三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

坂上香『ライファーズ』1

2013年07月09日 | 厳罰化

坂上香『癒しと和解への旅―犯罪被害者と死刑囚の家族たち』(被害者遺族と死刑囚の家族が一緒に旅をして死刑廃止を訴える)には感動したが、アミティを取り上げた『ライファーズ 罪に向きあう』(ライファーズとは無期刑囚のこと)にも深い感銘を受けた。
というのも、人間は変わるものだということを教えられたからである。

アミティは犯罪者やあらゆる依存症者の社会復帰を支援する非営利団体である。
『ライファーズ』には、アミティに参加することによって生き方が変わった人たちが何人も登場する。
その一人がジミーである。

ジミーは9歳でマリファナに手を出し、11歳で薬物依存症と診断された。
11歳の頃から誕生日のほとんどを矯正施設で迎えている。
18歳の時、車の窃盗で起訴、以来30代前半まで刑務所を出たり入ったりの人生だった。
「アミティの刑務所プログラムでは、彼のように暴力傾向が強く、思春期以前から問題行動や非行を起こし、矯正施設の入所を繰り返してきた者が多い。彼らは人生の早期に、「更生不可能」の烙印を押されている。そして見事なまでに、「変わることはできない」と彼ら自身が信じ込んできた」

ジミー「俺は殺人罪に問われたことはない。でも、それが無実を意味するわけじゃないってこと、わかるよな?」

白人至上主義のギャングに入り、人種偏見に基づいた暴力沙汰も数多く起こしてきた。
「ジミーにとってドライブ・バイ・シューティング(車上からの銃撃)や暴行は日常茶飯事だった。血を流し、動かなくなった身体から金目のものを奪いとり、売りさばいた。それも一度や二度ではない。当時は罪悪感など抱かなかったという。白人以外は人種的に劣っていて、社会に不要だと信じ込んでいた」

そのジミーがこんなことを言うのである。
ジミー「刑務所には、生まれてきたこと自体、前向きに受け止められない奴らも多いんだ。俺もそうだったように、ね。自分の命さえ尊く思えない人間が、他人の命を大切にできると思うかい? まず、自分が生まれてきたことの本当の意味を、自分なりに考える必要があるんだ。親に望まれて生まれてきたかどうかじゃない。この世に生を受けた自分が、どんな人生を送りたいか、なんだ」
生き方が変わるとは、自分が社会復帰をすればいいということではない。

ジミー「自分は、同じ受刑者仲間に助けられたんだ。誰もがお手上げだった乱暴者のこの俺が、だよ。非人間的な状態から抜け出す鍵を、仲間から渡されたんだ。その鍵を必要としている仲間がたくさんいるのに、ポケットにしまいこんだままなんて、もったいないと思わないか?」

ロサンゼルスのコンプトンという町のギャングのリーダーだったチャールズ。
強盗や傷害致死罪等で、逮捕された回数は100回を超え、7つの刑務所に服役したことがある。
チャールズの弟は殺され、末弟のケルビンは17年から終身刑のライファーズ。

刑務所でアミティに参加したチャールズは出所後、アミティの社会復帰施設に二年ほど身を寄せたあと、生まれ育ったコンプトンにあえて戻った。
以前と同じ状態に戻ることは再犯を意味するのに、なぜチャールズは戻ったのか。

「今までと違う生き方をしたいなら、悪い環境からは身を離すというのが鉄則だ。ここには、かつてのギャングの仲間はもちろんのこと、敵のギャングも暮らしている。悪い誘惑が満ちあふれているはずだ。しかし、彼は、ゲットーの文化を自分の足下から少しずつ変えていきたいと考えていたのだった。近所の子どもたちのバスケットボールのコーチを務め、子どもたちの相談にのっていた。ギャングという安易な道に走るのではなく、将来のビジョンを持って生きられるように、自分の育った地域で脱ギャング化を行おうとしていた。同時に、そんな今までとは違う父親の姿を、自分の子どもやケルビンの子どもに見せることで、今までとは違う生き方を選択してほしいと言った」

衆生済度のために浄土から穢土に還る還相とはこういうことかと思った。
「誰でも過ちは犯す。問題はその後をどう生きるかだ」と坂上香氏は言う。
どう生きるかは、人とのつながり、関わりの中で見えてくるんだと思う。 

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