院の民営化、公共セクターの職員3万人(看護師、看護助手、医療技術者、公立学校教師など)の解雇などをした。
高等教育の予算は8億ドル、44%も削減したので、公立大学に給付されていた助成金は大幅に減らされ、多くの授業科目や教育プログラムが廃止された。
石油関連の雇用は州全体の10%以下で、3.3%という推計値もある。
というのも、低い賃金で働く外国人労働者に雇用が奪われるから。
そして、自動化オートメーション化が進んでいるから、少人数のエンジニアと化学者、オペレーターがいればいい。
労働者の90%は平均賃金が1980年以降、横ばいのまま。
高卒の男性の実質賃金は、1970年に比べて40%減少している。
しかも、環境が悪化した。
青い州よりも赤い州のほうが高レベルの公害に苦しんでいる。
2012年、ルイジアナ州は、水、空気、土の中に、州民ひとりあたりおよそ14kgの有毒物質を排出した(アメリカ全体では約5kg)。
2013年、州別有毒物質の排出量ではルイジアナ州は6位、他州からの有害廃棄物引き受け量では3位にランキングされている。
海底油田での原油流出、化学工場での有害物質漏出、工場の爆発、掘削事故による陥没、大気汚染などが起きている。
工場廃液によって河川が汚れたために魚が食べられない地域がある。
水俣病のようなことが起きているわけです。
環境を浄化するつもりはないジンダル州知事は公害防止に使うべき予算を削減した。
デイヴィッド・ヴィッター上院議員は環境保護庁廃止案に賛成票を投じ、海と五大湖の生態系を守ることを目的とした国立海洋保全基金の設立に反対した。
開発途上国に多国籍企業が工場を作って環境破壊しているのと同じことが、アメリカでも貧困州で行われているようです。
ところが、全国的に見て、有害廃棄物にさらされるリスクの高い人ほど、それを心配していない、
1992年から2008年までにおこなわれた5回の大統領選挙で、共和党候補が勝利した22の州では、一般に、政府は経済活動に対する規制を緩和すべきだと考えられている。
深刻な公害に苦しむ人々が公害を撒き散らす企業を規制することに反対し、企業の自由な経済活動を擁護する共和党を支持している。
2010年のデータでは、有害物質による汚染が深刻な郡に暮らす人ほど、アメリカ人は環境汚染を心配しすぎていると考え、国は十分すぎるほどの対策をとっていると信じる傾向が顕著だった。
気まぐれな気象に最も翻弄されているルイジアナ州民が、声高に気候変動の影響を否定する。
税金が企業誘致に使われても文句を言わず、雇用創出と税収増のためと受け入れる。
貧しい州ほど規制がゆるやかな傾向にあり、住民がより汚染の進んだ環境で生活している。
しかし、厳しい規制を設けて環境保護に取り組んでいる州ほど多くの就職口がある。
世界の経済大国を対象にした2016年の調査でも、厳しい環境政策は、国際市場における競争力を損なうどころか、むしろ強めることがわかっている。
管理市場(政府の規制)と非管理市場(規制の撤廃を求める)のどちらかを選択するかという問題ではなく、独占企業に有利な法律に規制された市場と、中小企業に有利な法律に規制された市場のどちらを選ぶかという問題である。
環境問題は自分の健康に関わることなのに、どうして政府や企業に抗議しないのかと不思議です。
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