ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたオモシロごはん12…横浜ベイサイドマリーナで買い物の後は、四川タンメンで「ホット」ひと息

2005年11月02日 | ◆町で見つけたオモシロごはん
 10月末の北海道旅行に備えて、必要なものを買いに横浜ベイサイドマリーナへと出かけた。日本有数の大規模なアウトレットショッピングモールで、今年でオープン7年目。各地の同様の施設が苦戦、閉店している中でここは健闘しており、自分も衣類やカバン、靴などを買うときはよく訪れる。19世紀のアメリカの町並みをイメージした施設内には風車や噴水、小公園もあり、ウインドーショッピングだけでも結構楽しい。アウトドア用品の店を数軒回って、防寒用のズボンや携帯用バッグなどを手頃な値段で購入してひと安心。時間は15時前だがまだ昼食をとっていなかったので、レストランが軒を連ねるゾーンへも足を向けてみることにした。

 レストラン街はヨットハーバーに面していて、あたりはまるでマリンリゾートのようだ。とはいえこの日は気温が低く、冷え込む海沿いを歩き回ったため温かいものが食べたくなってしまう。イタリアンやフレンチ、中華に寿司をはじめ、カフェやデリなど豊富なジャンルの店が集まる中から、選んだのは「Long」。カジュアルなニューヨークスタイルの中華料理店で、日本人の好みに合うようにアレンジした広東料理がベースになっている。フカヒレ料理に定評があり、かつてここへフカヒレのそばを食べたことも。メニューを眺めてみると「海鮮タンメン」「台湾風肉味噌タンメン」など具だくさんの麺類にひかれる。寒いこともあり、「黒酢四川タンメン」をお願いすると、店の人がこの料理は辛いですよ、とひと言。メニューをよく見ると、料理名のそばに小さく「すっぱくて辛い」との添え書きがされていた。

 別名「サンラータンメン」と呼ばれるこの料理、正体は四川省の伝統的な激辛麺だ。自家製のラー油や多種多彩な胡椒、唐辛子を使った香り高く奥行きのある辛さに加え、純米酢や穀物酢に黒酢や香酢などを組み合わせた立体的な酸味。それらを支える土台となる、ナマコや貝柱など魚介の乾物や中華ハムからとった濃厚かつこくがあるダシ。タンメンだから具の種類も豊富で、辛さで体が温まることはもちろん、食欲増進、代謝がよくなるなど、健康にもいい料理なのである。

 運ばれてきた麺はスープは真っ赤で見るからに辛そうだが、ひと口頂けば酸味のおかげで後を引く… と油断したところで、追いかけるようにガツンと強烈な辛さ! 確かに一瞬でどっと汗が出てくるよう。しかしビリビリしびれる辛さではなく、様々な香辛料による複雑な辛味が意外に心地よい。黒酢の酸味はスカッとした香りが印象的で、中央にのった刻みトマトと一緒にすすると爽やかさが増す。麺は細麺だが、スープのとろみがかなり強く箸でとりあげるのに難渋するため、もたついているとさらに汗が。具は溶き卵にシイタケ、エノキ、ハムに湯葉が珍しく、さらに細く透明な麺のようなものがたくさん入っている。店の人に聞いてみたら「春雨です」とのことで、評判店だけにひょっとしてフカヒレ? と期待してしまったが。

 辛い、酸っぱいながらもどんどん後をひく味のため、スープまで一滴残さず頂いてごちそうさま。食べ進めるに連れて体の内側から温まってきたおかげで、店を出てヨットハーバー沿いを歩くと海風が気持ちいいぐらいである。2週間後に訪れる北海道は、東京よりも5度ぐらい気温が低い様子。冬の訪れが早い北の大地には、こんな体が温もる料理が待っていてくれるだろうか。(2005年10月16日食記)