OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

妊娠中における母性保護について

2020-08-02 23:21:52 | 産前産後・育児・介護休業

産後4週間までを「パパ産後休業期間」ということで、男性育休の特別期間とする育児介護休業法の改正が検討されるようです。「少子化社会対策大綱~新しい令和の時代にふさわしい少子化対策へ~(2020年5月29日)」にも、配偶者の出産直後の休業促進の枠組みを検討することが書かれています。

厚生労働省が発表した2019年の統計によると、合計特殊出生率は1.36となり、4年連続の低下で2007年以来12年ぶりの低水準になったということです。フランスやスウェーデンでは長期的な取り組みで一時1.5~1.6台になった出生率が2.0前後まで回復したということなので、取組み方次第なのだと希望が湧きます。

以前から気になっているのが、育児休業等については育児介護休業法の改正をかなり行って対策をとってきていると思うのですが、妊娠から出産までの法律はほとんど改正がないことです。仕事で育児介護休業規程を見ることが多いのですが、その前の妊娠・出産については、労働基準法及び男女雇用機会均等法に定められている関係上就業規則に定められていることがほぼ100%です。分断されている点については一連のこととして扱っていかないとわかりにくいと感じています。わかりにくいだけではなく、一連のこととして扱っていかなければ「安心して子を産み育てる」という目標に行く道筋に欠けたところがあるのではないだろうかと最近気が付きました。

そもそも出産前の母性保護については、均等法で保健指導・健康診査を受けるための時間の確保が定められていますが、これは有給が義務付けられてはいませんし、妊娠中の通勤緩和(時差通勤や短時間勤務)は医師等から指導を受けた場合が原則で、こちらについては母健カード(母性健康管理指導事項連絡カード)があるのですが、労使ともに認知度は低いです。

労基法では、産前産後の休業期間の他軽易な業務への転換や変形労働時間制、時間外・休日・深夜労働の禁止などの定めがあります。平成10年に均等法が義務規定を設けたことに合わせて女子保護規定が撤廃され、妊産婦の保護のみ残りましたが妊産婦の保護については30年以上改正されていません。

妊娠中またはその前にいわゆる妊活についても休暇制度を法律改正により設けるなど国で支援する体制があれば、少子化に対しても効果があるのではないかと考えて、今後この辺りについては、沿革も含めて調べてみたいと思います。

いよいよ8月に入り、本来であれば夏休みには毎年旅行を計画してワクワクしているところなのですが、今年は無念のキャンセルで何となく気分的には淡々としています。いつも駅ビルにあるスーパーに食材を買いに行くのですが、週末は比較的時間があるので上の階の無印良品や本屋さんなどのぞいて気分転換をしていました。これが4月から6月初旬までスーパー以外は休業をしていたため、その間に行かないことに慣れてしまい、6月に再開してからもほとんどのぞくことがなくなってしまいました。人間の行動パターンは結構凄いものがありますね。やっと先週、特別定額給付金も入金されたことですし、消費喚起のためにもお買い物したいと思います。


育児休業給付の失業等給付からの分離

2020-07-19 22:03:53 | 産前産後・育児・介護休業

令和2年4月1日施行の改正雇用保険法で育児休業給付は失業等給付から分離されています。もともと失業「等」給付の「等」は雇用継続給付(高年齢雇用継続給付と育児休業給付)が平成7年に施行された際に加わったものであり、今回育児休業給付は雇用継続給付から独立することになりましたので、失業等給付+育児休業給付という位置づけになったことになります。

2019年12月13日付日経電子版によると、厚生労働省は、「出産後も働く女性が増え給付額が増加している育児休業給付を、失業給付と分けて料率算定することを明記した改正案を提出」とありました。「出産をした後も働き続ける女性が増えたことを背景に、育児休業給付は給付額が増え続けている。18年度は17年度比11%増の5312億円だった。一方、失業給付の基本手当は同1%増の5473億円で、19年度には育児休業給付が逆転する見通しだ。政府は男性の育休取得も促しており、雇用保険財政に与える影響はさらに膨らむと想定される。」ということで雇用保険財政の中でバランスが悪くなっていたようです(ただしこの後コロナウイルス感染拡大による雇用保険財政への影響は計り知れず、現状は12月の時点とは様変わりしていると思います。そのうち研究してブログで雇用保険率の弾力条項も含めて取り上げようと思います。)

労働政策審議会の2020年1月8日 第138回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会議事録を簡単にまとめてみると以下のように審議事項の説明がされており、改正条文も同様の内容になっています。
①育児休業給付の新しい給付の体系への位置付けということで、失業等給付の雇用継続給付から削除。

②失業等給付とは別の章(育児休業給付の章)として、独立した章を新設し現行の育児休業給付金に係る規定を削除するとともに、新設する章に同内容を規定する。

③これまでの雇用保険の各給付において設けられている措置、未支給の失業等給付、返還命令等、受給権の保護及び公課の禁止の規定について、育児休業給付金についても準用する。

④国庫負担について、当該育児休業給付に用する費用の8分の1を負担する。

⑤一般保険料徴収額に育児休業給付率(1,000分の4の率を雇用保険率で除して得た率)を乗じて得た額は、これまでと同様育児休業給付に要する費用に充てるものとする。これに伴い保険料率の算定方法を分ける。現在、時限的な引き下げで年収の0.6%になっている保険料のうち0.4%を育児休業給付の料率とし、当面は据え置く。

「雇用情勢など景気に左右されやすい失業給付と、景気の影響を受けにくい育児休業給付を分けることで雇用保険財政を透明化する。将来的には育児休業給付の負担のあり方を見直し、雇用保険財政から切り離すことも視野に入れる。」ということです。さらに、2020年2月9日の日経電子版では「政府は育児休業給付金の支給水準を引き上げる検討に入った。賃金の最大67%の給付率を80%まで引き上げる案が現段階で浮上している。受給中は社会保険料などが免除されるため、育休取得前の手取り月収とほぼ同額を実質受け取れる。男性の育休取得や少子化対策を後押しする狙いだ。ただ、財源負担を巡り慎重な声もあり、議論は難航する可能性もある。・・・3月末までに策定を目指す「少子化社会対策大綱」に、給付率引き上げを盛り込む方向で検討している。」とあります。

少子化社会対策大綱を確認してみましたが給付率の引き上げは盛り込まれておらず、その後労働政策審議会上記部会もコロナ対応に追われており審議は今のところ止まっているようです。しかし、育児休業給付が雇用継続という位置づけではなく育児休業中の生計を保証するものという位置づけになったということは社会の育児休業に対する受け止め方がここ20数年で大きく変わったのだと実感するものになったと思います。

