三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

森達也「もっともっと世界は豊かで美しい」

2007年05月20日 | 日記

本願寺が出している「同朋」という雑誌に、森達也のインタビュー「もっともっと世界は豊かで美しい」が載っていた。
森達也の言葉をいつものように無断引用。

「メディア全般がそうですけど、特にテレビは「わかりやすさ」を追求します。(略)
いろんな現象や事件、人間を単純化し簡略化しようとするんですね。(略)
簡略化とは、いつもものごとを「黒か白か」「善か悪か」などの二元論や二項対立に置き換えてしまう」

「オウムだけじゃない。アルカイダに対しても、北朝鮮に対しても、レッテル貼りのような見方をしてしまう。でも、犯罪行為をする人が、もともと邪悪で凶暴な存在だなどということはないわけでしょう。もっともっと人間は多面的だし、矛盾を抱えた存在です。(略)
信者に対して「ちょっとかわいそうだな」と同情的になる人は必ず一人二人はいるんです。けれどもそういう人たちは、マスコミの報道には決して登場しません」

「一面だけ見れば、人間にはたしかに殺伐としていたり凶暴だったりする面もある。でもそれは一面に過ぎない。一人の人間を理解しようと思ったら、やっぱり一面からじゃなく全部を知りたいと思いますよね」

「人は常に、共同体の中で同一性を確認したいわけですよ。それを確認できるいちばん手っ取り早い方法は異物を見つけることです。その異物をみんなで排斥する。排斥しても、今度はそれに外から攻撃されるかもしれないと怖くなり、仮想的をつくって先制攻撃をはじめる。アメリカなどはその悪循環にずっと前からはまっているですが、日本も同じようになってきた気がしますね」

「いまの社会で起きているのは、人々が被害者に過剰に感情移入して、加害者への制裁や厳罰を声高に要求するような現象です。なぜ過剰に反応するのかというと、加害者を憎みたいからですよ。加害者を憎悪することで、自分たちの一体感を高めたい。そういう傾向がどんどん強くなっている。僕はそれが嫌なんですよ」

「花粉症を思い起こせばいいと思うんですよ。花粉症というのは、過敏になりすぎた免疫細胞がスギ花粉を誤爆しているわけですね。スギ花粉そのものは何ら害はないわけですが、誤爆の副作用で身体が壊れてしまう。皮肉なことに、日本にこれだけ花粉症がはびこった理由は、もちろん戦後の植林政策の誤りもあるんだけど、もうひとつは雑菌が減ったからですよ。敵がいなくなっちゃった免疫細胞が、必死に敵を探しているわけですね」

「過剰なセキュリティが、母体である社会を壊すんです」

コメント (54)
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