暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

にんげん

2011-03-29 | 心から
おれの目のなかにはいりこんで
ぎょろぎょろ動かすやつはだれだ
見たくもないものを見せつけて
そんなにも楽しいものなのか
おれには命などはない
死を感じていないから
だのにこいつは目をぎょろつかせ
おれの命を見せつける
おれに死を勘付かせる

緩い坂をくだるように
おれの死はやってくる
そんはずではなかったもの
予定外のものなどは
おれは絶対に許さないのに
動くな、動くな、おれの目は
まっすぐ前を見ていればいい
まっすぐ前を信じればいい
見るな、見るな、おれの目よ
これは真っ赤な嘘なんだ
こんな真っ黒い肉体なんて

それは嘘だこれは嘘だ
おれは今なお生きている
あれも嘘だどれも嘘だ
あれとおれは違うんだ
ぼろぼろ剥がれていっているのは
おれの強く気高いこころ
塵に舞い上がって消えていくのは
おれの醜く傲慢なきもち
見るな、動くな、おれの目が
内側までも崩すのか
おれ自身を壊すのか

おれは死なない死にはしない
緩やかに緩やかに朽ちもしない
おれは気高く強かで
それでも普通に生きていて
まっすぐ前を向くかぎりは
潜む獣も見えやしない
だからおれは生きてゆける
だからおれは縋ってゆける
どうか見るな、おれの目よ
たとえほんとうを悟っていても

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