神野直彦『税金 常識のウソ』と志賀櫻『タックス・ヘイブン』を読み、納税が国民の義務だということに納得しました。
神野直彦氏によると、租税はマンションの管理費のようなものである。
管理費を払って共用スペースを共同管理するし、一階に住む者もエレベーターの管理費を負担する。
租税負担が高いと、格差や貧困が抑えられ、経済成長すら可能になる。
志賀櫻氏も強い経済の背景には必ず分厚い中間所得層の存在があると言っていて、まとめるとこうなります。
中間所得層が働いて正当な報酬を得る
↓
勤労意欲が湧き、消費も増える
↓
経済は成長する
↓
報酬はさらに増える
↓
消費はますます増える
↓
経済はますます成長する
こういった好循環がかつての日本の高度成長期だったわけです。
日本の租税負担率は国際的にみても著しく低いそうで、日本やアメリカのように租税負担が低いと、格差が広がり、貧困率も高くなる。
発展途上国のように一握りの支配階級が富を独占して、貧富の格差が激しく、二極分化した社会には、強い経済は望めない。
日本もそういう二極分化社会になりつつあると、志賀櫻氏は言う。
浜矩子『「アベノミクス」の真相』にもこうある。
高額所得者や大企業は税金を払わずにすますことができるが、中間所得層や貧困層はできない。
志賀櫻氏
神野直彦氏
本来納付すべき税金と、実際に納付されている税金との差額を「タックス・ギャップ」という。
志賀櫻氏によると、アメリカの内国歳入庁は、2001年のタックス・ギャップを3450億ドルと推計し、このうち2900億ドルが徴収できていない。
日本の課税当局はタックス・ギャップの額を推計しようとさえしていない。
節税と租税回避、租税回避と脱税の境界はあいまいで、明解に区分できないそうだ。
トヨタが5年間法人税を払っていなかったのは節税か租税回避かどちらでしょう。
志賀櫻氏
真面目にこつこつ働いている人が報われる社会であってほしいと思う。
租税は御上への貢ぎ物ではない。
租税はお互いに負担し合うもの。
神野直彦氏
海外に財産を移したり、海外で生活していることにして税金逃れをしているのに、ご立派なことを言っている人が「悪」だと思う。