三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

「死刑囚表現展」のアンケートと平野啓一郎『死刑について』(9)

2024年03月13日 | 死刑
⑨ 被害者遺族の気持ち

被害者や遺族の思いは複雑で、時間の経過とともに気持ちが変わることがあれば、いつまで経っても変わらない部分もあり、一人ひとりが違うそうです。

絶対に死刑、すぐに処刑してほしい人。
死刑とは言い切れない人。
死刑に反対の人。
死刑を望まない理由もさまざまです。
罪に向き合ってほしいと考える人。
執行で区切りがついた人。
執行で区切りがつかない人。
執行されても許せない人。

家族の中でも考えが違います。
オウム真理教の死刑囚が死刑執行された時の、坂本堤弁護士の家族のコメントです。
坂本ちよさん(坂本堤さんの母親)
私も麻原は死刑になるべき人だとは思うけれど、他方では、たとえ死刑ということであっても、人の命を奪うことは嫌だなあという気持ちもあります。

大山友之さん(坂本都子さんの父親)
殺してやりたいと自分の中で何度も言ってきた。死刑執行は当たり前と本当は言いたいけれど、良かったという思いはない。

大山やいさん(坂本都子さんの母親)
私は死刑を喜ぶ人間ではない。
https://blog.goo.ne.jp/a1214/e/574b14ef16537139c29feaf54c6519f0

妹一家4人が殺された入江杏さんは「亡夫もそうでしたが、息子も応報・厳罰派です」と書き、さらに「私は揺れています」とも記しています。
入江杏「刑事司法と被害者遺族」にこうあります。
世間の「被害者遺族はこうあるべき」という「べき論」には違和感を抱いてきた。被害者遺族の中に、憎しみが生きる糧になっている人がいてもいいし、加害者やその家族に寄り添うという考えの人がいてもいい、というのが私の立ち位置だ。刑罰・司法に関して、「厳罰か、修復か」、死刑に関して、「存続か、廃止か」、という二項対立ではなく、柔軟で豊かな論議を望む。
https://www.crimeinfo.jp/wp-content/uploads/2018/09/07.pdf

⑩ 死刑と終身刑

死刑に反対の遺族がおられます。
中谷加代子さんの娘さんは同級生に殺され、加害者は自殺しました。
死刑制度について、私は、「死刑は国家による合法的な殺人」だと考えています。罪を犯してしまった人に必要なのは、向き合い、反省、謝罪、更生、そして本来の自分を生きることであり、そのための時間です。「死刑」は、その贖罪の機会を奪ってしまうことになります。
死刑ではなく、加害者の更生を望んでいるのです。
https://www.crimeinfo.jp/wp-content/uploads/2018/09/07.pdf

終身刑を望む遺族もいます。
仮釈放中の強盗殺人事件のもう一人の被害者遺族への宮下洋一さんのインタビューです。
宮下「もし、遺族の心に平安が訪れないとなると、死刑は何のためにあるのでしょうか」
息子「僕の中では、何も解決しません。西口が死のうが生きようが、母親は帰ってこないわけですからね」
宮下「ならば、死刑でなくとも、仮釈放のない終身刑という考え方もあると思うのですが」
夫「それやったら、まだ分からなくないです。その代わり恩赦がなく、死ぬまで監獄生活。(略)悪い環境の中で一生暮らすなら、いいんやないですか。一瞬にして死刑を受けるよりも、きっと苦しくて、それが死ぬまで続くことを考えればですね」
宮下「酷い殺され方なら、遺族は、何が何でも犯人の死を求めていると思っていたのですが、それは……」
息子「その思いは変わらないですよ。要は犯人が、死ぬ死なんよりも、苦しみを受けろと。それが死刑(の執行)がいつ来るのか分からんという恐怖に慄くのか、一生普通の生活ができないか、どっちのほうが苦しいのかということです」
宮下「苦しむならどんな手段であれ、それを肯定したいということですか」
夫「そうですね。むしろそうですね」
宮下「死んでしまえば、もう相手を苦しませることはできないですよね」
夫「死刑になったら、そこで相手の苦しみはなくなるし、我々も空虚になるだけですよね。(略)死刑をなくすけれど終身刑に置き替える。それやったら考えられんことはないですね」(『死刑のある国で生きる』) 

テキサス大学元教授マリリン・ピーターソンと、ミネソタ大学教授マーク・ウンブライトは、極刑が遺族の感情にどう影響を及ぼすかの研究を行なった。
死刑があるテキサス州と、仮釈放のない終身刑を最高刑とするミネソタ州の遺族を比較している。
調査結果によると、ミネソタ州の遺族のほうが体力的、心理的、行動的に健康であることが分かった。
死刑がある州では、裁判が長引いたり、死刑判決が覆ったりするなどの影響もあり、遺族のストレスが継続する特徴があることを証明した。

日本とアメリカは事情が違いますが、死刑が遺族の負担になることもあるようです。

内閣府による死刑制度に対する世論調査(2019年)によると、仮釈放のない「終身刑」が新たに導入されるならば、死刑を廃止する方がよいと答えた者の割合が35.1%です。
https://survey.gov-online.go.jp/h26/h26-houseido/2-2.html
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