暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

落ちた枝

2013-08-12 | つめたい
王国の壁は崩されて
藁のようによく燃える
ごらん、人々は信じたものを
疑う余地なく脂となった
幸福はくろぐろとした煙に変わり
慈しみの涙をおのれに注ぐはずだ

帝国の壁はそびえ立ち
木々のように朽ちていく
ごらん、人々は信じる心を持たず
疑いのままに木偶を選んた
不幸はしらじらしい汚水として
憐れみの根を磐石にするだろう

気の毒な狼はいま干からびた
磔刑に処される摂理のしもべ
温かな家の軒下で腐る安寧と
冷たい瓦礫の上に眠る安寧と
よくよく見て刻みつけておきなさい
わたしたちにできるのはたったそれだけ

積み重なる暴君の煉瓦も
崩れゆく賢君の井戸も
同じ墓に並べられてしまえば同じこと
ここはわたしの王国ではない
あれはあなたの帝国でもない
疑うことも信じることも許されない

ごらん、彼らは生きて死に
気の毒な狼が幾度となく遠吠えを遺す
わたしたちはどちらでもない
どちらでさえもない
ただただ忘れぬように刻みつけなさい
風が吹くだけで灰になるわたしたちのために

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