鳥取の漁港を巡る旅も2日目、今朝はベニズワイガニの水揚げで有名な、境港の魚市場を尋ねる予定である。水揚げと競りに合わせての早起きは慣れたもので、気持ちよく目覚めてふと時計を見ると… 何と7時過ぎ! 昨晩泊まった旅館美佐の食事処で、地魚を肴に地酒「鬼の舌震い」で深酒してしまったか、すっかり寝坊してしまった、とあわてて旅館を飛び出した。境港は妖怪をテーマにした漫画家・水木しげるゆかりの町で、魚市場方面へ伸びるシンボルロード「水木しげるロード」沿道には、種々様々な妖怪のブロンズ像がずらり。夜は墓場で運動会でもやって戻ってきたばかりといった、妖怪たちの視線を感じながら、足早に魚市場方面へ。彼らは学校も試験もなんにもないんだろうけど、自分には漁港と市場とお魚のルポというお仕事がある。
水木しげる記念館の前を過ぎたあたりで、市街から境水道沿いの道へと出て、広々した水路と対岸に美保関の半島を望みながら歩く。沿道の岸壁には大型の底引き網船が停泊しているのも見かけ、妖怪の町から漁港の町へと表情が一変したよう。さらに境水道大橋をくぐったあたりから、海に沿って漁港の関連施設が集中。すぐに水揚げ岸壁や荷捌き場、小売市場といった、境漁港の中枢施設も目に入ってきた。最盛期の水揚げ量は50万トン以上、平成4年以降5年連続日本一と、日本屈指の水揚げを誇る漁港だけに、敷地は広く迷子になってしまいそうだ。場内で見かけた案内板によると、巻き網、沖合イカ釣り、かにカゴ、沖合底引き網といった沖合漁業と、小型底引き網に刺し網などの沿岸漁業など、魚種や漁法別に水揚げや荷扱いの岸壁が異なっている。遅まきながらベニズワイガニの水揚げを見ようと、まずは3号上屋へと足を運んでみることに。
境漁港の水揚場は、前述の通り大きく3ヵ所に分かれていて、ベニズワイガニを扱う3号上屋は、せり出した突堤のちょうど先端部にあたる。境港は何といっても、ベニズワイガニ日本一の漁港。水揚げも2005年の数字で1万1000トンで日本一、さらにベニズワイガニの加工量も、全国の8割を占めている。水揚げは未明から行われ、競りは7時ごろ行われるというから、行ってみるとすでに漁船の姿も人気もなく閑散としている。通りかかった職員に、もう水揚げや競りは終わったんですよね、と聞いてみたところ、「終わったというか、今日はベニズワイガニの水揚げ自体がないんだよ」。ベニズワイガニは加工場が日曜は休みのため、日曜はベニズワイガニの競りは行われないという。底引き網船は帰港せず、月曜まで沖泊で漁を続けるから、この日は水揚げもなし。境港を訪れるのが日曜だったので、出かける前に念のため市場がやっているかメールで尋ねたら、「水揚げは日曜でもやってます。カモメの糞に気をつけていらしてください」と愛嬌ある返信を頂いていたのだが。
ベニズワイガニはそんな状況だが、返信の通り水揚げ自体はあちこちでやっているよう。ということで、ほかの地魚の水揚げを見物してみることにしよう。まずは突堤の左側にあたる、巻き網漁業の漁獲を取り扱う5号上屋へ。巻き網漁業もベニズワイガニ漁に並ぶ境漁港の水揚げの中心で、隠岐周辺を漁場に主にアジ、イワシ、サバ、スルメイカ、夏場はマグロ漁も行っている。足を運ぶとちょうど1隻の船が接岸して水揚げの最中で、魚層からクレーン付きの大きな網が持ち上がり、甲板へドサッと魚を広げて仕分けしている。するとトラックが船に横付けされ、今度はクレーン付きの網からトラックの荷台へと、直接ドサッと豪快な積み込み作業が始まった。周辺に集まっている仲卸人に聞くと、巻き網船は9時から昼前ぐらいに帰港して水揚げするので、まだ時間が早いという。