顧問先との打合わせも社労士会の会議も大学院の授業も100%オンラインという状況の中で、人に会いたいなあと思っています。やはりちょっとした雑談や相手の表情などはオンラインではわかりにくいように感じるからだと思います。先日支部の役員会のお知らせに久しぶりにみんなの顔が見たくなり出席の返事をしようとしたところほとんど全出席の登録には驚きました。流石、社労士はやはり人が大好きな人が多いのですね。

ただ、オンライン会議の効率の良さには感激します。1時間の予定の打合せで片道30分で計2時間必要なところ、雑談もなく4、50分で終わると時間的な余裕が生まれて有難いとも思います。今後もオンライン会議は対面での打合わせと上手く組み合わせて利用されることは確実です。この数か月の社会や仕事環境の変わりようは驚くべきものがあり、これからどこに着地点が来るのかあれこれ思うのも楽しくもあります。


育児休業からの復職時期の延長について(4月8日確認分)

2020-04-08 17:48:01 | 産前産後・育児・介護休業

4月5日に掲載したブログで「保育所への復職期間が延長になった場合」についての考え方を記載しましたが、「緊急事態宣言」が出たことによるのか、考え方の統一が図られたためなのか、ハローワークの回答の内容が変化しましたので、4月8日確認分として再度育児休業からの「復職時期の延長について」現段階の取扱いについて記載しておきます。※特に5日のブログの(1)は変更されたとか考えて良いと思いますのでご確認ください。

5日のブログでも書きましたが、コロナウイルスの影響で保育所への登園を遅らせることについての連絡が、市区町村によってはあるようです。その場合の考え方として先週末ハローワークに確認したところ、保育所の入園が認められている以上「市区町村からのご案内により復職時期の延長が可能な場合であっても、1歳(延長の場合は1歳6箇月)を超えて育児休業給付金を支給することはない。(北海道のように緊急事態宣言が出た場合は除く)」という回答でした。

しかしながら、8日現在飯田橋ハローワークに問い合わせたところ、「市区町村(保育所)等より保育所の登園を遅らせることの要請(※強制、自粛、案内含む)があり、その要請により登園日を延期することとなった」場合、疎明書(理由書・申出書)を提出することにより、育児休業の延長が認められる(延長期間について育児休業給付金が支給される)という回答を得ました。

上記のような通知が市区町村から行われた上で、本人が育児休業の延長を希望した場合は、「疎明書」を提出すれば、本来育児休業の延長が認められない(保育所の入園がきまっている)状態であっても育児休業給付金を受給することができる場合があるようです(市区町村及び会社の会社管轄のハローワークにより扱いが異なるようですのでそれぞれに確認いただく必要があります)。

ハローワークによって、疎明書のひな形がある場合とない場合とあるようですが、入手したひな形には以下の記載があります。

この疎明書は、「育児休業の申出に係る子について、保育所等における保育の実施を希望し、申込みを行っているが、その子が1歳に達する日又は1歳6箇月に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合の要件確認資料となる。」とあります。

市区町村(保育所)等より保育園の登園を遅らせることの要請(※強制、自粛、案内含む)があった場合、疎明書により保育の実施が行われない場合(保育所に入所できない場合と同じ状況)に該当することの証明になるということだと思います。

なお、実際に疎明書による申請については、ハローワークごとに必要書類が異なるようですので確認が必要ですが、上記ひな形には①疎明書、②自治体からの要請書等の写し、③保育園の入所決定通知書等の写しを添付とあります。

コロナウイルス関連の助成金やその他特例が毎日のように出て非常に気が抜けない感じです。日々アンテナを張っておきたいと思います。


育児休業からの復職時期の延長について(4月3日確認分)

2020-04-05 23:11:38 | 産前産後・育児・介護休業

東京ではコロナウイルス感染者の数がどんどん増えていき心配な状況です。そのような中で、最近のご質問に「コロナウイルス対応により、保育所の入所予定日後の会社への復職時期について1か月程度の延長を認めるということが通知されることがあるようです。すなわち、4月入所が決まっている場合通常であると2週間から1か月の範囲内(5月末まで)で復職が求められるところ翌月末(6月末)までに復職していれば問題ないという通知が市区町村等から来る場合があるようです。保育所は、以前の表現でいけば「保育に欠ける」場合に入所できるとされていた通り、仕事をしているため入所が認められたわけであり、復職が決められた期間内になされなければ、原則として保育所の入所が取り消されることになります。

今回、5月末までの復職が、6月末まで認められた場合に、その間育児休業給付金が受けられるのかというご質問が来ています。この場合のポイントは、6月末までの休業が「育児休業」であるのか又は単なる「会社の指示した休業」か「本人が希望した休業なのか」という点になります。

※4月3日にハローワークに確認した内容を以下に記しましたが、東京他を対象とした「緊急事態宣言」が出た後の4月8日に再度ハローワークに確認しましたところ、内容が変わっておりましたので、次のブログ(4月8日確認分)も併せてごらんください。

(1)例えば、4月15日に子が1歳到達ということで4月1日に保育所に入所を認められていた場合、4月16日以降も休業するのであればこれは育児休業にはなりません。保育所に入所を認められていたので、それ以外の延長理由に該当しない限りは、1歳6か月までの育児休業の延長はできず育児休業は予定通り終了するからです。この場合、6月末までに復職すればよいということで復職までの期間会社を休む場合はどうなるかということですが、以下の通りと考えます。

①会社が4月中に復職しないことを認めた上で、コロナウイルス対応により自宅待機を指示した場合は指示した期間「休業手当」を会社が支払うことになります。

②会社が4月中に復職しないことを認めた場合で、法律上の育児休業ではなく会社が認める育児休業である場合(例えば2歳までは法律の延長事由に該当しなくても育児休業が取得できる会社等の場合)、法律上の育児休業ではないので育児休業給付金は支給されませんが、保険料の免除は子が3歳までの育児休業に対して認められるため、免除されることになります。

②会社が4月中に復職しないことを認めない場合で、6月まで復職しない場合は「欠勤(控除)」の扱いになります。この状況なので通常とは異なりますが、通常は育児休業期間を満了して復職しないとなると退職事由に該当することもあります。

