三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

高岩仁『戦争案内 アジアからの報告』

2008年03月07日 | 戦争

改革とか言われると、誰かが儲けているのではと勘ぐりたくなる今日この頃、高岩仁『戦争案内 アジアからの報告』を読み、戦争だって儲ける人がいるからこそ行われるんだなと、おそまきながらわかった。

高岩仁氏はフリーの記録映画カメラマン。
『教えられなかった戦争』シリーズ製作のため、アジアを旅した。
戦争の起こる原因は何なのか、戦争はだれが必要として起こすのか、そのことをフィリピンの歴史学者レナト・コンスタンティーノ氏に教えられる。
「戦争を必要として計画して金で軍人や政治家を操って、莫大な利益を上げてきたのは、財閥・資本家たちですよ」
そこで高岩仁氏は、戦争によって儲かる人がいるから戦争が起こされる、では誰が儲けたのかを調べるのである。

明治以来、戦争をするたびに日本は経済発展を遂げた。
「三井物産の統計を細かく追究しているだけで戦争がなぜ起こったのかが分かりますよ」とある大学教授。
三井物産は日清、日露など、戦争のたびに利益を伸ばしている。

三井物産と軍部との関係の実例が、満州の大豆。
満州の大豆を三井物産がほとんど独占的に買い占めている。
ところが、張作霖が大豆の買い付けに手を出し始め、そのうえ満州鉄道に並行した独自の鉄道を計画し、着工を始めた。
鉄道工事が始まった直後、張作霖は爆殺されてしまう。
その翌年、1929年度から、三井物産の大豆の取扱高は倍近くに跳ね上がっている。
張作霖の息子、張学良が事業を始めようとしたら、1931年に満州事変が起こる。
「商船は軍艦を呼ぶ」の言葉通りである。

では、アジア太平洋戦争を必要としたのは誰か。
1930年代に次々と起きたクーデターやクーデター未遂事件に、企業家が資金を提供していた。

三月事件 徳川義親 50万円
十月事件 藤田勇   63万円
五・一五事件 神武会 9万円
二・二六事件 石原廣一郎 35万円

三井、三菱、日産なども資金提供していた。
つまり、二・二六事件は青年将校と右翼の思想家だけで起こしたものではないということである。

アジア太平洋戦争によって大企業は大きな利権を得た。
たとえば、マレーシアを日本軍が占領すると、イギリス系の企業が独占していた鉱山を三井鉱山、日本鉱山、古河鉱山、石原産業で分け合った。

              1941年     1945年
三井系企業の資本      1億円         3億円
三菱系企業の資本   1億2千万円  2億4千万円
日産系企業の資本   5千万円     4億5千万円
石原産業の資本    150万円     9千300万円

戦後の経済侵略、公害の輸出についても詳述されているが省略。
アメリカだってあくどいことをしている。
日本が敗れたあとのフィリピンで、アメリカ軍は大地主・資本家に近い政治家に政権を作らせ、従わない人を虐殺をする。
そうして、民主勢力の圧殺し、親米独裁政権を樹立している。

とまあ、『戦争案内 アジアからの報告』は少ないページ数ながら、中身は濃い。

戦争で儲ける人がいるのは今も同じことで、小森陽一氏が講演でこういうことを言っている。
「ブッシュ政権は軍事力で中央アジアの資源を押さえようとしています。アフガニスタンからパキスタンを通ってインド洋までの石油と天然ガスのパイプラインを持っていたのが、アメリカ第9位のユノカル社です。ユノカル社の最高経営顧問をやっていたのが、チェイニー副大統領とアフガニスタンの大統領になったカイザル氏です。このカイザル氏がアメリカによって大統領として送り込まれました。石油と天然ガスのパイプラインをアメリカが押さえるための戦争だったということは明らかです。

このユノカル社を中国の企業が買収しようとしたのですが、アメリカ議会では国家安全保障上の脅威としてみなされて、結局はアメリカの企業が買収しました」

マイケル・ムーア『華氏911』は、アフガニスタンやイラクへの攻撃とブッシュ政権の人たちが関係している石油資本の利益がつながっていることを批判している。

こういう例をあげるときりがない。
『イソップ寓話集』から引用。

戦争と傲慢
神々が結婚式を挙げ、各々伴侶が決まった時、戦争の神(ポレモス)は皆に遅れて、残り籤のところに到着した。そしてこれ一人しか残っていなかったので、傲慢の神(ヒュプリス)を娶ったが、伝えによると、この奥方を恋い慕うこと一とおりではなく、この女神の行くところ、どこへでもついて行くのだ。
されば、傲慢が民衆に笑みを振りまきながら、諸国民諸都市を訪れることのないように。その後から、たちまち戦争がやって来るのだから。

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