地魚をあれこれ見たいなら、ちょうど今2号上屋で作業をしているから、と教えられ、突堤の付け根の右側にある建物へと足を運んでみることに。広々とした場内にはあちこちにスチロールの箱が高々と積まれ、人や器材や荷物が激しく行き来する雑然としている。こちらはすでに作業の終盤らしく、競り落とされた魚が詰められたスチロール箱が、小型のトラックに積み込まれていく最中。ところどころではまだ競りも行われており、競り落とされた荷が台車やフォークリフトで運ばれていく中を、気をつけて歩く。箱には船名と魚種、重さなどを記した札が貼られ、ふたがされているのでせっかく「魚」を見にきたのに中身が分からないのが残念。場内の奥まった一角では箱詰め作業が行われていて、箱に女性が魚を入れてサッと氷を詰め、とベルトコンベア式に作業が進んでいく。
地魚を見るなら2号上屋、と教えてもらったとおり、ここは主に底引き網漁や沿岸の小物といった漁獲を扱っており、扱われる魚種はバラエティに富んでいる。境港からほど近い漁場である隠岐周辺は、暖流と寒流が交錯する日本屈指の優良な漁場で、境港ではここや美保湾一帯を漁場にした底引き網漁も盛んである。底引きでは一艘引きだと松葉ガニ・ハタハタ、赤ガレイ、二艘引きだと鯛、白イカ、ヒラメなどが主な漁獲。さらに鯛やハマチ、ノドグロ、沖メバルといった高級魚も漁獲されるという。夜中に漁を行い未明から早朝に帰港、ここで水揚げ作業を行うため、この時間はすでに作業の終わりに近い。箱の札にはノドグロ、モンガレイ、赤エビ、モサ、白ハタなど書かれており、モサとかモンガレイとか一体どんな魚なんだろう、とついふたを開けてみたくなる。(モサはモサエビか?)ブリ、タラ、サワラ、鯛など大型魚の箱はふたが開いていて、中には4キロの大鯛、2匹11キロと書かれた大ブリも。「大敷」「島根定置もん」などと、箱にある表示が地魚らしい。ほか巻き網のアジやサバの入った箱も結構見かけ、漁獲が多いせいかものすごい高さで積まれ並んでいる。
ほかシジミに赤貝、アナゴなどの小物をざっと一巡したところで、場内はもう片付けにかかりはじめている様子。期待のベニズワイガニの水揚げや競りは見られなかったけれど、寝坊したからじゃなく水揚げがなかったから結果オーライと、いうことで? 寝坊なりの早起きのせいか、昨夜の酒が残っているからか、眠たい目で大あくびをしたら、この地ならではの深海魚・ドギ君のパッチリ瞳が、皿の上から見つめているのに目が合ってしまった。(2006年9月25日食記)
水木しげる記念館の前を過ぎたあたりで、市街から境水道沿いの道へと出て、広々した水路と対岸に美保関の半島を望みながら歩く。沿道の岸壁には大型の底引き網船が停泊しているのも見かけ、妖怪の町から漁港の町へと表情が一変したよう。さらに境水道大橋をくぐったあたりから、海に沿って漁港の関連施設が集中。すぐに水揚げ岸壁や荷捌き場、小売市場といった、境漁港の中枢施設も目に入ってきた。最盛期の水揚げ量は50万トン以上、平成4年以降5年連続日本一と、日本屈指の水揚げを誇る漁港だけに、敷地は広く迷子になってしまいそうだ。場内で見かけた案内板によると、巻き網、沖合イカ釣り、かにカゴ、沖合底引き網といった沖合漁業と、小型底引き網に刺し網などの沿岸漁業など、魚種や漁法別に水揚げや荷扱いの岸壁が異なっている。遅まきながらベニズワイガニの水揚げを見ようと、まずは3号上屋へと足を運んでみることに。
境漁港の水揚場は、前述の通り大きく3ヵ所に分かれていて、ベニズワイガニを扱う3号上屋は、せり出した突堤のちょうど先端部にあたる。境港は何といっても、ベニズワイガニ日本一の漁港。水揚げも2005年の数字で1万1000トンで日本一、さらにベニズワイガニの加工量も、全国の8割を占めている。水揚げは未明から行われ、競りは7時ごろ行われるというから、行ってみるとすでに漁船の姿も人気もなく閑散としている。通りかかった職員に、もう水揚げや競りは終わったんですよね、と聞いてみたところ、「終わったというか、今日はベニズワイガニの水揚げ自体がないんだよ」。ベニズワイガニは加工場が日曜は休みのため、日曜はベニズワイガニの競りは行われないという。底引き網船は帰港せず、月曜まで沖泊で漁を続けるから、この日は水揚げもなし。境港を訪れるのが日曜だったので、出かける前に念のため市場がやっているかメールで尋ねたら、「水揚げは日曜でもやってます。カモメの糞に気をつけていらしてください」と愛嬌ある返信を頂いていたのだが。