(2)例えば、7月15日に子が1歳到達ということで4月1日に保育園に入所を認められていた場合でも、育児休業終了日の繰下げは特別の事由がなくても子が1歳到達まで可能です。6月末の復職期限が来ても、でもまだ1歳未満であるため、6月末までの期間は「育児休業期間」となります。この場合は法律で定められた育児休業期間ですので、「育児休業給付金」の支給対象となり、また、6月末までの育児休業期間について保険料が免除されます。

今回の、保育園の入所に関する復職時期の延長は、原則として、育児休業の延長事由には該当しないということなのですが、「市区町村等から、当該保育所への登園の自粛要請があった場合」は、育児休業給付金が支給されることもあるようです。今後緊急事態宣言等があったときは再度調べてみる必要があります。

いよいよ事態を重く受け止めて、スタッフ全員にノートPCを準備しました。明日皆に在宅勤務のルールを定めた規程の説明をしてノートPCを持ち帰ってもらい、事務所も在宅勤務中心の勤務体制になります。顧問先企業もかなり在宅勤務が増えてきたと思います。とにかくできるだけ外に出ず、感染の拡大を鎮静化しなければなりません。顧問先の企業からのご質問も、休業手当から雇用調整助成金へ移行してきており、何とか雇用調整助成金についてもご説明できるようになりました。企業や経済の痛手が浅く済むためにも、ここはできるだけ外に出ず収束に協力したいと考えています。


法定を超えた介護休業に対する介護休業給付金

2017-11-05 20:33:20 | 産前産後・育児・介護休業

介護休業を取得する社員は今のところそれほど多いわけではないと思います。しかし今年1月に育児介護休業法が改正され、介護休業はだいぶ取得しやすくなりましたので、今後かなり取得申請が多くなると見込まれます。

現在育児介護休業法で定めている介護休業期間は、1人の対象家族につき「93日の範囲内で3回の範囲内取得可能」とすることになっています。例えば31日+31日+31日取得することも、40日+20日+33日という取得も可能です。また雇用保険法の介護休業給付金については、法に定める介護休業期間に対して、すなわち支給対象となる同じ家族について93日を限度に3回までに限り支給されることになっています。

育児休業と同様、特に大企業では介護休業を法律で定める93日とせず、例えば365日何回でも取得可能とする場合があります。その場合に気を付けなければならないのは、介護休業給付金はあくまで法で定められた日数と回数しか支給されないということです。5日間の介護休業を3回取得してその都度介護休業給付金を支給申請したとすると、会社の定める介護休業は350日残っているとしても介護休業給付金はすでに3回支給されているためそれ以上は支給されません。ある程度まとまった期間について93日の範囲内で給付申請することにして、細切れにとった介護休業は法を上回る介護休業と位置付ける必要があります。なかなか細かな管理が必要になるということです。

なお、介護休業給付の受給資格は、原則として介護休業を開始した日前2年間に被保険者期間が12か月以上必要となります。ここでいう「被保険者期間」とは、介護休業開始日の前日から1か月ごとに区切った期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日ある月を「被保険者期間」1か月とカウントし、12か月以上必要だということです。

介護休業給付の1支給単位期間ごとの給付額は、「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」により、算出します。賃金の支払いがない場合の支給額は、介護休業開始前6か月間の総支給額により、概ね以下のとおりとされています。
・平均して月額15万円程度の場合、支給額は月額10万円程度
・平均して月額20万円程度の場合、支給額は月額13,4万円程度
・平均して月額30万円程度の場合、支給額は月額20,1万円程度

この連休は気持ちの良いお天気でこれまでの週末雨続きをスカッと吹き飛ばす感じでした。この連休の1日目は家でのんびり。2日目は予定していたBBクラブ幹事とOURSスタッフ有志とその家族と総勢18名でBBQをしました。5年ぶりの開催だったのですが、初回開催から10年近くが経過しその当時小さかった男の子が14歳になりすっかりかっこいい少年になっていたり、普段話に聞いていたスタッフの小さな子供たちに会えて一緒に遊んだり、また気心の知れたメンバーとのんびり過ごしてとても楽しい時間でした。3日目は渋谷区民祭の2日目で朝から参加して久しぶりに骨密度測定やこまごましたお手伝いをしました。やはりどっしり構えている立場よりは、コマゴマ動いているのが好きなのか。自分が支部長時代に始めた区民際の骨密度測定も年6目となり定着しているのがとても嬉しいです。

 BBQは炭に火をつけるのに苦心手伝うと言いながら実は眺めている時間が長い


育児休業規程 誤りやすい箇所

2017-08-27 21:54:34 | 産前産後・育児・介護休業

お盆明けから10月の育児介護休業法の改正対応のご質問が多くあります。早く育児介護休業規程の改正対応部分のひな型を作り顧問先企業にお送りしなければならないのですが、色々と優先順位の高い仕事が入ってきていたので、これまで取り掛かれませんでした。厚生労働省のモデルも先日HPにアップされたようですので、今週はご連絡用のお手紙と規定改定案を作成する予定です。

ところでその前に育児介護休業規程の誤りやすい点というか混同しやすい点を記載しておこうと思います。

これまでずいぶんたくさんの会社さんの育児介護休業規程をチェックさせてもらいましたが、よく誤って規定されているのが、期間雇用者の育児休業の取得要件と、労使協定の適用除外です。ともに勤続1年未満の場合は育児休業が取得できないという点で同じことだと考えられ1本にまとめられてしまっているのだと思いますが、「引き続き雇用された期間が1年以上である者」の規定は期間雇用者の育児休業取得の条件であり、労使協定で適用除外として定めることができる「引き続き雇用された期間が1 年に満たない労働者」については期間雇用者に限らず期間の定めのない正社員も含め全員に適用されるものです。どちらも1年未満では育児休業が取得できないとするものなのですが、対象者が異なります。

(1)期間雇用者の育児休業の取得条件(法第5条)

①当該事業主に引き続き雇用された期間が1 年以上である者
②その養育する子が1 歳6 か月に達する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでない者

(2)労使協定により適用除外とすることができる者(第6条、則第8条、平成12年労告120号)

①当該事業主に引き続き雇用された期間が1 年に満たない労働者
②前号に掲げるもののほか、育児休業をすることができないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの(以下②-1、②-2)

②-1 育児休業申出があった日から起算して1 年(1歳6か月・2歳までの延長にあっては6月)以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
②-2 1 週間の所定労働日数が著しく少ないものとして厚生労働大臣が定める日数(2日)以下の労働者

