ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはん10…北の大地へ向かう寝台車で、うえの大黒の和風惣菜で早くも宴席?

2005年11月01日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
 10月の終わりにまとまった休みがとれたので、思いきって北海道へ出かけることにした。観光シーズンはもう終わっているけれど、旅の目的である「食紀行」を楽しむには混雑していない分、まずまずの季節だ。サケは最盛期、カニはこれからが旬の季節を迎えるが、魚をメインにした本はすでに刊行したため、新規ジャンルを開拓するために今回は魚介類はパス。北海道は農・畜産王国でもあり、歴史は浅いながら町の伝統料理、また近頃話題のニューウェーブ料理など、個性的な料理も意外に多い。そうした「北海道版・ローカルごはん」を食べ歩くのが、この旅のテーマである。

 という訳で羽田から飛行機で千歳へひとっ飛び、といきたいところだが、食べ歩きの予算捻出のため、JRの割引切符「ぐるり北海道フリーきっぷ」を利用することにした。往復とも新幹線や特急に乗れ、しかも北海道内は特急も含めJR線が乗り放題で3万5700円(オフシーズンの割引価格)という太っ腹な切符で、往復には夜行寝台列車「北斗星」を選んだ。しかも個室! 出発駅の上野に着いたのは、列車が発車する1時間以上前。車内で頂く駅弁や酒などを駅で買うと高くつくので、近くのアメ横で安く仕入れる作戦だったが、店頭に並んでいるのは鮮魚とか乾物ばかりで、寝台個室の酒宴に向くものはあいにくなさそうだ。

 菓子店でせんべいやサラミなど乾きもの、チェーンのドラッグストアでお茶のペットボトルを安く買ったらとりあえず駅へ戻った。不忍口改札をくぐろうとしたところ、改札手前に上野駅ビル「アトレ」の入口を発見。飲食店が数軒あるようなので、車内に持ち込めそうなものがないかちょっと寄ってみることにした。とんかつやラーメンの店に並んで、入口そばにはテイクアウト風のおかずの店が2軒並んでいる。その中から「うえの大黒」を覗くと、こぢんまりした売り場に大皿に盛られた様々な惣菜がずらりと並んでいる。鶏や魚の煮付けや高野豆腐に卵焼き、筑前煮にきんぴらなど、どれもなかなかうまそうだ。

 家庭料理風の手作り惣菜を扱うこの店、上野のほかにも東京駅や目黒、恵比須にも店舗がある。産地指定の低農薬野菜や米を素材にするなど、質のよいつくりたての惣菜にこだわり、味付けはテレビの「3分クッキング」でおなじみの料理研究家、藤田雅子さんの指導によるとのこと。面白いのは販売システムで、どのおかずも100グラム294円均一の計り売り。数種類ある中から選んだ器に、自分で好きなものを好きなだけとり、最後にレジで器ごと計りにのせて値段が決まるという仕組みだ。うまく選べば駅弁よりもバランスがよさそうだし、安上がりかも、と一番大きな器を片手にあれこれ詰めてみることに。鶏肉と根菜の黒酢あんかけ、鶏のきじ焼きにサンマの竜田揚げをとったら、野菜もいるなときんぴら、筑前煮、なすサラダも。卵焼きに高野豆腐も外せない… とひと晩列車に乗り通しだからとつい欲張り、計りに載せたら1500円也。ちょっと高くついてしまった。

 結局ほかにも弁当や酒などあれこれ買い込み、寝台車に乗り込んで狭い個室に宴席を広げた頃に出発進行。ビールとともに、さっそく惣菜のふたもあけた。ビールをぐっとひと口、そしてみそ鶏に鶏のきじ焼きから箸をのばすと、淡白な肉にみその甘辛い味付けが相性バツグン。サンマの竜田揚げは肉厚のサンマがほっこり、後からピリッと唐辛子が効いてくる懐かしい味だ。筑前煮のごぼうやにんじん、タケノコなども野菜がしゃっきりしていて、なかなか本格的。全体的に薄味で、酒の肴はもちろんごはんのおかずにもちょうどいい。

 車窓に流れる風景を見ながら、惣菜を肴に旅の始まりを祝してビールが進む。まだ宇都宮にも着いていないのにすでに500ミリ缶は空、寝酒用に買っておいた「高清水」小ビンをもう開けてしまうか。(2005年10月27日食記)

※このたびの北海道旅行で見つけたローカルごはんは、今後週1~2回、計8回紹介の予定。次回は帯広の古くからの庶民的ローカルフード、豚丼です!