ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

魚どころの特上ごはん11<北海道編>…去り行く秋と道産のイクラ… 雨の札幌二条市場をぶらり

2005年11月21日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
 北海道横断食べ歩き旅行の最終日は、あいにくの雨となってしまった。今日は昼食に札幌で目当ての店がある以外は予定は決まっていなかったので、羊ヶ丘展望台あたりへ足をのばそうと思っていたが、この天気ではあまり気がすすまない。ホテルを出る支度も、どうも緩慢になってしまう。雨に濡れずに行けそうなところを探して地図を眺めていると、アーケードの狸小路商店街の果てに二条市場があったことを思い出す。カニは根室で買ってしまったので買い物のあてはないけれど、ともかく足を運んでみることにした。

 俗に「北海道三大市場」と呼ばれる函館朝市、釧路和商市場とここ札幌二条市場だが、共通しているのは地元の人の台所というより、観光客の買い物のメッカであることだ。狸小路から地下道を抜けて市場の一画へ顔を出したとたん「はいお兄さんカニあるよカニ、まだでしょ、ほら」など、かなり激しい客引きは昔訪れた当時のまま。店によっては、狭い歩道を歩く客の前に立ちふさがり足留めするほどである。活気はあるが、こちらが品定めしたり質問したりするのを遮る勢いで売りつけられるのには、少々閉口してしまう。主に創成川通りに面した店が激しく、南二条通りに折れると長靴に前掛けのおやじがずらり、並んで待ち構えている。

 ガンガン飛んでくる売り声をいなしながら奥へ歩くと、少しは静かになってきた。ようやく落ち着いて店頭を眺める余裕が出てきたので、何か持って帰れそうなものを探してみると、季節柄かどの店でもイクラが目につく。店頭に並ぶ醤油漬けの瓶詰めを眺めていると、「道内産のイクラはそろそろ終わりだよ、どうだい?」とおやじさんが声をかけてきた。まだ11月、サケのシーズンは終わってないのではと聞いたところ、この先サケが産卵のため河口や川へ入るため、真水を飲んだ影響で卵の皮が固くなってしまうという。ほら、と醤油漬けを試食すると確かに柔らかく、トロリと瑞々しい。隣に並ぶ薄ピンク色の筋子も粒が大きく見事。塩水でばらして、酒と醤油で漬けるといいと勧めてくれる。

 この市場、もとは石狩の漁師がとった獲物を売りに来ていたのがルーツといわれ、サケは札幌の郊外を流れる石狩川や河口沖でもとれていたという。かつては道内のサケ漁獲量の半分を占めていたほどだったが今はやや衰退、おやじさんによるとこの市場では主に十勝、釧路のサケを扱っているとのこと。道内のサケの漁期はオホーツク海に面した紋別が最後で、以後ここで売るサケやイクラは盛岡など、道外から取り寄せるそうである。ちょうど季節の終わりに訪れたのも何かの縁と、イクラの醤油漬けを2本、みやげに決定。

 イクラを買ってしまうと、隣に並ぶ瓶詰めのウニも気になる。値段は手頃だが「この値段だと韓国もの、しかも混ぜ物入りだ」とおやじさん。北方四島周辺や道内沿岸でとれる、いわゆる地物のウニは2000~3000円が目安と教えてもらい、別の店を覗くと2000~2500円の「塩水ウニ」を見つけた。文字通り塩水にウニがいくつも浮かんでいて、ラベルには昆布盛産と四島産とある。店のおばちゃんに勧められて試食してみたら、最初はやや塩っぱく苦味があるが、後から自然な甘さが出る野趣あふれる味。ムラサキウニとバフンウニがあり、種類でなく部位で色が違うという。やっぱり混ぜ物無しはおいしいですね、と話すと、「塩水といっても100パーセントは無理。どうしてもいく分ミョウバンが入っているんだよ」。ミョウバンはウニがとろけるのを防ぐ効果があり、粒がきりっと立った箱ウニの見た目はそのおかげだ。ただし独特の香りがあるのが難点で、最近はこの「塩水ウニ」が注目されている。ミョウバンを使っているといっても箱ウニよりはずっと少なく、まったく使っていないのは殻のウニしかないとおばちゃん。しかしウニは個体差が激しく、割って試食しなければ身が苦かったり少なかったりすることもあり勧められないとか。

 結局、塩水ウニもひとつ買い、帰ってからのウニイクラ丼を楽しみにしながら市場を後にする。雨が小降りになってきたようなので、お目当ての店で昼食を食べたら小樽に足を延ばしてみるのもいいかも知れない。このたびの北海道食紀行もいよいよ大詰め、残るはこの後の昼飯1食のみである。(2005年10月30日食記)