三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

『現代アメリカの陰謀論』と『現代オカルトの根源』2

2014年01月16日 | 陰謀論

次に、大田俊寛『現代オカルトの根源─霊性進化論の光と闇』で論じられている「霊性進化論」について説明しましょう。

 1 霊性進化論とは何か?
以前、ブライアン・L. ワイス『前世療法』を読んだ時には、宗教はいらなくなるのではないかと思いました。
患者に退行催眠を施したら前世の記憶を甦らせたことから、人は生まれ変わりをくり返しながら霊的に成長する、霊性の成長のために生まれる際に課題を持って生まれてくると、『前世療法』に説かれています

この「生まれ変わり成長論」とでも言うべきニューエイジ・スピリチュアルの中心思想を、大田俊寛氏は「霊性進化論」と名づけている。

人間の存在を、霊性の進化と退化という二元論によって捉えようとするこの図式を、本書では「霊性進化論」と称することにしよう。


人間の生の目的は、輪廻転生を繰り返しながらさまざまな経験を積み、霊性のレベルを進化・向上させてゆくことであり、ついには神的存在にまで到達することができるという考えが霊性進化論である。
霊性進化論では、人間の歴史は霊性を進化させる歩みとして理解されるが、しかしその道を転落し、「獣人」へと退化・堕落してしまう霊魂も存在するという、神か動物かの極端な二元論を説く。

この霊性進化論の影響はオウム真理教などの新宗教やオカルティズム、SFや『美少女戦士セーラームーン』とかのアニメといった領域にまで及んでいるわけです。

 2 霊性進化論の流れ
『現代オカルトの根源』には、「霊性進化論」の起源と変遷がたどられている。

① 神智学
霊性進化論で主張されていることはありふれているので、古今東西のさまざまな宗教にいくらでも見つけることができると思うのだが、大田俊寛氏はそうではないと言う。

なぜならそこには、「進化」という近代特有の概念が、明確に刻み込まれているからである。(略)
霊性進化論は、ダーウィンの『種の起源』が発表されて以降の世界、すなわち、19世紀後半の欧米社会で誕生した。


霊性進化論の源流を形成したのは、ブラヴァツキー夫人(1831~1891)が創始した「神智学」という宗教思想運動である。
レイチェル・ストーム『ニューエイジの歴史と現在』によると、霊媒師だったブラヴァツキー夫人が神智学協会を創設する。
ロンドンの心霊科学協会は夫人を詐欺師と認定したが、ネルーやガンジー、イェーツ、カンディンスキーといった著名人も協会に加わっていた。

大田俊寛氏は神智学の教説を次のようにまとめている。

西洋オカルティズムの世界観を基礎に置きつつ、秘密結社・心霊主義・進化論・アーリアン学説・輪廻転生論といった雑多な要素を、その上に折衷的に積み重ねていったものと捉えることができる。


霊性進化論の中心的要素。

(1)霊性進化――人間は、肉体の他に「霊体」を持つ。人間の本質は霊体にあり、その性質を高度なものに進化させてゆくことが、人間の生の目的である。
(2)輪廻転生――人間は、霊性を進化させるために、地上界への転生を繰り返す。地上での行いは「カルマ」として蓄積され、死後のあり方を決定する。
(3)誇大的歴史観――霊体は永遠不滅の存在であるため、個人の歴史は、天体・人種・文明等の歴史全体とも相関性を持つ。これらの集合的存在もまた、人間と同様に固有の霊性を有し、円環的な盛衰を繰り返しながら進化を続けている。
(4)人間神化/動物化――人間は霊的な成長を遂げた結果として、神のような存在に進化しうる。しかし、霊の成長を目指さず、物質的快楽に耽る者は、動物的存在に退化してしまう。
(5)秘密結社の支配――人類の進化全体は、「大師」「大霊」「天使」等と呼ばれる高位の霊格によって管理・統括されており、こうした高級霊たちは、秘された場所で結社を形成している。他方、その働きを妨害しようともくろむ悪しき低級霊たちが存在し、彼らもまた秘密の団体を結成している。
(6)霊的階層化――個々の人間・文明・人種は、霊格の高さに応じて階層化されている。従来の諸宗教において「神」や「天使」と呼ばれてきた存在の正体は高級霊であり、それとは反対に、「悪魔」や「動物霊」と呼ばれてきた存在の正体は低級霊である。
(7)霊的交信――高級霊たちは、宇宙の構造や人類の運命など、あらゆる事柄に関する真実を知悉しており、必要に応じて、霊媒となる人間にメッセージを届ける。
(8)秘教的伝統・メタ宗教――霊性進化に関する真理は、諸宗教の伝統のなかに断片的な形で受け継がれている。ゆえに、それらを総合的に再解釈し、隠された真理を探り当てる必要がある。

2番目の「カルマ」によって次の生のあり方が決まるということだが、霊性進化論には、生まれ育つ環境や自分の能力などを自分で選ぶ(障害者という経験をするために障害を持って生まれるなど)という説もある。

② アメリカ
大田俊寛氏によると、アメリカでは霊性進化論は「ポップなオカルティズム」として多くの人々に受容され、1960年代に盛んになったニューエイジの大きな要素を占めた。
ニューエイジは神智学とほとんど変化していないが、新奇性やエキゾティシズムを感じさせるさまざまな装いが施されているそうだ。

③ 日本
日本で「精神世界」の流行や「第三次宗教ブーム」があったのは1970~80年代以降。

日本における霊性進化論の展開
 ・ヨーガや密教の修行を中心とする流れ
クンダリニー・ヨーガの修行による超能力の開発が重視される。
神智学系ヨーガの流れ 三浦関造、本山博、桐山靖雄
代表する新宗教の団体 オウム真理教

 ・スピリチュアリズムを中心とする流れ
高位の霊格との交信が重視される。
スピリチュアルの流れ 浅野和三郎、高橋信次
代表する新宗教の団体 幸福の科学

スピマやオウム真理教、幸福の科学、あるいはサイババや江原啓之といった人も霊性進化論の流れの中にあるわけです。

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