ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたオモシロごはん13…「陳麻家」の中華ファーストフード、四川激辛麻婆豆腐飯

2005年11月03日 | ◆町で見つけたオモシロごはん
 麻婆豆腐のルーツはそもそも、中国四川省の惣菜料理といわれている。とある食堂で、お婆さんが客のリクエストに答えて豆腐と肉を香辛料で炒めた料理が原型で、顔にあばた(麻)のある「陳」という名のお婆さんだったため名がついたという俗説はあまりにも有名だ。近頃は正式名称の「陳麻婆豆腐」と品書きに載せる店も増えてきているとか。今ではメジャーな中国料理ベスト3に入るこの料理、日本へ伝えたのは「中華の鉄人」陳建一氏の父である陳建民氏。氏は四川料理を広めた功労者でもあり、陳麻婆豆腐の「陳」は日本においては、陳建民氏の陳ともいえるだろう。

 京橋近くの事務所で仕事をした際、昼食をとるタイミングを外してしまい、14時過ぎに食事に出るとやっている店はごくわずか。そんな中、「陳麻家」という派手なチャイナムードの外観の店を通りかかり、ほかに選択肢もなさそうなので店内へと入る。ラーメン屋か中華食堂かと思ってメニューを見ると、白地に大きな赤い文字で「陳麻飯」「担々麺」とあるのみ。飯と麺の四川2大激辛メニューで勝負といった感じである。陳麻飯とはつまり中華料理店の麻婆豆腐飯、麻婆丼のこと。皿に盛ったご飯の上に麻婆豆腐をかけたシンプルな料理だ。大盛りで注文すると「かなり辛いですよ」と店の人。メニューによると生卵を落とすと味がマイルドになるとあり、念のため? 生卵つきにしてもらった。

 カレーやラーメンのように手軽に食べられるここの陳麻飯は、いわば中華版ファーストフードといった感じ。現在全国に19店を数え、東京周辺では恵比寿、西新宿、西新橋、神保町とここ京橋店ほか、続々とオープンしているという。絶妙な辛さが食欲をそそることもあり、昼食時にはサラリーマンが行列をなす人気店となっている。壁に貼られた短冊には「人、三度、陳麻飯を食すとき、新鮮たる刺激と味覚の虜となる」との文字。確かに辛い料理はかつて一大ブームになったほど常習性があり、3度も食べればとりことなってしまうのもオーバーではないかも。

 さっそくひと口頂くと、分かっちゃいたがとにかく辛い!出来立ての熱々さも強烈にパンチが効いた辛さに拍車をかけ、ただただ圧倒されてしまう。自家製のラー油、搾醤をはじめ様々な調味料をうまく組み合わせた、まさに食べられる限界ギリギリの辛さで、2、3口食べ進むと舌が痛くなるほどである。味の決め手になっているのが、現地から取り寄せた四川山椒。「花椒」とも呼ばれ、四川風の麻婆豆腐に欠かせない調味料だ。唐辛子のビリビリととがった辛味に加えて、爽やかで香り高い辛さが後から追いかけてくる。

 激しい辛さのおかげでたっぷりのご飯と一緒に食べてしまうため、どんどん食が進む。四川山椒独特の痺れで舌がやや麻痺してきたため、中央に落とした生卵を全体に溶いてみた。すると辛味が程良くなり、味に広がりが出てきた。この方がご飯に合うようで、さらに食が進むこと。食べ終える頃には額にうっすら汗をかいていて、体全体がボッと熱くなってしまった。山椒と唐辛子は血行を促進する働きがあり、代謝が向上してカロリーを消費するため体脂肪も減少するという。高温多湿で体力消耗が激しい四川省ならではのスタミナ・健康料理で、サラリーマンにとってもエネルギー源になること間違いなし。辛さの刺激のおかげで頭の切れもいくらか良くなれば、午後の仕事は快調に?(2005年10月13日食記)