この(1)と(2)が混在している場合がありますが、それぞれをしっかり規定しておくことが必要です。また上記はあくまで法律で最低限を定めているため、会社ごとに上回る規定を持つことは問題ありません。要するに期間雇用者が1年未満であっても育児休業を取得できるものとする、また勤続1年未満の社員を労使協定で適用除外とは定めないということは問題ないということになります。

今日は年に1回の本試験の日でした。気になってお昼頃解答速報をTACのHPで見たのですが、15時公開とのこと。仕事をしながら待って15時に確認したのですが、やはり一般常識が難しいように思いました。うちの事務所の受験生2人からメールがあり、講師時代のよう報告を見ていたらその苦労を知っているだけに熱いものがこみ上げそうになりました。時間をかけて努力して、落ち込んだり折れそうになった結果「合格」を手に入れることができて初めて人生の大きな宝物になると思います。


最長子が2歳までの育児休業が可能に

2017-07-02 22:02:59 | 産前産後・育児・介護休業

10月から最長子が2歳までの育児休業の取得が可能になります。政省令と指針も発表されましたので内容のほぼすべてが出そろったところです。

改正のポイントは3点です。

①育児休業期間が最長子が2歳まで可能になります。またそれに合わせて育児休業給付気も支給期間が延長されます。

子が2歳までの延長の条件は1歳6か月までの延長と同じ理由(保育所に入所できない・養育を行っている配偶者が養育ができなくなった等)となります。

②育児休業制度等の個別周知の措置

これまでも育児休業・介護休業についての周知については努力義務とされていましたが、今回は特に妊娠・出産又は介護をしていることを知った際には個別に知らせる努力義務となります。

③育児目的休暇の新設

小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が、育児目的で利用できる休暇制度を導入することが努力義務となります。子の育児目的で利用できる休暇とは、配偶者出産休暇や入園式等の行事の参加も可能とするものと示されています。

確かにこれまでの1歳6か月までの育児休業の延長では、保育所に入れないまま育児休業を終了せざるを得ないケースも多々出てきていたと思われ、それが2歳までとなればそういうケースは減ってくるのかなと思います。

特に今回は男性の育児休業の取得の促進も進めたいという意図があるようで、付帯決議には「パパ・クォータ制」という言葉も出てきています。各国の父親の育児休業の取得率を調べたところ、日本の取得率は極端に低く、育児休業の一定期間を割りあてる「パパ・クォータ制」も検討する余地は確かにありそうです。ドイツなどは、日本のパパママ育休プラスと同じような制度である育児休業期間の「ボーナス制度」などをはじめとして10年ほど前に様々な新たな施策を導入し、かなり男性の育児休業取得が進んだそうです。また、ノルウェー、スウェーデン、ドイツの3ヶ国については、1歳から必ず保育に入れて、それ以上の休業が家族に対して保障されているため、休業中は家族で保育をし、休業期間が終わると集団の中で保育をするということが社会に制度化されているようです。やはり女性が離職しないで働き続けるためには、こちらも長時間労働の是正と同様日本は劇的な環境整備が必要なように思います。

10月施行育児・介護休業法関係

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html

今日行われた都議選も都民ファーストの会が圧勝のようですね。いま日本全体が色々な意味で新たな局面を迎えようとしているのでしょうか。急激な変化は混乱を招きかねないと思いますが、現状を維持することだけに力を入れるのではなく、常に新しいものを取り入れて変化していく意識を持つ必要があるということかなと思います。


育児休業2歳まで延長可能に

2017-04-02 22:40:28 | 産前産後・育児・介護休業

改正雇用保険法と関連法が3月31日に可決成立しました。雇用保険料の引き下げ、育児休業期間が条件に該当すれば2歳まで取得できる等の改正ですが、主な内容については以下の概要がわかりやすく取りまとめられていますのでご確認ください。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/193.html

1月施行の改正に引き続く育児介護休業法の改正ですが、今回はそれほど盛沢山の改正内容というわけではありません。ただ付帯決議がついたという点は特徴があると思います。

今回の育児介護休業法の改正の目玉は、これまでも保育所に入所できない場合は原則1年の育児休業を1年半まで延長できることになっています。ただ認可保育所が充足しているわけではないということから、10月から、保育所に入れない場合等に限りさらに6か月の再延長が可能になり最長2年まで育休がとれるようになりました。

また、男性の育休取得率を上げるため、「パパ・ママ育休プラス」の活用促進と、父親に一定期間の育休を割り当てる「パパ・クオータ制」の導入を検討するよう政府に求める付帯決議がつきました。

付帯決議は「待機児童問題の解消と保育サービスの量的質的拡充を最優先に取り組むこと」、また「保育士の処遇が他産業に比して遜色ない水準が実現されるよう具体的な対策を講ずること」とされたほか、以下の通りパパ・クオータ制の導入に向けて検討することとされています。

2 本法の施行後二年を目途として、育児休業制度の対象となる労働者等への事業主からの個別周知の有無を調査すること。また、本法附則の規定に基づく検討においては、男性の育児休業取得率が依然として低いことに鑑み、利用率の低いパパ・ママ育休プラス制度の活用促進に向けた改善措置を講ずるとともに、父親に一定期間の育児休業を割り当てるパパ・クオータ制の導入に向けて検討すること。

パパ・クオータ制とは?(公益財団法人日本女性学習財団HPより)

父親に一定の育児休暇を取得するよう割り当てる制度(Papa Quotaのクオータとは割り当てを意味する)。子どもを養育するための育児休業制度は、男女両方に保障されているが、実際には男性の取得は非常に少ない。このような状況を解消するために考え出されたのが「パパクオータ制」である。1993年、世界に先駆けてこの制度を導入したノルウェーでは、所得補償率100%で42週間の育児休暇が保障されており、その間、男性は最低4週間の休暇を取ることが義務付けられている。もし男性が休暇を取らない場合、その分の休暇は差し引かれる。また男性が女性より多く休暇を取ることも可能である。導入前の男性の取得率は5%程度であったが、現在では80%以上が取得していると報告されている。

今週はいろいろな仕事が一段落したのでとてもほっとしたのかなんとなくふわっと過ごしてしまいました。週末は購入していたPCのセッティングをしたり、BBクラブの幹事会で夏の勉強会の打ち合わせをしたり、大学のOBのための桜祭りと同時に開かれる体育会テニス部の総会に行って帰りに吉祥寺で雑貨を見たりして珍しく仕事はせず過ごしました。これが普通なんだと思いますが新鮮な感じでした。


