三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

浅川芳裕『日本は世界5位の農業大国』1

2011年11月17日 | 

日本の農業の将来は真っ暗だと思っていた。
「高齢化が進み後継者がいない」
「耕作放棄地の増加」
「生産量が減っているから輸入せざるを得ない」
「日本は世界最大の食糧輸入国」
「海外に食料の大半を依存している」etc
ところが、浅川芳裕『日本は世界5位の農業大国』を読むと、まるっきり大反対。

日本の農家の所得は世界6位。
日本の農業生産額は約8兆円(826億ドル)で、世界5位。(1位中国、2位アメリカ、3位インド、4位ブラジル)
2007年の農産物輸入額は、アメリカ747億ドル、ドイツ703億ドル、イギリス535億ドル、日本460億ドル、フランス445億ドル。
国民1人当たりの輸入額は、イギリス880ドル、ドイツ851ドル、フランス722ドル、日本360ドル。
国民1人当たりの輸入量は、ドイツ660kg、イギリス555kg、フランス548kg、日本427kg。
フランスは農業国だと思ってたが、フランスの農業生産額は6位549億ドルだし、農産物の輸入も日本より多い。(円高の影響はどうなのかとは思うが)


自給率は40%しかないと言われるが、これは数字のトリック。
「農水省が意図的に自給率を低く見せて、国民に食に対する危機感を抱かせようとしている」
なぜか。
「端的にいうと、窮乏する農家、飢える国民のイメージを演出し続けなければならないほど、農水省の果たすべき仕事がなくなっているからだ」

自給率の指標はカロリーベースと生産額ベースがある。
カロリーベースの自給率は、実際に摂取するカロリーではなく、供給カロリーで計算される。
分母である供給カロリーの数値が大きくなるほど、国産の比率=自給率は小さくなる。
しかし、供給カロリーの4分の1は大量に廃棄処分されたり、食べ残されたりする1900万トンの食べ物である。
実際の摂取カロリーで自給率を計算すると、摂取1904カロリーに対し、国産は1029カロリーで、自給率は54%となる。

また、国産供給カロリーには、全国に200万戸以上ある、農産物をほとんど販売せず、自家消費したり、親戚、知人におすそ分けする農家が生産するコメや野菜は含まれないし、家庭菜園の農産物もカウントされない。
畑で廃棄される農産物は2~3割あるが、これも含まれない。
これらも生産量に加えれば60%を超える。

また、牛肉、豚肉、鶏卵、牛乳の場合、国産のエサを食べた家畜だけが自給率の対象となり、海外から輸入したエサを食べている家畜は除外される。
そのため、畜産物の実際のカロリーベース自給率は68%だが、農水省の計算では17%。

野菜の重量計算の自給率は80%超。
一方、生産額ベース自給率は、2007年で66%、先進国の中で3位である。
1位アメリカ、2位フランスは、自給率が100%を超えているが、その理由は輸出額が輸入額を上回っているからである。

「ほとんどの国民が、「自給率が上がる=国内生産量が増える」ものだと解釈しているのではないか」
はい、そのとおりです。
「自給率を上げようと思えば、分母に占める割合の大きい輸入が減れば済む」
「発展途上国は軒並み自給率が高いが、それは海外から食料を買うお金がないからだ」
なるほど。

「食糧自給率の数字は、実は極めていい加減なものなのだ。そもそもスーパーに並ぶ農産物の大半は国産だし、棚には一年を通して十分すぎるほどの量が陳列され、品質についても大きな不満は聞こえてこない。それどころか、現実は生産過剰だ。コメの減反政策は40年以上続けられ、畑での野菜廃棄の光景も日常化している」
「日本は先進国で唯一、独自の国内市場ニーズに合った野菜や果物、畜産品を開発、生産している。その結果、外需に頼らず、高い国産プレミアによって、高い生産額ベース自給率を維持しているのだ」

ふーむ、そうだったのか。
食糧問題は治安悪化と同じように、体感食糧自給が悪化しているにすぎないらしい。
政治はあの手この手で国民に不安感を抱かせ、マスコミはデータをきちんと検証せずに不安感を垂れ流し、そうして自分たちの都合のいいように世論を誘導している点も、治安と食糧問題は似ている

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