ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

魚どころの特上ごはん12…漁港の回転寿司は実力派・金谷港「船主総本店」の握りは東京湾の地魚づくし

2005年11月22日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
 横浜の自宅から千葉県のマザー牧場へ、行きは東京湾横断道路を経由してドライブ。そして帰りは東京湾口の浜金谷~久里浜を結ぶ東京湾フェリーを利用することにした。時計を見ると、最終の19時30分出航のフェリーには余裕で間に合うが、家に帰るころには21時を過ぎそう。子供たちは牧場で1日遊んで少々お疲れの様子なので、乗船前に早めに夕食を済まそうと思いつつフェリーターミナルに向かう途中、うまい具合に隣接して回転寿司の店があるのを見つけた。遅めの昼食にジンギスカンを楽しんだので、まだそれほど空腹ではないから、軽くつまむのにちょうどよさそうだ。

 店内は広く、寿司が回るコンベアに面したカウンターの他に、4人がけのボックス席もある。みんなでこちらに落ち着いたら、まずは回ってくるネタのチェックだ。マグロの赤身や巻き物などの定番ネタをはじめ、アナゴや中トロ、赤貝やエビなど、どれもネタは大振りでうまそうだ。札だけのった皿が結構目につき、見るとほとんどが東京湾の地魚のよう。「○○港直送」「朝とれ」「近海産」などの文字が食欲をそそる。ちょうど着いた席の上方に「本日の近海魚」と記されたボードが掲げられていて、ヒラメやサバ、太刀魚、スズキなど品数も豊富だ。回転寿司といってもこの「船主総本店」は、安さが売りのチェーンの回転寿司とはひと味違う。立地を生かして東京湾の天然物をネタにした握りにこだわっており、特に金谷をはじめとする房総周辺で揚がる魚介の握りが評判を呼んでいるという。

 せっかくだから「本日の近海魚」から、普段あまり口にしないものを試してみようと、まずはホウボウとブダイのあっさりしたネタ2品を頼む。ブダイはスズキの仲間で、ずんぐりした青っぽい外見が特徴。浅い岩礁に棲息しており、市場にはあまり出回らない魚とのこと。冬場が旬で、主に海藻を餌にしているせいか白身がかなり淡白で瑞々しい。ホウボウは対照的に赤っぽく細長い体型をしており、大きな胸ビレが特徴的な変わった外見の魚。こちらも淡白な白身で、サクサクとした食感が何とも上品だ。子供が頼んだ生シラスの軍艦巻きをツルリ、したきり(青柳の足だけ)の軍艦巻きをシコシコと分けてもらったら、思いきって「本日の近海魚」メニュー中で最高値の金目鯛も追加する。優良な漁場で水揚げした上物のみ仕入れているとあり、甘味がたっぷりと脂がのり、トロリと柔らかい。どのネタも歯応えや風味が個性的で、地魚ならではの味わいである。

 普段ならもっといけるのだが、昼食のジンギスカンがまだ効いておりこの辺でいっぱいいいっぱい。そこで予算3000円ほどで、地魚だけを選んで握りの持ち帰りを頼むことにした。東京湾を船で渡り、さらに小1時間ほどクルマを走らせ無事家に到着。子供も寝静まり、うまい具合にお腹も空いてきたので、家内といっしょに地魚握りの宴・2回戦のスタートだ。潮の香りたっぷりでジューシーなカキの軍艦巻き、大振りで締め加減バッチリの平サバほか、白ギスや真ゴチ、カンパチに再び金目など、調子にのって随分頼んでしまったがどんどん減っていく。そして金谷の地魚、その名も黄金アジだ。びっしりとのった脂が強烈に濃厚で歯応えも新鮮そのもの、かなり個性が強いが生臭みはいっさいない。「幻のアジ」と呼ばれるほど貴重な魚で、普通のアジよりも身が締まり脂がのっているため、漁師の間でも珍重されているという。黄味を帯びた魚体は確かに黄金に輝いても見え、姿にたがわず実に高貴な味である。

 昼はジンギスカン、夜は地魚握りずしと、日帰りながら房総の味覚を満喫したドライブとなった。気がつけばもう握りも残り少なく、おみやげのマザー牧場のチーズを肴にワインでも開けるか。子供と1日遊んだ後の、親だけの「お疲れさま会」はもう少し続きそうだ。(2005年11月2日食記)