介護サービス費用の助成措置

2017-01-15 22:46:12 | 産前産後・育児・介護休業

1月1日に施行された改正育児介護休業法の中で、「介護のための所定労働時間の短縮等の措置」の改正があります。

これは選択的措置ということで、①短時間勤務②フレックスタイム③始業終業時刻の繰上げ繰下げ④介護サービス費用の助成の中から事業主がどの制度を導入するか選択することができるようになっています。①~③については、連続する3年以上の期間に原則として2回以上利用することが可能であることになっていますが、介護サービス費用の助成の措置については「2回以上の利用ができることを要しない」とされています(育児介護休業施行規則第74条3項)。

介護サービス費用の助成の正確な言い回しは以下の通りです。

要介護状態にある対象家族を介護する労働者がその就業中に、当該労働者に代わって当該対象家族を介護するサービスを利用する場合、当該労働者が負担すべき費用を助成する制度その他これに準ずる制度を設けること。

そこでこの「介護サービス費用の助成」とはどのようなものをいうのか、また効果的な使い方があるのかという点を調べてみました。通達(「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行に ついて」平成28年8月2日職 発0802第1号、雇児発0802第3号)には以下のように書かれています。

7 介護のための所定労働時間の短縮等の措置(法第23条第3項)

●「介護するサービス」とは、介護サービス事業者、公的介護保険外のサービスを提供する事業者、障害福祉サービス事業者等が提供するサービスであって、要介護状態にある家族の介護に資するサービスをいいます。

●介護情報の提供等そのサービスを利用することによっても当然には当該労働者がその対象家族を介護する必要性がなくならないものは含まれないものとされています。

●なお、費用助成の内容としては、労働者の所定労働日1日当たり2時間について、介護保険の利用限度額を超えるサービスとして、例えば訪問介護サービス等を利用する場合や、公的介護保険の給付の対象とならないサービスとして、例えば家政婦による生活援助のサービス等を利用する場合に、少なくともその料金の5割に相当する額程度以上の助成額となることが望ましいものとされています。

●助成方法としては、週一括、月一括とするなど適宜の方法によれば足りるものであるが、見舞金など現実の介護サービスの利用の有無に関わりなく少額の一時金を支給する制度は、則74条3項3号に定める介護サービス費用の助成の制度に該当しないものであること。

また、平成28年改正法に関するQ&Aには、「業務の性質上短時間勤務等の措置が困難な場合 のために、介護サービス費用の助成という選択肢が用意されている(2-7答)。」と示されています。

なお、 管理職について、介護のための所定労働時間短縮等の措置を講じる必要についてですが、労基法第41 条第2号に定める管理監督者は、労働 時間・休憩・休日に関する規定が適用除外されており、自ら労働時間管理を行うことが 可能な立場にあることから、法第23条第3項の措置を講じる必要性はないということになっています。その代替として、「介護サービス費用の助成の措置」を定めておくのも一つの方法だと思います。

先週は毎日のように新年の賀詞交歓会がありなかなかハードな上、土曜日は年に2回のBBクラブの勉強会でした。勉強会には140人ものOBが集まってくれて、千代田支部の岩崎先生の「同一労働同一賃金」の講義もあり充実した内容でした。私の担当の法改正の部分は、隙間を見て予習は一応したのですが時間配分を間違えたのと、かっちりした予習にならず、思わず最初にかなり雑談的な話もしてしまい内容としては緩い話しぶりになったような気がしました。

終わってから恒例の懇親会後2次会で、今日の講義は自分たちが勉強していたころの講義を思い出したと盛り上がってくれました。雑談や年末に決まったのでレジュメに入れ込めなかった雇用保険率の板書もあったのでそんな風に感じられたのだと思いますが、そんなことを言いながらいままで長い間なんだか楽しく盛り上がれる仲間でいられることに幸せを感じました。


管理職が短時間勤務する場合の賃金

2016-08-14 21:54:58 | 産前産後・育児・介護休業

女性管理職が増えてきている状況の中で、ある程度キャリアが積み上がり管理職になってから出産し、早めに育児休業を切り上げて育児短時間勤務を取得するというケースが増えてきているようです。ときどき質問を受けるのですが、先日OURSセミナーで介護短時間勤務の改正内容をお話しした際にも、同様の質問を受けました。

管理職は、労基法に定める管理監督者として適正に認められる場合は、労基法第41条に定める「労働時間・休憩・休日」の適用除外とされています。要するに労働時間等の概念を持たないため時間外労働の発生自体もないということになり、時間外労働の割増賃金の支払いは要しないということになるわけです。管理監督者には残業代を支払う必要がないという考え方は、この労基法第41条の適用除外から来ています。

この管理監督者が育児短時間勤務を取得した場合に、一般社員と同じように賃金を按分して支給してよいものなのかという点がご質問になります。一般的に育児短時間勤務を取得した場合の賃金は、短時間勤務の時間数に応じた按分支給ということになります。そのように育児介護休業規程等に定めてある場合が多いと思います。例えば8時間勤務の会社で6時間の短時間勤務をする場合、賃金の8分の6が按分支給されるということになります。しかし管理監督者は「労働時間・休憩・休日」の適用除外であるため労働時間の概念がないのに8分の6等時間数に応じた按分支給とするのはおかしいではないかということになります。

その考え方は正しく、労働時間の概念がない管理監督者の場合、育児短時間勤務を取得したからといって労働時間に応じた賃金の按分支給の考え方は認められないということになります。短時間勤務であっても、管理監督者の仕事をこなしているのであれば、賃金は従来通り按分することなく支給されるべきということになります。

短時間勤務では管理職の職務を全うできないなどにより本人の希望で管理職を辞退等労使で話し合い管理職を外れるということになれば、労働時間に応じた賃金の按分支給ということになる場合もあるかと思いますが、特に管理職に就いたままの短時間勤務であれば労働時間が短くなっても賃金を削ることは認められません。

育児短時間勤務だけではなく介護短時間勤務であっても同じ扱いになります。

労務管理を行うためには、管理職としての仕事は何かという点を明確にしておき管理職手当と連動させておけば、管理職を外れる場合には管理職手当を外すという運用ができるため、支払う賃金を分解した場合各内容が分かるような賃金の仕組みにしておく必要はあるかと思います

オリンピックも中盤戦にかかり、日本は強いですね。見ていて楽しいです。特にやはり体操男子団体の金や内村航平選手の個人総合の金、柔道の大野将平選手の金、水泳の平泳ぎの金藤理恵選手の金、卓球の水谷隼選手の試合は感動しました。

昨今の若い世代は、ハングリーな環境から這い上がるというような昔の感覚ではなく、自己実現に真摯に取り組んでここまで来たというような感じがします。東京オリンピックが楽しみです。何とかチケットを手に入れて、絶対に見に行きたいと思っています。


介護休業の終了についての留意点

2016-06-05 23:01:13 | 産前産後・育児・介護休業

いつも仕事の中で勉強させて頂くことが多い仕事ではありますが、今回育児介護休業規程のチェックをさせて頂く中で、新たな発見がありました。

介護休業の終了についてなのですが、会社の介護休業規程に「介護休業の終了」の項目があり、その中で「治癒により対象家族を介護する必要がなくなった場合」という条文があり、その条文については削除する必要があることが分かりました。この理由としては以下の通達の記載にある通りです。終了と一時中断は違うという部分などはかなり実務的にも使えると思います。

(2) 介護休業期間の終了に関し、以下の点に留意すること。
イ (略)

ロ対象家族が要介護状態から脱した場合を当然終了事由とすることについては、

(イ) 対象家族が再び要介護状態となることも当然予想され、労働者にとって酷であること
(ロ) 事業主にとっても、対象家族の不安定な状態に影響されることは好ましくないものであること
から、適当ではなく、当然終了事由にはしなかったものであること。

ハ対象家族が特別養護老人ホーム、介護老人保健施設等へ入院・入所した場合についても、その入院・入所が一時的となる場合もあるため、ロで述べたと同様の理由で、当然終了事由にはしなかったものであること。

ニ他の者が労働者に代わって対象家族を介護することとなった場合についても、上記ロ及びハと同様、労働者にとっても確定的に介護をする必要性がなくなったとは限らないこと、使用者にとっても不確定要素に影響されるおそれがあることから、当然終了事由にはしなかったものであること。

ホイからニまでの場合を含め、介護休業期間中の労働者が一時的に介護をする必要がなくなった期間について、話合いの上、その事業主の下で就労することは妨げないものであること。この場合、当該労使で介護休業を終了させる特段の合意をした場合を除き、一旦職場に復帰することをもって当然に介護休業が終了するものではなく、一時的中断とみることが適当であって、当初の介護休業期間の範囲内で再び介護休業を再開することができるものであること。

平成21年12月28日 職発第1228第4号 10年保存雇児発第1228第2号
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行について

最近社会保険労務士の「倫理」の話をする機会が多いです。2月に5年に1度すべての社労士が受講しなければならない倫理研修の講師を務めたのがきっかけなのですが、私自身準備をして非常に奥の深さを感じたこともあり、また社労士として矜持をもって仕事をしたいと思うところがあり、そのあたりをお伝えしたいと思いながら話をさせて頂いています。

話は変わりますが、先日受講生OBの企業が後援しているのでということでチケットを頂き「ルノワール展」を見に行きました。特別招待日であったため、とてもすいている中で短い時間でしたがゆっくりと鑑賞することができて、とても良い時間を過ごすことができました。これからは絵を始めとして美術鑑賞もしてみたいと思いました。この年になるとかえってやっておきたいことがたくさん出てくるものですね。


契約社員の育児休業取得要件

2016-04-17 23:04:25 | 産前産後・育児・介護休業

育児介護休業法の定めによれば、契約社員(契約期間の定めのある社員)が育児休業を取得するには、一定の条件を満たす必要があります。この条件は平成29年1月1日に改正されることになりましたが、現在はどのような条件なのかというとなかなか理解が難しい条文になっています。

 (育児休業の申出)
第5条 労働者は、その養育する1歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。ただし、期間を定めて雇用される者については、次の各号のいずれにも該当するものに限り、当該申出をすることができる。
①当該事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者
②その養育する子が1歳に達する日(以下「1歳到達日」という。)を超えて引き続き雇用されることが見込まれる者(当該子の1歳到達日から1年を経過する日までの間に、その労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことが明らかである者を除く。)
 
上記のうち②はとても解読するのに難しいのですが、要するに以下の通り整理されます。
1.子の1歳の誕生日以降も引き続き雇用されていることが見込まれていること、かつ、
2.子の1歳到達日から1年を経過する日(=子の2歳の誕生日の前々日)までに、労働契約の期間が満了しており、かつ、契約が更新されないことが明らかでないこと
 
このうち1.の1歳の誕生日以降も引き続き雇用されていることが見込まれているとは、「書面等に労働契約を更新する場合がある旨明示されており、育児休業申出時点で締結している労働契約と同一の長さの期間で契約が更新されたならばその更新後の労働契約の期間の末日が1歳到達日後の日であるもの」などが指針で示されています。
 
さらに、2.の子の1歳到達日から1年を経過する日までに、労働契約の期間が満了しており、かつ、契約が更新されないことが明らかでないことについては、育児休業申出のあった時点において判明している事情に基づき労働契約の更新がないことが確実であるか否かによって判断するものとしています。
 
例えば、育児休業申出のあった時点で、 書面等に労働契約の更新回数の上限が明示があり、当該上限まで労働契約が更新された場合の期間の末日が1歳到達日から1年を経過する日以前の日である場合は、原則として、労働契約の更新がないことが確実であると判断されることになります。
※ただし、雇用の継続の見込みに関する事業主の言動、同様の地位にある他の労働者の状況及び当該労働者の過去の契約の更新状況等から、これに該当しないものと判断される場合もあり得るともされています。
 
この条文は、改正により2.は以下の通りシンプルになります(平成29年1月1日施行)
・その養育する子が1歳6カ月に達する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでない者
 
(参考指針)
子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針(平成21年厚生労働省告示第509号)
 
熊本を中心とした地震が早く収まることを祈っています。阿蘇は一度旅行で行きましたが美しくとても感激しました。元通りの姿にできるだけ早く戻れるようにと願います。
 
原稿の仕事が入り5月連休は集中して取り組むことになりそうです。今回はチームで作り上げることになり、それはそれで楽しみです。まだまだ資料が少ないので、労働政策審議会の資料をよく読んで研究してみようと思います。

育児休業復帰後の勤務

2015-11-29 23:28:23 | 産前産後・育児・介護休業

今年10月に最高裁が差戻ししたいわゆるマタハラ裁判ですが、広島高裁において11月17日判決が下り降格を適法とした一審・広島地裁判決を変更し、精神的苦痛による慰謝料も含めてほぼ請求通り約175万円の賠償を病院側に命じ女性が逆転勝訴したことは良く知られていると思います。