ベニズワイガニはそんな状況だが、返信の通り水揚げ自体はあちこちでやっているよう。ということで、ほかの地魚の水揚げを見物してみることにしよう。まずは突堤の左側にあたる、巻き網漁業の漁獲を取り扱う5号上屋へ。巻き網漁業もベニズワイガニ漁に並ぶ境漁港の水揚げの中心で、隠岐周辺を漁場に主にアジ、イワシ、サバ、スルメイカ、夏場はマグロ漁も行っている。足を運ぶとちょうど1隻の船が接岸して水揚げの最中で、魚層からクレーン付きの大きな網が持ち上がり、甲板へドサッと魚を広げて仕分けしている。するとトラックが船に横付けされ、今度はクレーン付きの網からトラックの荷台へと、直接ドサッと豪快な積み込み作業が始まった。周辺に集まっている仲卸人に聞くと、巻き網船は9時から昼前ぐらいに帰港して水揚げするので、まだ時間が早いという。
地魚をあれこれ見たいなら、ちょうど今2号上屋で作業をしているから、と教えられ、突堤の付け根の右側にある建物へと足を運んでみることに。広々とした場内にはあちこちにスチロールの箱が高々と積まれ、人や器材や荷物が激しく行き来する雑然としている。こちらはすでに作業の終盤らしく、競り落とされた魚が詰められたスチロール箱が、小型のトラックに積み込まれていく最中。ところどころではまだ競りも行われており、競り落とされた荷が台車やフォークリフトで運ばれていく中を、気をつけて歩く。箱には船名と魚種、重さなどを記した札が貼られ、ふたがされているのでせっかく「魚」を見にきたのに中身が分からないのが残念。場内の奥まった一角では箱詰め作業が行われていて、箱に女性が魚を入れてサッと氷を詰め、とベルトコンベア式に作業が進んでいく。
地魚を見るなら2号上屋、と教えてもらったとおり、ここは主に底引き網漁や沿岸の小物といった漁獲を扱っており、扱われる魚種はバラエティに富んでいる。境港からほど近い漁場である隠岐周辺は、暖流と寒流が交錯する日本屈指の優良な漁場で、境港ではここや美保湾一帯を漁場にした底引き網漁も盛んである。底引きでは一艘引きだと松葉ガニ・ハタハタ、赤ガレイ、二艘引きだと鯛、白イカ、ヒラメなどが主な漁獲。さらに鯛やハマチ、ノドグロ、沖メバルといった高級魚も漁獲されるという。夜中に漁を行い未明から早朝に帰港、ここで水揚げ作業を行うため、この時間はすでに作業の終わりに近い。箱の札にはノドグロ、モンガレイ、赤エビ、モサ、白ハタなど書かれており、モサとかモンガレイとか一体どんな魚なんだろう、とついふたを開けてみたくなる。(モサはモサエビか?)ブリ、タラ、サワラ、鯛など大型魚の箱はふたが開いていて、中には4キロの大鯛、2匹11キロと書かれた大ブリも。「大敷」「島根定置もん」などと、箱にある表示が地魚らしい。ほか巻き網のアジやサバの入った箱も結構見かけ、漁獲が多いせいかものすごい高さで積まれ並んでいる。
ほかシジミに赤貝、アナゴなどの小物をざっと一巡したところで、場内はもう片付けにかかりはじめている様子。期待のベニズワイガニの水揚げや競りは見られなかったけれど、寝坊したからじゃなく水揚げがなかったから結果オーライと、いうことで? 寝坊なりの早起きのせいか、昨夜の酒が残っているからか、眠たい目で大あくびをしたら、この地ならではの深海魚・ドギ君のパッチリ瞳が、皿の上から見つめているのに目が合ってしまった。(2006年9月25日食記)