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社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

育児休業給付の失業等給付からの分離

2020-07-19 22:03:53 | 産前産後・育児・介護休業

令和2年4月1日施行の改正雇用保険法で育児休業給付は失業等給付から分離されています。もともと失業「等」給付の「等」は雇用継続給付(高年齢雇用継続給付と育児休業給付)が平成7年に施行された際に加わったものであり、今回育児休業給付は雇用継続給付から独立することになりましたので、失業等給付+育児休業給付という位置づけになったことになります。

2019年12月13日付日経電子版によると、厚生労働省は、「出産後も働く女性が増え給付額が増加している育児休業給付を、失業給付と分けて料率算定することを明記した改正案を提出」とありました。「出産をした後も働き続ける女性が増えたことを背景に、育児休業給付は給付額が増え続けている。18年度は17年度比11%増の5312億円だった。一方、失業給付の基本手当は同1%増の5473億円で、19年度には育児休業給付が逆転する見通しだ。政府は男性の育休取得も促しており、雇用保険財政に与える影響はさらに膨らむと想定される。」ということで雇用保険財政の中でバランスが悪くなっていたようです(ただしこの後コロナウイルス感染拡大による雇用保険財政への影響は計り知れず、現状は12月の時点とは様変わりしていると思います。そのうち研究してブログで雇用保険率の弾力条項も含めて取り上げようと思います。)

労働政策審議会の2020年1月8日 第138回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会議事録を簡単にまとめてみると以下のように審議事項の説明がされており、改正条文も同様の内容になっています。
①育児休業給付の新しい給付の体系への位置付けということで、失業等給付の雇用継続給付から削除。

②失業等給付とは別の章(育児休業給付の章)として、独立した章を新設し現行の育児休業給付金に係る規定を削除するとともに、新設する章に同内容を規定する。

③これまでの雇用保険の各給付において設けられている措置、未支給の失業等給付、返還命令等、受給権の保護及び公課の禁止の規定について、育児休業給付金についても準用する。

④国庫負担について、当該育児休業給付に用する費用の8分の1を負担する。

⑤一般保険料徴収額に育児休業給付率(1,000分の4の率を雇用保険率で除して得た率)を乗じて得た額は、これまでと同様育児休業給付に要する費用に充てるものとする。これに伴い保険料率の算定方法を分ける。現在、時限的な引き下げで年収の0.6%になっている保険料のうち0.4%を育児休業給付の料率とし、当面は据え置く。

「雇用情勢など景気に左右されやすい失業給付と、景気の影響を受けにくい育児休業給付を分けることで雇用保険財政を透明化する。将来的には育児休業給付の負担のあり方を見直し、雇用保険財政から切り離すことも視野に入れる。」ということです。さらに、2020年2月9日の日経電子版では「政府は育児休業給付金の支給水準を引き上げる検討に入った。賃金の最大67%の給付率を80%まで引き上げる案が現段階で浮上している。受給中は社会保険料などが免除されるため、育休取得前の手取り月収とほぼ同額を実質受け取れる。男性の育休取得や少子化対策を後押しする狙いだ。ただ、財源負担を巡り慎重な声もあり、議論は難航する可能性もある。・・・3月末までに策定を目指す「少子化社会対策大綱」に、給付率引き上げを盛り込む方向で検討している。」とあります。

少子化社会対策大綱を確認してみましたが給付率の引き上げは盛り込まれておらず、その後労働政策審議会上記部会もコロナ対応に追われており審議は今のところ止まっているようです。しかし、育児休業給付が雇用継続という位置づけではなく育児休業中の生計を保証するものという位置づけになったということは社会の育児休業に対する受け止め方がここ20数年で大きく変わったのだと実感するものになったと思います。

顧問先との打合わせも社労士会の会議も大学院の授業も100%オンラインという状況の中で、人に会いたいなあと思っています。やはりちょっとした雑談や相手の表情などはオンラインではわかりにくいように感じるからだと思います。先日支部の役員会のお知らせに久しぶりにみんなの顔が見たくなり出席の返事をしようとしたところほとんど全出席の登録には驚きました。流石、社労士はやはり人が大好きな人が多いのですね。

ただ、オンライン会議の効率の良さには感激します。1時間の予定の打合せで片道30分で計2時間必要なところ、雑談もなく4、50分で終わると時間的な余裕が生まれて有難いとも思います。今後もオンライン会議は対面での打合わせと上手く組み合わせて利用されることは確実です。この数か月の社会や仕事環境の変わりようは驚くべきものがあり、これからどこに着地点が来るのかあれこれ思うのも楽しくもあります。

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