最高裁の判決がおりたことに伴い厚労省から通達も出ており、企業としては育休明けの社員への対応についてかなり気を遣う状況になっていることは否めません。育児休業復帰後の勤務については、非常に大変であるとは思うのですが、会社として腫れ物に触るような対応しかできないということになるとまわりの社員の思いもあり問題です。まず対応としては均等法や育介法で禁止されている不利益取り扱いがどのようなものかを正確に理解しておく必要があります。

◎不利益取扱いの例
・解雇
・雇止め
・契約更新回数の引き下げ
・退職や正社員を非正規社員とするような契約内容変更の強要
・降格
・減給
・賞与等における不利益な算定
・不利益な配置変更
・不利益な自宅待機命令
・昇進・昇格の人事考課で不利益な評価を行う
・仕事をさせない、もっぱら雑務をさせるなど就業環境を害する行為をする

◎不利益取扱いの例外等されている場合  ※実際にはより詳細な状況等を確認した上で違法性の判断を行います

①業務上の必要性が不利益取扱いの影響を上回る特段の事情がある
・経営状況の悪化が理由である場合:不利益取扱いをしなければ業務運営に支障が生じる状況にあった上で、不利益取扱いを回避する合理的な努力がなされ、人員選定が妥当である等
・本人の能力不足等が理由である場合:妊娠等の事由の発生前から能力不足等が問題とされており、不利益取扱いの内容・程度が能力不足等の状況と比較して妥当で、改善の機会を相当程度与えたが改善の見込みがない等

②本人が同意し、一般的労働者が同意する合理的理由が客観的に存在
・契機となった事由や取扱いによる有利な影響(労働者の求めに応じて業務量が軽減されるなど)があって、それが不利な影響を上回り、不利益取扱いによる影響について事業主から適切な説明があり、労働者が十分理解した上で応じるかどうかを決められた等

上記を念頭に置きながら社員の「妊娠・出産・育児」に対応していく必要があります。

以下分かりやすくリーフが作られています。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/270330-4.pdf

お世話になった人事責任者の方の定年退職パーティーにお招きいただきました。顧問契約を頂いてから時が経ち、最近はいずれはその日が来ることを視野に入れておられることはいつもご相談業務の中で感じていましたが、時の流れは本当に早かったです。仕事のお付き合いのあった各方面の方が集まり明るく次のステージへ送り出すための会で、人望のある方だったんだなあとしみじみ感じました。パーティーからの帰り道「幸せな仕事人生」という言葉が浮かびました。


子の養育特例 第2子の場合

2015-04-19 22:26:28 | 産前産後・育児・介護休業
「3歳に満たない子を養育する場合の標準報酬月額の特例」ができたのは、平成16年の改正の際でした。これは3歳未満の子を育てることにより短時間勤務等をすることで標準報酬月額が下がった場合であっても、年金額の計算においては子を育てる前の標準報酬月額を保障するという趣旨の規定です。
 
先日のBBクラブの勉強会の際に質問を受けて、条文を再度読み返してみました。質問の内容は概ね次の通りです。
 
1)第1子の養育特例を受けている期間中に第2子の養育特例を受けることになる場合、第1子の出産後短時間勤務をしていたりして標準報酬月額が下がっているため、第2子を養育することとなる前月の標準報酬月額を従前標準報酬月額とすると、第1子のときより保障される標準報酬月額が下がってしまうのではないか。
 
2)第2子を出産するとそこで第1子の養育特例は終了するので必ず第2子の養育特例の申出をし直さなければならないと言われたのだが前より厳しくなったのではないか。
 
これは平成26年4月からスタートした産前産後の保険料免除に伴う扱いの違いだろうと見当は付きました。条文を紐解くと良く考えられていたことが分かりますがあまりにマニアックになりますのでまずポイントだけ以下にあげておきます。その後に続く条文についての解説は興味のある方だけ読んで頂ければ幸いです。
 
【ポイント】(ここでは女性を前提として記しておきます)
 
1)第1子の養育特例期間中に第2子の養育特例を開始しても第1子で保障されていた標準報酬月額が適用され、保障が下がってしまうことはない。
2)第1子の養育特例期間中に第2子の産前産後の保険料免除が始まると第1子の養育特例は終了する。
3)第2子の産前産後の保険料免除期間に引き続き育児休業の保険料免除期間も養育特例は適用されず、次の養育特例は第2子の育休復帰後再度申出をすることで適用になり、第1子のときに保障されていた従前標準報酬月額が保障される。
 
昨年4月に、産前産後の保険料免除が開始すると養育特例は終了すると規定され、第2子の産休中には第1子の養育特例が適用されていない状態になりました。つまり第2子の養育開始の前月の標準報酬月額は特例の対象となっていないため低くなってしまう可能性があり、第1子の際の標準報酬月額を復活させるには第2子の養育特例の申出をしっかりする必要があり、年金事務所が前よりきちんと申し出ることを求めるようになったのではないかと思います。
 
【条文解説】
都合2回厚生労働省に問い合わせて確認してやっと紐解けたものですのでかなりマニアックです。
条文を改正前後で比べてみると厚生年金保険法第26条第1項第6号と第3項が加わっていました。この2つの条文は何を言っているかというと以下の通りです。
 
①第1項6号では、(第2子の)産前産後の保険料免除が開始すると現に受けている(第1子の)養育特例は終了すること。
 
②第3項では、該当の子(第2子)以外の子(第1子)について養育特例を受けていた場合については、産前産後の免除による(第1子の)養育特例の終了がなかったとすることができ、以前から受けていた第1子の従前標準報酬月額を保障させることができる。
 
産前産後の保険料免除が昨年スタートするまでは、第1子の養育特例期間中に第2子を出産することになった場合、第2子の育児休業が開始するまでは養育特例が終了することはありませんでした(第26条1項5号)。つまり第2子の特例開始月である「養育することとなった月」には第1子の養育特例を受けていた=第1子の特例である従前標準報酬月額が適用されていた、ということになります。第2子の養育特例においても従前標準報酬月額がそのまま使えるという状況でした。
そこで、条文の第1項(アンダーライン①)の規定により第2子の育児休業が開始した場合の従前標準報酬月額は不利にならないように第1子の従前標準報酬月額をみなす扱いができるようになっています。
 
