浅川芳裕『日本は世界5位の農業大国』は、日本の農業や食糧事情について常識とされていることが正しいわけではないと、数字をあげて説明している。
藻谷浩介『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』も、なぜ不景気なのか、データによって常識を覆し、意外な原因を明らかにする。
中国の擡頭で日本の国際経済力が落ちていると思われているが、景気が悪いのは中国の経済発展のためではない。
逆に中国が経済成長すれば、日本の貿易黒字が増える。
日本の貿易は好調だが、内需が不振。
なぜモノが売れないのかというと、15~64歳の生産年齢人口(=消費人口)が減少しているためである。
高齢者(65歳以上)が増えているが、高齢者は病気をしたり、寝たきりになった時のために、ひたすら貯蓄するので、お金を使わない。
バブルになったのは、団塊の世代が住宅を購入するようになり、住宅需要が増えたから。
ところが、景気がいいから住宅が売れていると考えたものだから、住宅の過剰供給になり、住宅バブルが発生した。
バブル崩壊後も小売販売額や個人所得は増えていたが、96年頃から減った。
それは生産年齢人口が96年から減少に転じたためである。
ものが売れなくなったのは景気が悪いからではなく、たんに人口が減ったためというわけである。
なるほど、モノを買ってくれる人が減ったら、売り上げが減るのは当たり前。
そりゃそうです。
団塊の世代が65歳を超えるようになると、高齢者はさらに激増し、生産年齢人口は激減する。
外国からの移民を増やしたぐらいでは生産年齢人口の激減には追いつかない。
中国も出生者数が低下しているので、将来、生産年齢人口が減ることになる。
おそらくインドも。
出生率を上げても、出産可能な女性が少なくなっているので、人口は簡単には増えない。
では、内需を拡大するためにはどうすればいいか。
生産年齢人口が3割減になるなら、10~40代前半の所得を1.4倍増やせばよい。
退職によって浮く人件費を若い世代の人件費に回すことで可能である。
若い人が結婚でき、子どもを3~4人育てることができる給料を払い、福利厚生を充実させるべきである。
しかし、企業は人件費を抑えて会社の利益を上げようとする。
喜ぶのは株主だけで、高齢の株主はいくらもうけてもお金を使わない。
ここが一番の問題だと私も思う。
二番目は、女性の就労者を増やすこと。
専業主婦1200万人のうち、4割が一週間に一時間以上働くだけでいい。
三番目は、外国人が長期間滞在すること。
アメリカでは有効求人倍率は使われていないし、失業率もメインとしては使われないそうだ。
率ではなく、数が問題で、失業率や有効求人倍率ではわからない。
カロリーベースの食糧自給率を使っているのは日本だけだし、国やマスコミは現実をきちんと分析せずに危機感を煽っているだけのように感じる。
藻谷浩介氏は今までに3000回も講演し、『デフレの正体』は50万部も売れている。
国の政策や企業の経営にどういう影響を与えているのだろうか。