10歳の娘を強姦されて殺されたラーソン夫人は委員会でこう証言した。
「遺族の最大の恐れは、私たちの子どもや最愛の者を殺した殺人犯が、いつか釈放されるのではないかということです」
「他の人たちに危険が及ばないように、殺人犯を街から遠ざけてほしいのです。私たちの多くにとって正義とは、殺人者が二度と再び人を殺すのではないかと心配しなくて済む、ということなのです」(スコット・トゥロー『極刑』)
殺人犯が再犯したら誰が責任を取るんだということになる。
その際、こんなことが許されていいのか、といった論調で語られ、またそのほうが感情に訴えるから説得力がある。
しかし、犯罪を減らし、再犯を防ぐためには単なる感情論では何もならない。
刑務所や少年院で矯正のためにどういうプログラムをすべきか、刑務所から出てどうしたらいいのか、そうしたことこそ論じられるべきだと思う。
たとえば、薬物中毒の場合、ダルクやNAといった施設や自助グループがあることを教え、在所中から手紙のやりとりをするといったことが大切だし、そうした施設やグループがない地域には早急に作るべきである。
死刑を廃止すべきだというと、凶悪犯を野放しにするのかと言う人がいる。
死刑を廃止したなら、死刑相当の犯罪を犯した人は無期刑になるわけで、即釈放されるわけではない。
実際のところ、無期刑で仮釈放になった人が再犯するのは、ここ数年では0から1人である。
それと、無期刑が確定した人は毎年100人を超えており、在所人員は平成17年末で1467人。
そして、仮釈放される人はここ数年では1人から14人、いずれも在所期間は20年以上である。
つまり、無期刑になった人のほとんどは刑務所で一緒を終えることになるわけだ。
実際に死刑囚と接した人の記録を読むと、この人は再び罪を犯すことはないのではないかと思う死刑囚が結構いる。
東京拘置所で医務部技官を勤めた加賀乙彦の『死刑囚の記録』に詳しく書かれている正田昭もその一人である。
オウム真理教の井上嘉浩もたぶん再犯することはないと思う。
これは私が言っているわけではなく、高裁の判決文の中に「現在では同種犯行に及ぶ危険性は消滅したといえる」とある。
ところが、なぜか死刑判決。
金沢文雄広島大学名誉教授は次のように言っている。
「『人格の尊厳』には例外がなく、犯罪者にもこれを認めるということは、犯罪者が罪を自覚し反省して人間として再生する可能性を認めることである。死刑はこの人間的再生の可能性を奪うものであるから、人間の尊厳の思想に反するのである」(団藤重光『死刑廃止論』)
死刑になるほどの犯罪を犯した人であっても再生の可能性を私も信じたい。
最新の画像[もっと見る]
- 植松聖「人を幸せに生きるための7項目」 4年前
- 植松聖「人を幸せに生きるための7項目」 4年前
- 植松聖「人を幸せに生きるための7項目」 4年前
- ボー・バーナム『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』 5年前
- 森達也『i -新聞記者ドキュメント-』 5年前
- 日本の自殺 5年前
- 日本の自殺 5年前
- アメリカの多様性 5年前
- 入管法改正案とカファラ制度 6年前
- マイケル・モス『フードトラップ』 6年前
「死刑」カテゴリの最新記事
- 「死刑囚表現展」のアンケートと平野啓一郎『死刑について』(13)
- 「死刑囚表現展」のアンケートと平野啓一郎『死刑について』(12)
- 「死刑囚表現展」のアンケートと平野啓一郎『死刑について』(11)
- 「死刑囚表現展」のアンケートと平野啓一郎『死刑について』(10)
- 「死刑囚表現展」のアンケートと平野啓一郎『死刑について』(9)
- 「死刑囚表現展」のアンケートと平野啓一郎『死刑について』(7)
- 「死刑囚表現展」のアンケートと平野啓一郎『死刑について』(5)
- 「死刑囚表現展」のアンケートと平野啓一郎『死刑について』(4)
- 「死刑囚表現展」のアンケートと平野啓一郎『死刑について』(3)
- 「死刑囚表現展」のアンケートと平野啓一郎『死刑について』(2)
矯正不可能と決めつけた検事や裁判官はごめんなさいと言うのでしょうか。
そもそも、あなたや私だって何をしでかすかはわかりません。
だって普通の健康な人ならそんなこと思うはずないもんね。そもそも被害者になることを予想することはあっても加害者になることを予想する人間なんていないからね。
もしかして…新手の犯罪予告?
>そもそも、あなたや私だって何をしでかすかはわかりません。
そんな不確かな生き方でどうする。特に、坊さんがそんなこと言って、どうする。自分を信頼しないで、どうする。人を信頼することもできないよ。
例えばスポーツ選手が試合の前に「負けるかもしれません」ばかり言ってて、どうする。「勝ちます」と自分を励まし、期待に応えようと必死で頑張るわけだろう。
>そもそも被害者になることを予想することはあっても加害者になることを予想する人間なんていないからね。
ほんと、そうだよ。
犯罪だけを見ると、自分とは無関係だと思うかもしれません。
しかし、どうしてそういう事件が起きたのか、その背景なり、加害者の生育歴などを考えてみることが大切だと思います。
自分は犯罪を犯そうとは思っていなくても、状況によってはどうなるかはわかりません。
たとえば、酒を飲んでいてケンカになって相手を殴ってしまうとか。
あるいは、車に乗っていて、ちょっとよそ見をしていて事故を起こすとか。
あるいは、会社を突然クビになり、離婚され、住むところがなくなり、今日の食事代もなかったら。
あるいは、犯罪を犯した人が子供のころ虐待を受けていなかったら、父親が暴力団員で刑務所に出たり入ったりしていなかったら、別の人生を送っていたかもしれません。
そういうことを想像するなら、決して他人事ではないなとは思いませんか。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080417-00000021-maip-soci
この人、思想的なものではなくて、みずからの不当要求が通らなかったと市長を撃ったとされますね。
で、20年近く前には本島元長崎市長が狙撃された事件がありましたね。
http://gonta13.at.infoseek.co.jp/newpage318.htm
この被告は、刑を終えて元の右翼団体に復帰。組織のNO.2に出世したとか。やれやれどうしようもない話し。
あと右翼、暴力団関係がらみの事件。
http://mainichi.jp/select/today/news/20080318k0000m040177000c.html
通り魔も問題だけど、人違い射殺ももってのほか。厳罰化とか取り締まりだとかいうのなら、そもそもこういう拳銃所持を許している団体から強化して欲しいもんですわ。
そうそう、まったくその通り。
暴力団や右翼の銃器を取り締まるのはそんなに難しいんでしょうか。
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD27662/story.html
これ、伊丹さん顔にやくざから切りつけられましたよね。これはまさか「やらせ」ではないでしょう。
うちの集合ポストに投げ入れられるビラ。モニターに映ったビラ入れてる人らの写真を、貸金業法や府迷惑防止条例や住居侵入罪の条文をそえて、デカデカと貼ったらまったく入らなくなりました。
で、昼間にベンツで乗り付け、部屋を借りたいと不動産屋さんに電話かけてた乗り付けスキンヘッド姿のいかにもってにいさんらが、この張り紙を見てましたが、何も言ってこなかったですね。こんな些細なことに構ってられんでしょ。
しかし石井議員はお気の毒でした。もっと仕事をしてもらいたかったです。
http://www.interq.or.jp/pacific/getjapan/jounal/ISIIKOKI.htm