三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

『現代アメリカの陰謀論』と『現代オカルトの根源』1

2014年01月13日 | 陰謀論

マイケル・バーカン『現代アメリカの陰謀論―黙示録・秘密結社・ユダヤ人・異星人(読みにくいのでオススメはしない)を読み、陰謀論とキリスト教右翼、UFOにつながりがあること、そして、人類を支配しようとしている爬虫類型宇宙人にアメリカ政府が支配されていると信じている人たちがいると知って驚いた。

そしたら、神智学からオウム真理教・幸福の科学への流れについて書かれている大田俊寛『現代オカルトの根源──霊性進化論の光と闇でも宇宙人陰謀論に言及している。
この世界は奥が深いと感心しました。

どのようにご紹介しようかと悩みましたが、まずは陰謀論から。
町山智浩『教科書に載っていないUSA語録』によると、アメリカ国民の3割がオバマ大統領は外国生まれだと考えているそうだ。
オバマ大統領はアメリカで生まれていない、だから大統領になれない、と信じる人々をバーサーズと呼ぶ。

バーサーズの主張は何か?

オバマは外国のスパイで、真の目的は内部からアメリカを滅ぼすことだ。

つまり、アメリカにはこんな陰謀論を信じている人が3分の1もいるわけです。

マイケル・バーカン『現代アメリカの陰謀論』によると、陰謀論者たちは世の中全般が事実とみなしているものが虚構であり、虚構とみなされているものが実際には真実であると言い張る。

たとえば、フランス革命やロシア革命、あるいはケネディの暗殺、エイズの猖獗、世界貿易センターへの攻撃などについて、多くの人は本当の真実を知らない、と陰謀論者は主張する。

陰謀信仰の核心は、悪を明確に解説することにある。

世界征服を企む悪の勢力とされるのは、フリーメーソンなどの秘密結社やユダヤ人が牛耳る金融資本など。
モルデカイ・モーゼ『日本人に謝りたい―あるユダヤ人の懴悔』によると、共産主義はユダヤマルクスに注文して作らせたものなんだそうな。

陰謀論は、集団そのものと集団の活動が秘密か公開かによって分けられる。
集団も活動も秘密にされているのがユダヤ人の陰謀である。
集団は公知だが活動は機密というのは、フリーメーソンやCIAなど。
ちなみに、集団は秘密だが活動は公知なのが匿名の寄付だそうだ。

マイケル・バーカンによれば、ほぼすべての陰謀論は以下の三つの原則に分類される。

●何事にも偶然はない……陰謀とは、世界が偶然の符合などの排除された意図的なものを基盤とするとみなすことを意味している。あらゆる出来事は意図的に発生する。これが最も極端にまで走ると、実世界よりはるかに首尾一貫した幻想世界という結末に至る。

 

●何事も表面とは異なる……陰謀を画策する者たちは、正体や活動を隠蔽するため、表面上は欺瞞的となる。したがって外見が清廉潔白に見えるからといって、その個人なり集団が無害という保証にはならない。

 

●何事も結託している……陰謀論者たちの世界に偶然のはいり込む余地はない。そのため、表面的な見方ではわからなくても、あらゆるものにある決まったパターンが存在すると信じる。したがって陰謀論者たちは、隠された結合を描き出すために常に連鎖や相関を打ち立てなければならない。


秘密にされているにもかかわらず、どうして陰謀論者だけが真実を知っているのか。

1,どうして多くの人は真実を知らないのか?

陰謀がきわめて強力なため、情報伝達のほぼすべての経路――大学やメディアなど――を支配している。そのうえ陰謀は、活動の隠蔽に全精力を注ぎ込むため、真相を暴露しようとする人たちを誤解させるための知識の生産や普及に支配力を発揮する。

多くの人々は洗脳されて、支配者の意のままに操られていると陰謀論者は考える。

たとえば、マイクロチップの体内埋め込みによって精神を支配され、政府の奴隷にされていると信じている人たちがいるそうで、この人たちはコンピュータが作り出した仮想現実だったという『マトリックス』を真実だと思ってるんでしょうね。

2,どうして陰謀論者は洗脳からまぬがれているのか?

信奉者たちは、マスメディアなどの情報源が信用できないと退けることにより、大多数を欺くのに用いられるマインド・コントロールや洗脳を回避している。


3,どうして陰謀論者は他の人が知らない真実を察知しているのか?

陰謀者たちの支配の許から滑り落ちたと称する、それゆえ内幕の真相が暴露されている本物の証拠を握っているのだと言い張る。

政府の機密文書や「シオンの長老たちの議定書」などがその証拠とされる。

だけど、そんなに悪の勢力が強力で、アメリカ大統領も彼らの手先だとしたら、とっくの昔に世界は彼らの手に落ちていると普通なら思う。
しかし、陰謀論者はそんな常識に耳を傾けはしない。

陰謀論者はどうしてそんなに自信たっぷりなのか、『情報時代のオウム真理教』はこのように説明する。

自己にとって認めがたい社会の諸々を「誤り」とみなし、その原因を邪悪な何者かの陰謀に帰することによって、自己の正しさを損なうことなしに現実を「理解」するのである。

「自己にとって認めがたい社会」というのがポイント。
バーサーズの場合だと、町山智浩氏によれば「バーサーズは黒人の大統領を受け入れられない白人たちの拒絶反応が歪んだ形で表出したもの」である。


もう一つ、

陰謀論を主張する人々の心理には、正しいものが脅かされている危機感と切迫感、自分だけは真実を見抜いているという「衆愚」に対する優越感と孤立感、およびそれに伴う使命感が観察される。(『情報時代のオウム真理教』)

使命感もさることながら、自分だけが真実を知っている、それにひきかえ他の奴らは、という優越感は快感だと思う。
報われない毎日、つまらない日々という受け入れがたい現実を、陰謀論によって世界を整然とした意味のあるものにすることができるのだから。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする