三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

ワンデーポート編『ギャンブル依存との向きあい方』2

2013年04月30日 | 

『ギャンブル依存との向きあい方』で特に問題にしているのが、本人が発達障害と知的障害の場合である。
発達障害が問題なのにギャンブル依存症と診断してしまうことがあるそうだ。
「一見、依存の問題と見える人が、実際は、知的障害や、自閉的な特性をもっていて生活上の困難を抱えている人もいます」

発達障害や知的障害の人に対してはミーティング偏重思考ではうまくいかない。
というのも、ミーティングは仲間の話を理解し、共感できることが前提だが、知的障害者やアスペルガーの人だと理解や共感が難しい。
「発達障害のある人にはその人の意思を尊重した上で、それぞれのプログラムを組むことにしました」

ダルクでも、2~3年ダルクにいても薬物をとめることができない人がいて、どうしてだろうかということから、発達障害の人は今までのやり方ではうまくいかないことがわかってきたそうだ。

ギャンブルの問題とアルコールや薬物の依存症とはどのように違うのか。

「依存症はコントロール喪失の障害と言われています」
アルコール依存症の人。
「多くは、少しずつコントロールを失います。若いころは飲酒のコントロールができていたのに、酒量が次第に増えていき、30代半ばで、肝臓が悲鳴を上げ医療機関を受診という人が多いようです。通常、コントロールを失うまでに10年くらいかかると言われています」
ギャンブルの問題がある人。
「幼少時から金銭管理に問題がある人が少なくありません。最近は、パチンコをはじめた直後から時間や使う額のコントロールができていなかったという利用者が増えています。「喪失」ではなく、はじめからコントロールができていないのです」

アルコール依存症は酒の種類に関係がなく、日本酒で依存症になった人も、ワインで依存症になった人も差異はない。
しかし、ギャンブルの問題をもつ人の場合、パチンコ、競馬、競艇、ポーカーなどギャンブルの種目により違いがある。

依存症の特徴のひとつは「自分は依存症ではない」と認めない「否認」である。
「否認」にも違いがある。
アルコール依存症の人の否認。
「アルコールはやめたいけど自助グループには行かないで意志を強くもってやめる」というタイプが多いと思います」
ギャンブルの問題をもつ人。
「同様のタイプがいますが、「まったくやめたいと思わない」というように、問題そのものを否認する人が多数います」

否認についても、発達障害タイプの人の場合は用心しないといけない。
「発達障害タイプの人で、対人関係や集団が本当に苦手でミーティングの参加に尻込みしているのに、「否認」だと勘違いされることがあります。ここに依存症の支援でよく使われてきた「底つき」という考え方がくっつくと大変なことが起こります。本来の「底つき」とは、本人が適切な支援につながってから「ああ、あそこが自分の底だった」と自分の過去を振り返って感じることなのですが、ここでいう「底つき」とは、家族が突き放し、本人が痛い目にあって落ちるところまで落ちれば自分の問題に直面して、「否認」が崩れて適切な支援を求めるというような本来は誤った考え方です。「底つき」は今や時代遅れな考え方になっていますが、支援の現場では、いまだにけっこう使われています。このやり方は、とくに発達障害タイプの人には絶対に合いません」

「底つき」が時代遅れな考え方だとは知らなんだ。
「これまでの「依存症」の考え方では、本人の「底つき」の必要性が過度に強調されていたことです。また、「底つき」は、家族が本人を突き放して家から追い出し、すべてを失わせ、どうにもならないところまで追い込み、降参させるようなイメージの誤解がいまだにあります」

「依存症の専門家の中には、病気と言いながら、「本人が底をついて認めないと回復はできない」と言っている方もいます。この考え方は、「ギャンブルをやめるのは本人の意思や自覚の問題」と言っていることと大差はないと思います」

私は、底つきにならないと、自分の力で何とかなると思って助けを求めない、と思っていた。
でも、本人がその気にならないとどうしようもないと、底つきになるまで放っておいたのでは、アルコールや薬物の場合は死んでしまうこともある。
底つきになっていない人にどうすればいいのか、『ギャンブル依存との向き合い方』を読んでもよくわからない。

「ただし、「底つき」は必要ないといっても、家族に尻ぬぐいや肩代わりを繰り返してほしいということではありません。尻ぬぐいや肩代わりをやめることで、何らかの問題が表面化することは必要で、その機会をとらえてこれまでと違った方向に「背中を押す」ことは必要です」

どの程度手を放し、どういうふうに背中を押せばいいのか、これまた難しい問題ではあります。

発達障害や知的障害の人には「子どものころから自己決定や自己主張が苦手で、いつまでたっても自分で決めず、考えもことばにもしない」人がいるので、家族が手出しをしないと生活できないそうだ。

借金の肩代わりをしたほうがいい場合もある。
「発達障害が原因で社会適応ができないため、生きづらくなり、その結果パチンコ等をその逃げ場としている場合」、「家族に肩代わりできるくらいの財産があれば、債務の肩代わりをしてもらって借金問題について決着をつけます」

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする