湯浅誠氏の講演を聴いて大変おもしろかったので、湯浅誠氏の著作『貧困襲来』と『反貧困』を読む。
湯浅誠氏は「働いているのに食べていけない」という相談が増えたと言う。
ワーキング・プアとは、憲法25条で保障されている最低生活費(生活保護基準)以下の収入しか得られない人たちのことである。
最低生活費は、東京二三区に住む20代、30代の単身世帯だと月額13万7400円、夫33歳、妻29歳、子4歳の一般標準世帯だと22万9980円。
大都市圏で年収300万円を切る一般標準世帯がワーキング・プアということになる。
年間を通して働いているのに年収200万円未満という人が1000万人を超えていて、総世帯数の18.9%。
貯蓄なし世帯は23.8%である。
ちなみに、平均所得金額は563万8000円。
国民健康保険料の長期滞納者34万世帯のうち、年収200万円未満が67%。
過去一年間で、具合が悪いところがあるのに医療機関に行かなかったことがある低所得者(年収300万円未満、貯蓄30万円未満)は40%、深刻な病気にかかった時に医療費が払えないと不安をもつ人は84%。
600万人から800万人が生活保護制度から漏れている。
雇用保険に加入していない労働者が増え、1982年には59.5%が失業給付を受け取っていたが、2006年には21.6%。
厚生年金、雇用保険、健康保険、労災保険といった社会保険のセーフティネットに穴が空いてしまっていて、一度貧困に落ちると元にはなかなか戻れない。
もっとも、『貧困襲来』の発行が2007年7月、『反貧困』は2008年4月発行だから、現在の状況はいっそうひどくなっているはずだ。
ワーキング・プアという言葉を使いたくない、「働く貧困層」と言うべきだと湯浅誠氏は言う。
ニート、フリーター、ホームレスなどにしてもそうだが、カタカナだときれい事になって、生活保護を受けながらパチンコをしている人、昼間から酒を飲んでいるホームレス、まともに働かずに気楽に生きているフリーターetc、そういうふうに見てしまいがちである。
実態が見えなくなってしまう。
「〈貧困〉というのは、お金だけの問題じゃない」
がんばれなくなっている人に「自分たちもがんばってきたんだから、お前もがんばれ」という言い方をし、自己責任論によって切り捨ててしまう。
しかし、今までは国が守ってくれない分、企業と家族が守ってくれたわけで、一人でがんばってきたわけではない。
「企業と家族に助けられてきた人たちは、立派に日本型福祉を受けてきた。けっして「一人でがんばって」きたわけではない。十分に支えられ、守られてきた」
現在は企業や家族からも排除されている人が増えている。
企業は社宅などの福利厚生を大幅に削っているし、家族も支えきれなくなっている。
いざとなると頼れる人がいる、たとえば家族と暮らしている人と、自分のアパートさえなくて寮やネットカフェを転々としている人とでは、月収10万円でも、その生活は違う。
ネットカフェ難民調査によると、「困ったことや悩み事を相談できる人はいますか」という問いに対して、「親」と答えたのは2.7%、「相談できる人はいない」が42.2%。
「多くの場合、自分の想定する範囲での「客観的状況の大変さ」や「頑張り」に限定されている」「得てして自他の〝溜め〟の大きさの違いは見落とされる。それはときに抑圧となり、暴力となる」
国、社会、企業、家族が支えてくれなくなって、最後のセーフティネットが刑務所というのが現況である。
貧困はその人だけの問題ではない。
貧困かどうかを公式に決めるのは、日本では生活保護が基準となる。
生活保護以下の収入で生活している人がいる、本当に必要ではない人まで生活保護を受けている、生活保護を受けているのにパチンコばかりしている人がいる、だから生活保護費を引き下げるべきだという意見がある。
これは間違い。
「最低生活費の切下げは、生活保護受給者の所得を減らすだけには止まらない。生活保護基準と連動する諸制度の利用資格要件をも同時に引き下げるため、生活保護を受けていない人たちにも多大の影響を及ぼす」
最低生活費としての生活保護基準を基点として低所得者向けサービスが定められている。
たとえば公立小中学生の13%が受けている就学援助は、多くの自治体で収入が生活保護基準の1.3倍までと設定している。
地方税の非課税基準も生活保護基準を下回らないように設定されている。
「低所得者向けサービスを受けられなくなった世帯にとって、それは実質的な負担増を意味する」
生活保護費を引き下げることは、150万人の生活保護受給者だけの問題ではないのである。
貧困と児童虐待・進学・自殺・自己破産などとは関係がある。
児童虐待であるが、3都県の児童相談所で一時保護された510件の中、生活保護世帯・市町村民税非課税・所得税非課税の家庭は44.8%。
リーロイ・H・ベルトン氏はこう断言している。
「20年以上にわたる調査や研究を経ても、児童虐待やネグレクトが強く貧困や定収入に結びついているという事実を超える、児童虐待やネグレクトに関する真実はひとつもない」
「児童虐待やネグレクトを減らすためには、少なくとも貧困ラインの上まで家族の収入を増やす」ことだ。
生まれ育った家庭の貧困は子どもの学歴にも影を落としている。
大学卒業までの子育て費用は1人あたり平均2370万円かかる。
生活保護世帯の高校進学率は約70%。
「貧困家庭の子どもは、低学歴で社会に出て」、「低学歴者に不利益が集中し、そのまま次世代に引き継がれてしまっている」、つまり貧困が親から子へと連鎖しているわけである。
自殺も貧困と無関係ではない。
遺書を残した自殺者1万446人の中で「経済・生活」を自殺の理由としている人が3010人いることから、3割の約1万人が生活苦を理由として自殺していると推計されている。
多重債務者も同じ。
自己破産した人の借入れの要因
生活苦・低所得24.47%
病気・医療費 9.06%
失業・転職 7.17%
給料の減少 4.65%
破産申立者の月収
5万円未満 33%
5万円以上10万円未満14%
つまり、貧困が原因でサラ金から借り、自己破産した人が半数なのである。
サラ金から借りなくても生活が成り立つなら、サラ金に手を出さない。
「結局「借りた金は返さなきゃいけない」という律儀な人たちが、高すぎる違法金利を支払っていることを知らないまま、少ない所得の中からお金を返しつづけて、〈貧困〉に陥っている」
「その人たちは、自己破産しても、またどこかからお金を調達しないと生活できない。でも一度自己破産したら、もうサラ金はお金を貸してくれない。お金を貸してくれるのは、はるかに高い金利をむさぼるヤミ金だけだ」
というため息状態はどんどん加速しているわけです。
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「唯臥」または「独村」を検索していただければ、私のブログに到達します。
でも、消費税を上げようとしているわけで、
やっぱり金持ち優遇なのでしょうか。
湯浅誠さんは、五重の排除ということで、現代日本の貧困の問題点を指摘されましたが、わたしは、ピエール・ブルデューが提唱した「文化資本」という考え方に納得させられたことがあります。ふつうに頭の良い生徒なのに、社会的に恵まれない人がいる。それは育った家庭の文化が影響するうんぬんというお話です。ブログ主さんのように読書や映画鑑賞を趣味とされるかたは、やはり品がよい。
http://blogos.com/article/213076/
最近はこども食堂というのがマスコミでもてはやされる。でも、これ自分だったら行きづらいですね。じぶんちが貧乏だってことを認める。ひとのお情けで食べさせてもらう。どんどん借りが増えていく感じ、、、
こどもだってプライドはあります。勉強が出来たら、この境遇を脱することができると考え、学習支援をくっつけたら効果倍増と思ったりもしますが。
そもそも学校文化が性に合わないということもありますよね。それで、反抗的になりいわゆる、「ワル」の仲間に入る道もあるけど。しかし。あれも、カッコ悪いなあと思う生徒もいる。「徒党を組んでえらそーなことを。暴走族でも愚連隊でも、お前らひとりでやれんのかい!」と私が、不良文化に親しめないのも、そういうことです。
趣味というのはお金と時間がかかるということですね。
パチンコだってお金と時間は無駄にかかりますけど。
万年中年さんはいろんな分野に造詣が深いのは年収が高いからでしょうか。
子供食堂を取材したある雑誌記者の話だと、子供食堂に来る親や子供たちは、お金がないからではなく、今日はお母さんが忙しかったからとか、みんなとおしゃべりしたいとかいったことで来る人が多いそうです。
つまりは居場所なんですね。
学習支援しようとしても、やっぱり本人が勉強しようという気を起こさないと。
『その問題、経済学で解決できます。』に、シカゴの貧困地区の学校の生徒に、成績が上がればお金をあげるということをしたら、成績がアップしたそうです。
アメは有効なようです。
親の収入と学歴は比例するし、子供の収入、学歴とも比例しますが、それは遺伝のせいか、環境のせいか。
東京で60歳の男性が生まれてすぐに病院で取り違えられたという事件がありました。
兄と弟たちが仲が悪く、弟たちが兄は実の兄弟ではないのではと思ってDNA鑑定をして、取り違えが分かったそうです。
この事件、遺伝と環境、どちらの影響が大きいかということを考えさせられました。
ふつうはパチンコに代表されるギャンブルに手を染め、周囲に金借りまくり。サラ金から闇金へと手を広げ、まっさかさまに堕ちてディザイアー。。。
そんなお父さんを持ったこどもなら、ぐれても仕方ない。或いは、犯罪を犯しても仕方ない、、、か?
まあ私が観察するに、その人たちにとってもパチンコ屋は居場所でもありますね。パチトモらとサムがどうたらマリンちゃんがこうたらと愉しげに語らって生活破たんしなきゃそれはそれでいいと思いましたが。
大晦日の紅白で大胆なドレスを着てた有村架純ちゃんが演じてた『ビリギャル』。あれは誇大広告で実は中高一貫校のビリだとか、受けた慶應はSFC入試で英語と小論文だけだから入りやすい云々とか。ともかく、じつはご家庭が崩壊寸前だったからビリになったとかで、お母さんもじつにまともな受け答えをされる非・底辺家庭、いや愛情あふれるお母さんに立派に育ててもらってたんだなあと思います。
http://urx2.nu/HSSt
ギャンブル依存の人はいい子が多いんだそうです。
感情を抑圧して生きてきた。
パチンコやスロットの台の前に座るとほっとする。
居場所なわけです。
私にとっては映画館の座席ですね。
シアワセ~と思いますから。
自分の小遣いの範囲内でギャンブルを楽しむのはいいですが、コントロールできないと悲惨です。
ホープヒルが出しているは家族の手記を読むと、もう半端じゃありません。
http://www.npo-hopehill.com/_m/book/
『ビリギャル』について書いていますが、あれは見ててウソだなと思いました。
http://qq2q.biz/HUZu
あちゃー、なんぎですなあ。
親としては、子供のために一生懸命にしているつもりなんですけどね。
どこかで食い違ってしまってる。
いっぽう、人間に魂があって、死後ほかの人に生まれ変わり、それが永遠に続いていくといった輪廻転生説。誰もが見聞きしている前者の考えをもとに、後者の考え方が推論されるというだけなんじゃないでしょうか。
まあスピリチュアルを信じておられるかたにとって身も蓋も無い言い方ですが。