三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

税金の大切さ

2014年07月01日 | 

神野直彦『税金 常識のウソ』と志賀櫻『タックス・ヘイブン』を読み、納税が国民の義務だということに納得しました。
神野直彦氏によると、租税はマンションの管理費のようなものである。
管理費を払って共用スペースを共同管理するし、一階に住む者もエレベーターの管理費を負担する。

管理費を負担することが、嫌われるとは限りません。むしろ管理費の高いマンションのほうが住環境は良いので、好まれる場合が多いはずです。租税も同じことです。租税が低いにもかかわらず、教育が行き届き、インフラも整備されているなどという国家は存在しようがないのです。


租税負担が高いと、格差や貧困が抑えられ、経済成長すら可能になる。
志賀櫻氏も強い経済の背景には必ず分厚い中間所得層の存在があると言っていて、まとめるとこうなります。

中間所得層が働いて正当な報酬を得る
 ↓
勤労意欲が湧き、消費も増える
 ↓
経済は成長する
 ↓
報酬はさらに増える
 ↓
消費はますます増える
 ↓
経済はますます成長する

こういった好循環がかつての日本の高度成長期だったわけです。

日本の租税負担率は国際的にみても著しく低いそうで、日本やアメリカのように租税負担が低いと、格差が広がり、貧困率も高くなる。
発展途上国のように一握りの支配階級が富を独占して、貧富の格差が激しく、二極分化した社会には、強い経済は望めない。
日本もそういう二極分化社会になりつつあると、志賀櫻氏は言う。
浜矩子『「アベノミクス」の真相』にもこうある。

一つの経済社会において、いかに豊かな富が蓄積されていても、それが一握りの人々の手中に全て収まってしまっていたのでは、その富が充分な幸せと豊かさを生んでいるとは言えないだろう。


高額所得者や大企業は税金を払わずにすますことができるが、中間所得層や貧困層はできない。

志賀櫻氏

高額所得者が税金対策を講じて、課税を免れている。そのしわ寄せはどこに来るであろうか。中間所得層である。もっとひどい状態になれば低所得層にも税負担増と福祉の減退というしわ寄せがくる。富裕層の税金が逃げたあとで割を食うのは、まじめに税金を払っている中間所得層と低所得層である。

神野直彦氏

企業の経営者はよく、日本の法人税の負担が高いので、負担を軽減しないのであれば日本を出ていくと主張しています。その一方で日本では、企業経営者は愛国心教育が必要だと熱心に訴えます。国家を支える租税は支払いたくないけれども、経済活動を営むには国家が必要なので、愛国心を高めなければならないという主張だと思います。


本来納付すべき税金と、実際に納付されている税金との差額を「タックス・ギャップ」という。
志賀櫻氏によると、アメリカの内国歳入庁は、2001年のタックス・ギャップを3450億ドルと推計し、このうち2900億ドルが徴収できていない。
日本の課税当局はタックス・ギャップの額を推計しようとさえしていない。
節税と租税回避、租税回避と脱税の境界はあいまいで、明解に区分できないそうだ。
トヨタが5年間法人税を払っていなかったのは節税か租税回避かどちらでしょう。

志賀櫻氏

政府が何もしなければ、富める者はますます富むし、貧しい者はますます貧しくなっていくからである。こうして、かつて日本経済の屋台骨を支えていた中間所得層は切り崩され、やせ細り、ひいてはそれが経済力を低下させていくことになるのである。

真面目にこつこつ働いている人が報われる社会であってほしいと思う。

租税は御上への貢ぎ物ではない。

租税はお互いに負担し合うもの。

神野直彦氏

租税は少なくとも国民を苦しめる「悪」とはいえないように思えます。

 海外に財産を移したり、海外で生活していることにして税金逃れをしているのに、ご立派なことを言っている人が「悪」だと思う。

租税は良き市民が支払う文明の対価だ。 ジェフリー・サックス
コメント (3)
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