今回クロニクルで何回「不思議」と「不自然」言ったかね? 数える気はないけれど、ヒカルにとってツアーってつまり、過去最高のクォリティを誇った今年においても尚、そうだったのね。
ライブ・アーティストにとっては「ライブをしているとき」がいちばん自然で集中できる時間だ。「ライブをやるために辛いスタジオワーク頑張る」というモチベーションの作り方をする。ヒカルは逆よね。
アンケートをとった訳ではないけれど、メジャーのポップ・ミュージシャン全体でいうと、ヒカルの方が少数派なような気はするな。なんというか、昔ヒカルが「勉強は好きですね」と言い切っていたけれど、私くらいの世代までだとこれをこう言える人は稀で、たとえ好きでもなかなかそう公言できなかった世の中だったわ。つまり、少数派で力がなかった。でもヒカルはいつも構わず遠慮無く言うよね。カッコいい。それと似た感じかもしれないライブよりスタジオ・ワーク、作詞作曲の方が自然な営みだと思えるってのは。
少し不安になるといえばなる。あれだけ楽しそうにライブやっといて、夢中というよりは「いつもと違うこの感じをよく観察しておこう」モードだったというのは、これ次に「また是非やりたい!」ってテンションになりづらい。「ああ、こういう感じになるのね」っていう知的興味を一旦満たしてしまうと、ここに還ってくる気がなくなる。困った。あたしはまた観たいのに。
こういうのがいちばんダラダラ先延ばしになりがち。「ライブ好きだよ。やってる時楽しかったし。」の後に、「でもやっぱり私はスタジオに居るのが自然だから」って言われたら、ライブに出掛けれるタイミングが延々やってこない。寧ろ苦手と言ってくれた方がわかりやすい。ビートルズなんかデビュー4年でライブ辞めちゃったもんね。「ああそうなんだ、スタジオ・アーティストなんだねだったら滅多にツアーに出なくても仕方がないか。」と合点もいく。嬉しくはないけどね。SFツアーを観た私は「こんなにライブを楽しめるんだったら次のツアー結構早いのでは?」という感想を持ったのだけど、ヒカルとしては別に意識改革が起こっていたわけでもなかったんだな。ツアー中の喉の管理のストイックなエピソードとかを聞くと、なるほど、ステージの上で快適に過ごす(歌いながら悔しがったりしない)為に、今までで最も適切な準備を徹底して出来てたってことではあったのだろうけど、ライブ・コンサートに対する感情が変化したとかではなかったんだな。ブレへんなぁ。
まぁそれならそれでいいか。冷静に考えたら、コンサートも勿論大好きだけど、ヒカルの「自然で不思議でない」場所であるピアノの前やスタジオ内から生まれてくる次なる新曲とリアルタイムで同時代に巡り会えるのはもっと大好きかもしれない。どっちがいいかって訊かれると難しい。お料理作って食べるようなもので、どっちもあってやっと自然なサイクルとして完成するものだと思っちゃうんだけどなー。ま、暫く様子見だねこの点に関しては。
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