湘南徒然草

湘南に生まれ、育ち、この土地を愛し、家庭を持ち、子育てに追われ、重税に耐える一人の男の呟き。

現代人の悩みと太宰治

2009-06-25 18:45:33 | Weblog
私は最近、少し大きなテーマについて、考えています

「現代人の悩み」

についてです

現代人の悩みとは、私自身の悩みでもあります
いうまでもなく、私自身が現代人だからです

そして、つくづく思うのです
現代人の悩みとは

「何をやっていいのか分からないこと」

・・・だと。

私自身が、まさにそうなのです
ずっとずっと悩んできたことの本質はコレなのです
贅沢な悩みなのです
そんな贅沢な悩みは、皆が皆持つわけではないと、反論されそうです
しかし本当は、皆さん、コレで悩んでいるのではないでしょうか?

衣食住が満たされると
人は急に、何をしていいのか分からなくなるのです
何でも出来る”自由”を獲得すると
それが、人々を苦しめる悩みの種になるのです

”自由”は、けして喜びや幸福に直結しません
”自由”は、悩みの種でもあるのです

衣食住が満たされない時は
私達の行動は、もっと目的が明快であり、直接的です
とにかく、その日の食べ物、着る物、ねぐらを確保しなければなりません
ある意味で、何かを考える余地がないのです
当面の問題を解消するため、行動に出なければなりません

先頃、没後60周年をむかえた太宰治を、マスコミは大きく取り上げました
太宰治の魅力について、多くの論評がなされています

私に言わせれば、太宰治こそ、最初の”現代作家”なのです
”何をしてよいか分からぬ”青春の彷徨こそが太宰文学の本質です
子供の頃、お腹が空いたという感覚が無かったという
「人間失格」の主人公の告白こそ、太宰文学の核心です

衣食住を満たされた現代人
とりわけ食欲を満たされ、空腹を経験することの無い現代人
動物として自然な行動の動機が失われた現代人
欲望を満たすことにすら
意味を求めなければいられない現代人の悩み
その部分に最初に切り込んだのが小説家・太宰治だったのです

拒食症、過食症の例を出すまでもなく
本能的欲望と現実的行動の間に
とんでもない亀裂が入ってしまう危険があるのが
現代人の危うい心理なのです

それは”食”だけでなく”性”についても深刻です
太宰治の苦しみは現代人の苦しみの先取りだったのです

もちろん、どんな時代でも
人は、そうした苦しみを持つ可能性があります
しかし、そうした人は、社会の中のごく少数の上流階級に限られていたのです
現代では、自分では貧乏だと考えている人々の中にも
こうした悩みが侵入しているのです
ここに、太宰治の現代的価値があるのではないでしょうか
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