万能の神になりたかった。
幼い頃から何でも出来た。
人並みに、人よりほんの少し楽に。
大体のことはこなすことができた。
だからこそ万能に憧れた。
一芸に秀でた彼らを見送る日々。
労せずとも手に入れられるからこそ、
手にし続ける努力を怠っては、
ただただ願望だけを募らせて、
何にもなれないのが私だからだ。
一握は乏しく、足りず、
片方を得れば残りをこぼす。
出来ることから始めるべきだ、
決して多くを望むことなく。
あなたが羨ましい、
外に出て人と会話し、
当たり前に生きていられるあなたが。
道を歩けば失意にまみれ、
強すぎる五感にうずくまり、
泣きながら同じところをぐるぐると回る、
万能のいきものになれたならば。
きっとあなたと同じように、
当たり前の顔をして生きられる。
免状を得ることができる。
だから万能の神になりたかった。
なぜ私はのうのうと呼吸をしているのだろう。
灰がじりじりと燃えていく、
肺がじくじくと腐っていく。
人並みに、人よりほんの少し楽に、
何をもこなせたところで意味がない。
だって一人では何も出来ないのだ。
人間になりたい。
当たり前に生活をして、
当たり前に会話をして、
当たり前に外を出歩き、
当たり前に感動できる、
人間に、なりたい。
呼吸をするだけで精一杯ならば、
一握など何の意味があるだろう。
役割をこなすことさえできなければ、
一握など何の足しになるだろう。
あなたのようになりたかった。
あなたたちのようになりたかった。
私にとって、あなたたちは、
万能の神に等しいからだ。
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