無意識日記
宇多田光 word:i_
 



少し前迄の光は「もし歌が売れなくなったら」とか「(主に〆切間際に)あ~もうこんな事やめてやる」とか躊躇わずに云っていた。普通音楽に携わる人は本音でなくとも「ずっとこの道でやっていきます」的な発言をするものなのに。ソレらが光の照れ隠しだというのなら「小さい頃は音楽なんてやりたくなかった」とかは究極のツンデレ発言になるのだが、クリエイターには、"いつでも辞める覚悟ができている状態の方が創造性が高まる"という事情があるのだ。「ずっとやる」と決めてしまうとどうしたって将来を考えて力をセーブしちゃうからね。「仮にこの後才能尽きようが眼前の作品に全力を捧ぐ」と腹を括ったヤツは強い。甘い事を言う様だが、そうやって全力を出し切れた人間にこそ神様は次のチャンスを与えてくれる。挑戦者のみ貰えるご褒美は更なる挑戦とはよく言ったものだ。光はソレを無意識裡に察知しているのだろう、また次の音楽に挑戦したいという強い気持ちが「いつだって辞めてやる」的発言の源になっているのだ…としたら何とも逆説的な話だが、結果的にはソレが光の音楽家人生のパースペクティヴを広げてゆく。光がいつでも辞めれる様にとチエちゃん1人しか雇わないザネッティは、実は最高のマネージメントをしているのである。

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