しかし、産前産後の保険料免除が開始されたことにより、その時点で第1子の養育特例は終了することになり、第2子の「養育することとなった月」の標準報酬月額は特例を受けていない低い標準報酬月額である可能性が高いということになりました。
その場合のために第3項の、産前の保険料免除期間による養育特例終了がなかったとみなして(アンダーライン②)第1子の従前標準報酬月額の保障を第2子の養育開始時から再度受けられる、というために規定する必要があったということになります。
 
(三歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例)
第二十六条  三歳に満たない子を養育し、又は養育していた被保険者又は被保険者であつた者が、厚生労働省令で定めるところにより厚生労働大臣に申出(被保険者にあつては、その使用される事業所の事業主を経由して行うものとする。)をしたときは、当該子を養育することとなつた日(厚生労働省令で定める事実が生じた日にあつては、その日)の属する月から次の各号のいずれかに該当するに至つた日の翌日の属する月の前月までの各月のうち、その標準報酬月額が当該子を養育することとなつた日の属する月の前月(当該月において被保険者でない場合にあつては、当該月前一年以内における被保険者であつた月のうち直近の月。以下この条において「基準月」という。)の標準報酬月額(この項の規定により当該子以外の子に係る基準月の標準報酬月額が標準報酬月額とみなされている場合にあつては、当該みなされた基準月の標準報酬月額。以下この項において「従前標準報酬月額」という。)を下回る月(当該申出が行われた日の属する月前の月にあつては、当該申出が行われた日の属する月の前月までの二年間のうちにあるものに限る。)については、従前標準報酬月額を当該下回る月の第四十三条第一項に規定する平均標準報酬額の計算の基礎となる標準報酬月額とみなす。
 当該子が三歳に達したとき。
 第十四条各号のいずれかに該当するに至つたとき。
 当該子以外の子についてこの条の規定の適用を受ける場合における当該子以外の子を養育することとなつたときその他これに準ずる事実として厚生労働省令で定めるものが生じたとき。
 当該子が死亡したときその他当該被保険者が当該子を養育しないこととなつたとき。
 当該被保険者に係る第八十一条の二の規定の適用を受ける育児休業等を開始したとき。
 当該被保険者に係る第八十一条の二の二の規定の適用を受ける産前産後休業を開始したとき。
 前項の規定の適用による年金たる保険給付の額の改定その他前項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
 第一項第六号の規定に該当した者(同項の規定により当該子以外の子に係る基準月の標準報酬月額が基準月の標準報酬月額とみなされている場合を除く。)に対する同項の規定の適用については、同項中「この項の規定により当該子以外の子に係る基準月の標準報酬月額が標準報酬月額とみなされている場合にあつては、当該みなされた基準月の標準報酬月額」とあるのは、「第六号の規定の適用がなかつたとしたならば、この項の規定により当該子以外の子に係る基準月の標準報酬月額が標準報酬月額とみなされる場合にあつては、当該みなされることとなる基準月の標準報酬月額」とする。
 
今回のこのあまりにもしつこい追求により、2012.7.15の「子の養育特例」の内容に誤りがあることが分かりました(一部削除しました)。申し訳ありません。でもやっとスッキリしました。2週間がかりでした。

10日以下の就業で介護休業給付金受給

2015-04-05 22:11:54 | 産前産後・育児・介護休業

労働政策研究・研修機構の「仕事と介護の両立に関する調査(平成27年1月23日速報)」を読む機会がありました。介護はだんだん身近に感じられる年齢になり結構真剣になります。私は時間的な面では一定の自由はありますが、職員を雇う身なれば色々と考え準備をする必要もあります。

厚生労働省の調査によれば、家族の介護等を理由に離転職する方も年間10万人に達しているとのことです(総務省 平成24年「就業構造基本調査結果」)。

そういう意味では短時間勤務は育児休業明けや病気休職明けだけではなく介護期間中の働き方としても今後増えていくことになり、短時間勤務を組み合わせながら仕事を回していく部署というものを作る、というのも一つの方法かもしれません。

前出の「仕事と介護の両立に関する調査」では、介護開始時の勤務先で介護のために1週間を超えて連続して仕事を休んだ経験がある割合は介護開始時正規雇用の15.1%。1週間を超えて休む場合も、その日数は2週間以内が最も高く75.0%と断トツです。育児介護休業法で定められている介護休業は、短時間勤務を含めて93日が上限とされているのですが、一要介護状態での休業は通算はできず一度打ち切ればそれで終了となります。あくまでそれぞれ異なる事由による病気等による介護の場合のみ通算して93日が取得できるということです。そうだとすると2週間以内で介護休業を終了した場合、あとは通常勤務に戻るということになります。しかし、大きな手術等した場合は2カ月くらいはバタバタと病院からの呼び出しやら手術に付随した処置等があるものだと思います。そうだとすると通常勤務ではかなり時間のやりくりが厳しいと思われます。

育児休業期間中に支給される「育児休業給付金」は、就業している日数が1か月ごとの各支給単位期間ごとに10日以下の就業であることを要件とします。この10日以下の就業は、10日を超える場合にあっては、就業している時間が80時間以下であることでも認めるという雇用保険法の規則の改正が平成26年10月に行われました。この80時間以下であれば育児休業中と認められるというのは使い方としては非常に有効だと言えます。15日を就業した場合でも1日5時間働いて合計75時間ということでも育児休業期間中ということで育児休業給付金が受給できます。但し、給付金の額と賃金額を合計して休業開始時賃金日額の80%を超えると給付金は減額調整されることになります。それでも(減額調整された場合でも)合計で約80%の収入が確保できるということになります。

この仕組みは「介護休業給付金」にもあります。但し今のところ「10日を超える場合にあっては、就業している時間が80時間以下であること」は認められていません。来年にはと予測される育児介護休業法の改正の際に加えてもらうとよいと思います。例えば介護休業を2週間取得したとしてもそのあとも2カ月強の間は80時間以内の勤務で働くことで介護の時間をやりくりしながら一定の収入を確保しつつ、次の体制を整えるということが可能だと思います。

先週は支部の事業も一段落して次の年度を待つばかりとなり、連続していたセミナーもなんとか無事終了したためホッと一息の1週間になりました。新年度に向けて新たな準備をしたり、書類を整理したり片付けたりと、心の洗濯も合わせてすることができたような気がします。今月は少し余裕がありそうなので、モデル就業規則のバージョンアップと簡易労務監査をメンテをしようと思います。