三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

社会守るため「極刑やむなし」…オウム弁護人、保護司らも

2009年06月09日 | 死刑

闇サイト殺人「極刑を」32万人署名…連載「死刑」第4部
大きな青い仕分け用の箱から、封書の山があふれていた。2007年10月1日、名古屋市千種区にある千種郵便局。「愛知・闇サイト殺人事件」で一人娘を失った磯谷富美子さん(57)は、この日届いた約3万5000人分の署名を受け取った。逮捕された男3人の死刑を求める署名だった。
読売新聞6月6日

読売新聞のこの記事に、弁護士も死刑を求めて署名したことが書かれている。
◆社会守るため「極刑やむなし」…オウム弁護人、保護司らも◆
〈当方は死刑を求刑された地下鉄サリン事件の実行犯の弁護をしております。しかし、今回の凶行は悪質極まりなく、社会防衛の観点からも遺族の応報感情の点からも、死刑はやむを得ないと思います〉
 第2東京弁護士会に所属する田瀬英敏弁護士(52)は2007年10月、「愛知・闇サイト殺人事件」で娘の利恵さん(当時31歳)を殺害された磯谷富美子さん(57)に手紙を書いた。都内の事務所で偶然、磯谷さんのホームページを目にして、残虐な犯行に憤りを覚えた。職員全員で署名をし、手紙とともに投函した。
 オウム真理教元幹部の広瀬健一被告(44)(1、2審死刑、上告中)を2審から担当している。弁護士会を通じて、打診が来た。当時、弁護士になって4年目。初めての死刑事件だった。5000人を超える死傷者を出した地下鉄サリン事件の結果はあまりにも重大だが、「一貫して罪を悔いる姿勢を示す広瀬被告には死刑は重すぎる」と感じ、弁護を引き受けた。
 「再び社会と折り合える可能性がある加害者の場合、死刑を科すことは慎重であるべきだ。一方、闇サイト事件で死刑判決が下されなければ、女性が夜道を歩くことが命がけになってしまう」。田瀬弁護士は署名した理由をそう説明する。

弁護士にもいろんな人がいるんだなと思った。
署名が証拠採用されないだろうことは弁護士なんだから知っているはずで、それでもなおかつ職員全員で署名したのは、裁判官に「世論」の圧力を加えようとしたからだろう。
まあ、そもそも読売新聞のこの記事自体が、脅して不安にさせるというインチキ宗教の常套手段を使って、死刑犯罪抑止論という賞味期限の切れたおまじないを売りつけようとしているわけだが。

それにしても、田瀬弁護士は本気で「闇サイト事件で死刑判決が下されなければ、女性が夜道を歩くことが命がけになってしまう」と思っているのだろうか。
闇サイト事件の被告の一人は無期懲役だった。
判決以来、夜道を命がけで歩いている女性がいるとは思えない。

ひったくりを高校生で捕まえたという出来事が岡山と広島であった。
「3日前、岡山市で高校生がひったくりをした警察官を取り押さえましたが、6日夜、広島市でも女性のかばんをひったくりけがをさせた男を高校生が追いかけて取り押さえ、男は強盗傷害の疑いで逮捕されました」

コンビニの店員が万引き犯を追いかけて刺されて死んだという事件があり、加害者は一審では無期懲役の判決だった。
こういう事件があり、死刑判決ではなかったにもかかわらず、高校生たちはひったくり犯をつかまえたのである。
岡山の高校生は「怖くはなかった」と言っており、命がけでひったくり犯を捕まえたわけではない。

それと、田瀬弁護士は広瀬被告が「一貫して罪を悔いる姿勢を示す」から弁護を引き受けたそうだが、反省していないと思われる被告、たとえば菅家利和氏や林真須美死刑囚のように否認してたら弁護を断るのだろうか。
あるいは、「再び社会と折り合える可能性」のあるなしを誰が決めるのか。
教育刑の理念を田瀬弁護士はどのように考えているのかと思う。

愛知県に住む知人がこういうことを言っていた。
「先日、磯谷富美子さんの日常を追ったニュース番組を見ました。それで気づいたのは、磯谷さんを取り巻く人びとがマスコミを含めて、皆、被告に極刑を求める人たちばかりなんですね。つまり、磯谷さんからしたら周りにはイエスマンしかいない。磯谷さんの憎悪を増幅させる人ばかりで、憎悪を鎮める人がいない。そうした状況が極刑を求める32万筆もの署名運動の原動力になったのでしょうが、それがはたして磯谷さんにとって幸せなことだったのかどうか。周りの人たちは善意と正義感で支援しておられるのでしょうが、逆に磯谷さんの人生を貧しいものに堕としているように見えました」
弁護士や保護司といった人は憎悪を鎮める役のはずなのに、わざわざ憎悪を煽り立て、おまけに読者の不安感をかき立ててどうするんかいなと思う。

コメント (3)
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