三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

身を削り 人に尽くさん すりこぎの

2011年10月08日 | 青草民人のコラム

青草民人さんのコラムです。

 身を削り 人に尽くさん すりこぎの
  その味知れる 人ぞ尊し

これは、母から聞いた福井県の曹洞宗永平寺にある、大きなすりこぎを詠んだ歌です。

今年の夏休みは、家族で両親のふるさとである福井県に出かけました。何十年かぶりに東尋坊や永平寺を訪れました。今回は、母も連れて、亡き父を偲びつつ、両親の実家の墓参りなども済ませることができました。

福井県といえば、北陸の真宗王国です。親戚のお内仏は、お寺のような立派さ。家の大きさよりもお内仏の大きさを競うほど信心深い土地柄です。
残念ながら時間の都合で、吉崎御坊には行けませんでしたが、福井別院の大きさに驚きました。自らの血の中にも真宗魂が息づいていることを改めて実感しました。

さて、先ほどの短歌に話を戻しましょう。
永平寺はご存知のように、親鸞聖人と同じ鎌倉時代に生きられた道元禅師が開かれた曹洞宗の坐禅道場です。厳しい修行を通して、ひたすら自らと向き合う神聖な場所です。
仏教の教義は異なりますが、道を求めるその姿に清心さを感じました。

そしてさらに、仏教は、私のようなこうした厳しい修行に耐えられない凡夫の身の置き所まで考えられた、すそ野の広い教えであることもありがたく思うとともに、若い雲水の修行が、満行されますようにと願いました。

大きなすりこぎが、厨房の前に下がっています。すりこぎは、自分の身を削り、やがて役目を終わっていきます。毎日ごりごりと、永平寺ゆかりの胡麻豆腐の胡麻などをすりながら。
多くの雲水がその味に、食のありがたさ、尊さを感じ、すりこぎが身を削った分、我が身を支えていることへの感謝の心を味わうのでしょう。

真宗の教えにも、
 如来大悲の恩徳は
  身を粉にして報ずべし
 師主知識の恩徳も
  骨を砕きても謝すべし
とあり、このすりこぎの捨て身の恩徳に報いる覚悟が示されているように思います。

食育の大切さがさけばれている昨今、すりこぎの歌が、山深い越前の古刹の景色とともに、深く胸に刻まれたひとときでした。

コメント (9)
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